宅配
宅配、商品・荷物などを、個々の家まで配達すること。
鈴木は書き上げた企画書を持って、営業部ではなく総務部へと企画書を提出しに来た。
「やぁ、早いね。鈴木君」
前川は出勤が早い。
総務部に勤めていた鈴木は直属の部下だったこともあり、その辺のことは良く知っているのだ。
「前川部長。昨日行っていた企画持ってきました」
「企画?ああ。確か残業時にお弁当を支給するってやつだよね?」
「はい。そうです。だいたい作業に出て来る者が300人ほどです。300人に食事を支給しようと思うと給仕や栄養士を雇って、厨房と食堂を作らないといけません」
鈴木は給仕の一人当たりの給料から厨房の建設費、食堂で使われる道具や食器などの金額を算出した。
さらに、そこから生み出される料理の質と量を計算し、一人あたりが出される金額などを計算した。
「かなりのコストがかかります」
「いや。そんなことわかっているけど」
前川は今更何を当たり前のことを言っているのだと鈴木に呆れ顔を見せた。
そこで鈴木は企画書をバンとテーブルの上に叩き付けた。
「うわっ!ビックリしたなぁ~脅かさないでよ鈴木君」
「すみません。ですが、これを見てもらえますか?」
前川は鈴木の剣幕に押されながらも、企画書を手に取りページをめくる。
そこにはほっこり屋の価格設定や味の保証から品質管理の状態までが書かれていた。
「何これ?」
「私もネットで見た内容と実際に自分が食べたことしかわかりませんが、そのほっこり屋に協力して頂ければ、コストを大幅にダウンさせられると思うんです」
そこにはほっこり屋の価格設定と300人にお弁当支給したときのおおよその価格が記入されていた。
「もし300人が一番高い400百円の豚ステーキを頼んだとします。それでも、12万円で事足ります。もちろん全額を会社が支給せずとも、必要な者そうでない者もいると思うので、その時に注文できればと思います」
鈴木の剣幕に押されっぱなしの前川はもう一度企画書に目を通す。
「しかしね。実際どれくらいの需要があるかわからないし、お弁当屋さんもいきなり大量注文されたら迷惑じゃないかな?」
前川の常識的な意見に、鈴木もしばし考える。
確かにいきなり言って300もの弁当を作られるわけがない。
「分かりました。もう少し詰めて、お弁当屋さんとも相談してきます」
鈴木はそういうと企画書を前川から取り上げて、前川の執務室から出て行った。
「なんですかあれ?」
前川の秘書をしている女性が鈴木の後ろ姿に驚いていた。
「仕事の鬼かな?まぁ彼も営業職にと浸かったいうことだろう」
前川は鈴木の行動力に舌を巻きつつ、自らの肩を叩いた。
鈴木は前川に指摘されたことを参考にするため、早速ランチをお弁当屋へと買いにきた。
今回は望にも同行してもらっている。
料理が上手い望みならば、何かアドバイスがもらえるかと思ったからだ。
「太郎さんって本当に変わったことを思いつきますね」
「変わっているかな?」
「ええ、だって食堂はあるじゃないですか。それなのに、どうして今さらお弁当屋さん?」
望に指摘されてから気付いたのだが、中小企業用の食堂はあるのだ。
食器や給仕をしてくれている人もいる。
しかし、夜中まで働いてくれている社員ではない。
そこから残業や何かと計算すれば、やはりお弁当屋さんに注文した方が夜中の場合はコストダウンできると鈴木は判断した。
「まぁ色々あるんだよ。ちょっと大量にお弁当が必要な用事があってね」
「あっ!わかった。何かイベントをするんでしょ?会社も景気が良いって言ってたし社員に還元だね」
「社員に還元?」
望の言葉に鈴木は何かを閃いたような気がした。
「とにかく入りましょうよ」
鈴木がお弁当屋さんの中に入ると前回ゼロと呼ばれていた可愛らしい男の子がカウンターで暇そうにしていた。
昼の時間前で手が空いているのだろう。
「すみません。ちょっとよろしいですか」
鈴木は営業をするときと同じように名刺を携えて、カウンターの男の子に声をかけた。
「いらっしゃいませ。ご注文?ではないですね」
「はい。私は中小企業の鈴木といいます。少しばかりこのお弁当屋さんに相談したことがありまして、店長さんいらっしゃいますか?」
「……ルイ。店長いる?」
「えっ、店長?」
奥でスマホを触っていた聡明そうな男の子にゼロが声をかける。
「確か今日は二階にいたと思うぞ」
「なら呼んできて」
「えーなんで俺が!」
「仕事だから」
「仕方ねぇな~」
ルイと呼ばれた男の子はしぶしぶといった感じで、奥の階段を上がり、眼鏡をかけた男性を連れて降りてくる。
「すみませんねぇ~お待たせしましたぁ~」
間延びした声でしゃべる男性はホンワカとした雰囲気をしていて、なんだか現れただけでその場が和む。
「態々すみません。中小企業の鈴木といいます。本日折り入ってご相談があり参らせて頂きました」
「はぁ~」
鈴木の物言いに同じた様子もないが、訳が分からないと首を傾げる。
店長に通されて、二階の事務所に場所を移し、話を勧める。
「とっ言うわけで、残業している社員のためにお弁当を支給して頂けないかと思いまして、こちらのお弁当屋さんがコストも安く味が良いので、ご相談に上がらせていただきました」
「なるほど~それはこちらとしてもありがたい話です。しかも、残業が始まられてから三時間の猶予が頂けるんですね?」
「はい。何人が注文するかわかりませんので、五時の終業後に注文し、八時にお持ちいただければ幸いです」
店長は鈴木の言葉に難しい顔をしたかと思ったが、すぐにホンワカとした雰囲気に戻り。
「もちろん大丈夫ですよ。うちとしても売り上げが上がるのはありがたいですし、何より24時間を売りにしている手前断ることもできませんよぅ~」
店長さんは二つ返事で、OKを出してくれたので、早速いつから行うかなども相談し、企画書に纏めて行った。
「では、あとはこの案件を上に通してきますので、今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いしますぅ~」
店長さんと堅い握手をして、お弁当を数個買って帰る。
企画書をまとめる前に、第三営業部の皆で試食して、概ね好評だったことは言うまでもない。
いつも読んで頂きありがとうございます。
昨日はお休みさせていただきました。
すみません。
今日からまた投稿しますのでよろしくお願いします<m(__)m>




