この恋に殉じた?
「ん、ん……」
「あら?飛山さん、目が覚めたみたいね」
聞きなれない女の人の声に違和感を覚えながら目を開ける。
んん!?
見慣れない天井、白い布のパーテーションで仕切られたベットに寝かされているアタシ。
な、なんなんだ!?
「失礼しま〜す。飛山さん起きましたか?」
ガラガラとドアの開く音がして、同時に男の子の声がした。
「ちょうど目が覚めたとこよ、新垣くん」
新垣くん!?
ガバッと起き上がるのと同時に学ランを着た男の子が入ってきた。
「んだよ。倒れたって聞いてたのに元気じゃね〜か」
毒づく風体は かなり若いけど、新垣さんだ!!
何々!?
これは いったい どういう事!?
「カバン持ってきてやったから帰るぞ?」
ドサッと放り投げられた学生カバンには お気に入りのクマのマスコットがついてた。
て事は、ここは高校?
新垣くんの後ろに立ってる先生が白衣を着てる事から推測するに保健室かしら?ワトソン君。
て、クマは答えないけどね(泣)
「なんだ?ブッ倒れて更にバカになったのか?これ以上は救いようがねぇぞ?」
少年ぽさを残してるけど、うん、間違いないなく新垣さんだね!!(泣)
すると、クスクス笑いながら保健の先生が側にやってきた。
「あんまり苛めると 振られちゃうわよ?」
「「はぁぁ!?」」
二人でハモる。
「あら、仲良しね(笑)先月そこの花壇で告白してたでしょ?悪いなとは思ったけど見えちゃったんだから仕方ないわよね?」
先生がウインクすると新垣くんは真っ赤な顔になった。
「告白?それって、どっちから?」
素朴な疑問を投げかけると、鬼の形相の新垣くんが怒鳴った。
「さっさと支度しろ!!アホ神楽!!」
ぎゃー!!
1メートルほど前を新垣くんが歩いてる。
背は、まだ そんなに高くない。
最初は弟かな?とも思ったけど、あの毒舌キャラは二人といないはずだ(いたら嫌だ)
制服の真新しい感じからして一年生かな?と学生証を見たらピンゴだった。
でもちょっと待って?
アタシは卒業間際だったし、新垣さんは社会人だ。
このシチュエーションは ありえない!!
きっと夢だ!!
同級生になりたかった私が夢を見てるんだ!!
そうと分かれば、このチャンスを楽しまない手はない!!
「新垣く〜ん」
ハートマークなんて飛ばしながら その腕に巻きつく。
瞬間、
「触るな!!誰かに見られたら どうすんだよ!!」
思い切り突き飛ばされた!!
ええ!?
「わ、私たち、つ、付き合ってるんだよね?」
「でかい声で言うな!!誰かに聞こえたら どうすんだよ!!」
いえね、あなたの声の方が大きいですよ?
なんか、私の夢なのに私に甘くないのは なんでだ〜(泣)
半べそ かきながら新垣くんの後をついていくと、私の家についた。
そして、当たり前のようにカバンから鍵を出して中に入る新垣くん。
ん?それって合鍵ですか?
私のカバンの中には私の鍵が入ってたから、そうなのかな?
て、おいおい。
私たち どんな関係なんだよ!!
家主不在で部屋に入っていく新垣くんを慌てて追いかけると、勝手知ったる我が家のように冷蔵庫から麦茶と小さなタッパーをいくつか出して晩酌?を始めちゃいました。
しょ、食費 払え、こんにゃろ〜!!
「早く靴ぬいで上がれよ」
て、あんたの家か〜!!
色々突っ込みところ満載ですが、あえてスルーで!!
無言で机まで行くとカバンを置いてタンスに手をかける。
と、着替えは脱衣場かな?
てか、ダイニングと寝室の間にカーテン引こうかな〜。
なぁんて ぼんやり考えていると、ふいに肩を掴まれた。
え……?
「頭打って倒れたって聞いたけど大丈夫なのかよ?」
少し顔を上げるだけで間近にある新垣くんの顔。
「まじ心臓止まるかと思った。あんま心配かけんじゃね〜ぞ?」
な、な、な、なんでしょう!?
この、さっきとは打って変わった態度!!
こ、こ、これが噂に聞くツンデレですか!?
鼻血 出そうです!!
「神楽……」
な、なんだか熱い目で私を見てきます。
こ、こ、これって、まさか……。
思いっきりガン見していたら、少し照れたように睨まれました。
「そんなに見てたらキスしづらいだろ」
やっぱりか〜!!(泣)
でもでも ちょっと待ってよ〜(泣)
私まだ現実で新垣さんとキスしてないんだよ〜!?
ここでしちゃうのは、なんか嫌だ〜(泣)
「わ、私お腹すいちゃった、な〜」
ちょっと棒読みですが、さり気なくダイニングに歩こうとしたら、グイッと抱きしめられました。
ええ!?
「焦らすなよ……」
な、な、何をですか!?
「期末テストで もう何日もしてないんだぞ?」
「キ、キスを、です、か?」
「アホか」
ポカンと軽く小突かれて、ベットに押し倒された。
ええ!?
いきなりの展開についていけず固まる私をよそに新垣くんはガサゴソとサイドテーブルの引き出しを漁ります。
「先月使いきっちまったけど、ちゃんと補充しといたか?」
「補充?」
「次はお前が買えって言っただろ?」
な、何をですか?
て、もう怖くて聞けません(泣)
「お徳用買ってきても すぐなくなるな〜」
ど、同意を求めてこないでよ〜(泣)
「なしでするか?」
「いやいやいやいやいやいや!!」
「だよな(笑)」
こ、この日一番のイイ笑顔だな、こんちくしょ〜!!(泣)
ま、まさかとは思うけど、夢の中の私たちは いたしちゃってる訳ね?
リアルな私は卒業まで純潔を守りそうな勢いなのにな!!(泣)
「確か一つ持ってたような…」
そう言うと学生証を出してガサゴソし出した。
あ、あんた、どこにしまってんだ〜(泣)
「あったあった」
そう言うと、ゆっくり私の方を向いた。
「溜まってるから優しくできなかったらゴメンね?」
ぎゃー!!
ドサッ!!
「お、おい!!大丈夫か?」
「いででで」
しこたま背中を打って、辺りを見渡せば ここは職場の休憩室。
私は長椅子でうたた寝をしていたようだ。
「大丈夫か?」
「は、はい」
見上げれば、年とった新垣さんがいた。
よ、良かった。ちゃんとシワもあるわ〜(泣)
「……お前、今、失礼なこと考えてるだろ?」
め、滅相もありません〜(泣)
「いいから、早く立て」
そう言って私の体を持ち上げようと脇に手を差し込む新垣さん。
むにゅう
「んん?」
確認するように新垣さんが指を動かす。
「ぎゃー!!変態!!」
バッチ〜ン!!と平手打ち。
「いって〜な!!」
「だ、だ、だって〜(泣)」
ち、乳 揉んだじゃーん(泣)
すると、大きなため息をついた。
「この調子だと還暦まで無理そうだな……」
ぎゃー!!
それも嫌だ〜(泣)
誰か、夢の中の私と足して2で割ってくださ〜い!!(泣)