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捜索

 捜索、所在の不明な人または物の発見を目的とした活動をいう。


 鈴木は会議室から出ると、すぐに第三営業課のオフィスに戻ってきた。


「どうだったんですか?課長」


 鈴木が戻ると、第三営業課のメンバーが深刻そうな表情で待っていた。


「ああ。重要書類が盗まれていたことは皆も聞いていると思う」


 鈴木が深刻そうな顔で、全員に話しかけた。


「我が社の方針としては……中小企業のビルから移転、その後で各方面への対応に追われることだと思う」

「それで、壺井さんは?」


 平田は壺井のことが気がかりなのか、鈴木に詰め寄ってきた。


「壺井は警察と連携して指名手配されることなった。できれば警察や他社ではなく。我が社で確保したいと思っている」

「そんな……」


 平田は力なく座り込み。

他のメンバーも不安そうに暗い顔をしていた。


「こんな時だが、皆力を合わせてこの危機を乗り切ろう」


 鈴木は励ますことしかできなかった。


「太郎さん。少しいい?」


 鈴木がかける言葉を失っていると、望が鈴木に二人で話したいと合図を送ってきた。


「ああ。皆も営業部長から指示があると思うから今は通常業務をこなしていてくれ」


 鈴木はそれだけ言うと、望と供に休憩所に移動した。


「どうかしたのか?」

「ええ。実は……私も中小企業に就職しようと考えているの」

「えっ。君が就職?」


 ずっと派遣社員でやってきた望が就職すると言う突然の申し出に鈴木は戸惑ってしまう。


「ええ。派遣者員として勤めるよりも正社員として太郎さんの役に立ちたいと思って」

「ありがたいけど。今は……待ってくれないか?」

「どうして?」

「君だから言うけど。俺は社長から別の仕事を任されている」

「別の仕事?」

「ああ。壺井の捜索を一任されている。それ次第で中小企業は会社としての存亡の危機がかかっている」


 鈴木は思いつめたような顔を望に向ける。


「もしかしたら潰れるかもしれない会社に君を就職させることはできない」


 鈴木の意志は固いようだと望は思った。

鈴木と付き合って一年経つが、意外に頑固なところがあると望は思っている。


「わかった。でもちゃんと事が終わって、中小企業が無事だったら就職させてね。約束」

「ああ。君が安心して就職できるように努力するよ」


 望は鈴木の肩に手を回しキスをする。

望が惚れた鈴木という男は、平凡で特徴らしい特徴はないが。

やるときはやる男だと知っている。


「約束だ」


 鈴木は休憩所を出ると、平田を自身のデスクに呼んだ。


「どうしました、課長」

「平ちゃん。いや、平田。君には俺の仕事に協力してもらう」

「ますます何を言われているか分かりませんが、どういうことですか?」


 鈴木は会議室で行われた話を平田にだけ詳しく説明した。

それは平田を信用する意味を込めて、平田だけに事情を話したのだ。


「はは。課長は厳しい人ですね。俺が壺井さんの協力者じゃないかと疑いながら、それを晴らすためのお膳立てをする。厳しい人だ」

「不服か?」

「いえ。その命令お受けします。必ず自分の汚名は自分で晴らします」


 平田の言葉に鈴木は頷き。

平田にいくつか壺井の行きそうなところや、住所などを調べさせることした。

 その間に鈴木は残業時間ではないが、地下へと下りるエレベーターへと向かった。

最下層である地下五十階に着いたエレベーターはその扉を開く。

 

「相変わらず、暗いな」


 薄暗い廊下を真っ直ぐ歩いていくと一番奥の扉が開かれる。


「ブレインさん。お久しぶりです」

「鈴木さんはなかなか会いに来てくれませんからね。本当につれないですね」

「最近はなかなか忙しくて申し訳ありません」

「いえいえ。あなたのことはずっと見ていました。なかなか活躍されているようだね。楽しませてもらっていますよ」


 ブレインは鈴木の活躍を知っているようで、楽しそうに笑った。


「では今回の事件についても、もう知っておられますか?」

「ええ。彼も大胆なことをしたようですね」

「どこよりも早く壺井を捕まえたんいんですが。協力していただけますか?」


 鈴木は困った顔をして、ブレインに願った。


「もちろん。いいですよ」

「よろしいんですか?人間同士の揉め事ですが」

「ええ。だって私は人間を知りたくてここにいるんです。あなたが壺井さんを捕まえてどうするのか、それが知りたいんですよ」


 ブレインは意地の悪い顔を作る。


「彼は港にある第三倉庫からほど近い廃アパートに隠れ住んでいるみたいだね。そこに怪人もいるみたいだよ」

「やはり宇宙怪人といるのですか?」

「そうだね。どうやら決闘制度に納得できていない過激派の一派がスパイを送り込んでいたんでしょうね」


 ブレインの言葉に鈴木は深い溜息を吐く。


「壺井は騙されて……」

「それはどうだろうね。彼にも彼なりの考えがあるみたいだよ」

「考え?」

「それは同じ人間である君の方がわかるんじゃないかな?」


 ブレインは壺井の考えを教えてはくれないようだ。


「わかりました。考えてみます」

「面白い結末を期待しているよ」


 ブレインに頭を下げ、鈴木は地下を後にした。


「面白き、人類よ」


 ブレインは鈴木を見送りながら、想いを馳せる。 

いつも読んで頂きありがとうございます。

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