暗躍
お待たせしました課長編開始します。
どうぞ秋の夜長に暇つぶしに成ればいいですね。
暗躍、人に知られないように陰で策動すること。暗中飛躍
暗躍する者の存在をどれだけの者が気付けるだろうか。宇宙怪人も知性を持った生命体である。
密かに地球に下り立ち、地球のことを調べていてもおかしくはないだろう。
「ホンマになんでワシがこんなことしなあかんのや!」
関西弁の男が怒鳴り散らしながら街中を歩いて行く。
男は調査という名目で地球に降り立った宇宙怪人である。
地球の生態や環境を調べ、宇宙で待機している本体に情報を流しているのだ。調べることの中には、戦隊ヒーローの正体や、ロボットはどこから来るのかなども含まれている。
しかし、どこからともなく現れるヒーロー達の居場所はまったくわからず。ロボットの所在も掴めていない。
「なんなんやホンマ。こんな訳のわからんミッションどうせえぇちゅうんや」
路地に入り、ゴミ箱を蹴り上げる。
調査が思うように進まない苛立ちを物にぶつけてしまう。
「おい。お前何してんだよ」
そこにエプロンを着けた青年に注意される。
好青年という感じの精悍な顔立ちをしており、男を見てもビビっていない。
「あ~ん!なんや我?ワシに文句でもあんのかい?」
男の見た目はパンチパーマにド派手なアロハといかにもなチンピラ姿をしている。青年は厄介な奴に声をかけたと一瞬思ったが、声をかけた手前引き下がる気はない。
「あんたが蹴ったゴミ箱はうちの店のだ。直して行けよ」
青年はなるべく手短に要件を伝えて、中に戻ろうとする。
「チョイまてや!言ったまま帰れる思っとんのか」
男は蟹股で、少年を睨みながら近づいていく。
青年は厄介なことになりそうだと思いながらも、心は落ち着いていた。
「なんだよ。完全にあんたが悪いぞ」
青年は怯むことなく正面から男に向かって告げた。
「おう。ええ度胸しとるやないけ!」
男が青年の目の前に迫る。青年は思ったことだろう『小っさ!と』、青年の身長が180cmほどに対して、男は145cmほどしかない。
明らかに子供と大人ぐらいの身長差がある。
「だから。俺は間違ったことはいってない」
青年は凄んで来る小さい男に立ち向かう意志を見せた。
青年の見た目はスポーツ刈りに精悍な顔立ち、鍛え抜かれた身体と見る者が見れば鍛えていることが一目でわかることだろう。
「へっ、いい度胸してんじゃねぇかよ。じゃやってやんよ」
小さい男が腕を振り上げる。
しかし、小さい男の拳が少年に振り下ろされることはなかった。
「やめな」
凛とした女性の声で、小さい男を静止する。
それと同時に小さい男の腕は青年よりも大きな男によって掴まえられていた。
「姉さん!」
小さい男に姉さんと呼ばれた女性は、赤い髪に赤いワンピース、その上にレザージャケットを羽織っている。
顔を見れば、真っ赤な口紅が印象的な一重瞼の切れ長な瞳をした美人だった。
「失礼なことを考えてんじゃないよガキが」
そんな青年に姉さんと呼ばれた女性が凄む。
またも変な奴が出てきたと、青年はめんどくさくなってきた。
注意している自分は悪くないと言い聞かせて逃げなかった。
「ふん。なかなか度胸があるね。まぁうちのもんが迷惑かけたね。デク、直しておきな。マサ!謝んな」
大きな男をデクと呼び、ゴミ箱を直すように指示を出す。
小さい男をマサと呼んで青年に謝罪をさせた。
「すまなかったな。虫の居所が悪かったんだ」
マサは姉さんの言葉に素直に従い謝罪を口にした。
デクと呼ばれた男がゴミ箱を直すのを確認して、青年も訴えを取り下げる気になった。
「謝ってくれたし、もういいよ」
最後まで勇気を持った青年だった。
裏戸から店に戻る青年の姿を見送った三人は歩き出した。
「迷惑をおかけしやした」
「いいさ。あんたの気持ちもわからないでもないからね。それよりも調査の方はどうなんだい?」
「ルイとゼロに任せていやす」
「あんたもちゃんと働きな。あたし等は働き蟻なんだ。お上がこの星を手に入れるために全力を尽くすんだよ」
姉さんはマサにそういうとデクだけを連れて歩き出した。
「お任せくだせぇ」
マサは姉さんの後ろ姿に頭を下げて見送る。
「やっぱ姉さんはカッケエエな。まぁイライラしてても仕方ねぇな。アイツとこにいくか」
マサは路地裏から出る。
大通りに出れば寒い季節に厚着をした者達が歩いて行く。
その中を人々を無視するように半袖アロハで歩く姿はなんとも不自然な光景でしかなかった。
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「ゼロ。本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ。ルイもあの人たちに任せていてもダメだということはわかっているだろう?」
ゼロと呼ばれた利発そうな少年は、ルイと呼んだ少女を見る。
ルイの見た目は髪を短く切り揃えているので一目見ただけでは男の子か女の子かわからない。
「それに俺達の任務はヒーローの正体を探ることだ。それとロボットの出現場所の特定だぞ。そのためにはある程度特定して動かないといけないだろう。戦闘を行うために用意された街はここなんだ。アイツらも必ずここにアジトがあるはずだ」
ゼロの言葉にルイは静かに頷く。
「わかった。とにかく探す。でもなんでバイト探し?」
「仕方ないだろう。俺達に与えられてる給料安いんだから」
「理解」
ゼロが考えた作戦はこの街に住居を構え、仕事をするというものだった。
怪人も地球人と同じ食事をする。
しかし、彼らに与えられてる給料は一日500円だけなのだ。
それではペットボトル一本とパン二つしか買えない。
「とにかく面接頑張るぞ」
「頑張る」
ゼロが選んだのは大型チェーン展開している弁当屋だった。
何故ここを選んだかというと……
「ここは給料は安いけど三食付いてるからな」
ゼロの言葉にルイは何度も頷いている。
「ご飯大事」
ルイは目をキラキラとさせて弁当の看板を見つめる。
「よし、いくぞ」
二人は履歴書を強く握り締めて弁当屋に入った。
「いやぁ~若いのにバイトとは偉いねぇ。へぇ~君達学校に行っていないのか。うむうむ。一日入れるねぇ~いやぁ~ありがたいありがたい」
人の良さそうな店長に面接を受けて、二人とも一発OKを貰う。
連絡先や住所は五人で使っている部屋があるので問題ないが、正直18歳で学校も行っていない二人を受け入れてくれた店長は懐の広い人なのか、何も考えていないのか。
「それでいつから来れるかな?」
「今からでも!」
ルイの勢いにさすがの店長も身を引くが、そのやる気に胸を撃たれた店長は涙を流す。
「いやぁ~そこまでやる気のある若者は久しぶりだよ。よし。今日は遼君がいるし今からお願いしようか」
店長は若い店員に二人を預けることを決めて、着いて来るように告げる。
「遼君。頼みがあるんだけどいいかな?」
「あれ?店長珍しいですね。店の方に来るなんて」
「いやぁ~君に預けたい子達がいてね」
店長はルイとゼロを紹介した。
「また面倒事を……へぇ~兄妹かよろしく頼むな」
二人は双子の兄弟ということで履歴書を提出し、店長はそのまま遼に二人を紹介した。
「宇外零です」「泪です」
二人は遼と呼ばれた青年に頭を下げる。
青年は、精悍な顔つきと弁当屋には似つかわしくないたくましい体格をしている。
「俺は緑野 遼だ。今は本職の休暇中でここの手伝いをしにきているんだ。まぁ学生時代はここでバイトしていたから、だいたいのことは分かると思うからなんでもきいてくれ」
「「はい!!」」
二人は元気よく返事を返して、遼の後について回る。
二人はこうしてバイトと食事を手に入れた。
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