【詩】春風の耳
土から出たばかりの地虫の夢は
自由に空を飛ぶことでした
ひらひらと風に飛ぶ蝶々の夢は
花から花へ移り気に
彼岸花の根を避けて
ミミズの匂いと芋の味の
モグラの夢は
何時か聴いたあの子の鼻歌
砂浜続く海岸の
砂底にはりついた鰈の夢は
ヒレを翼に
空を飛び
高い山の上へと登ること
山の雪どけの沢にいる
ちいさな綺麗な山椒魚の
きらきら見ている雫の夢は
澄んだ水のままの
海の珊瑚を齧ること
そうかそうかと
夢を聴いて廻る
春の風の大きな耳は
透明のままに広がっていく
「あなたの夢はなんだい」
春の風の耳が見えますか