決断
俺は今困っている。
明日は18にして初めてのデートの日。
ここまで辿り着くのにどれほどの労力と時間を費やしたことか…。
幼稚園での砂場事件(好きだったのであろうゆみこちゃんに砂をかけて泣かせた)、
小学校でのスカート捲り事件(これまた好きだったであろうマキちゃんのスカートを捲って学級会が開かれた)と、
誰もが通る畦道を経て、
思春期という獣道へ迷い込んだ。
中学時代、思いっきり女の子を意識してしまった俺は、思いっきり堅物となり、野球に三年間を捧げた。
その間浮いた話ひとつなくギリギリの成績で卒業。
なんとか入学できたのはそれまでの自分とは到底違う世界を生きてきたであろう人種の集う三流高校。
俺は春休みにグローブを捨てた。
代わりに雑誌を買いあさった。
そのためにバイトを始めた。
変わったのは眉毛と懐くらいだったけれど。
高校生活は野球部の練習よりハードだった。
バイト・合コン・合コン・合コン・バイト…。
現実は厳しかった。
坊主がスポ刈りに変わったくらいの俺に、世間はそうそう振り向いてはくれなかった。
そして1週間前、ようやく髪がなびくようになった俺に、春風がそよいだ。
バイト先に、可愛い女の子が入ってきたのだ。
戦々恐々とする職場で、俺も負けじと彼女にアピールした。
この必死で伸ばした髪を。
そしてとうとう光の差し込まない荒れた道をくぐり抜けた!
長かった。実に長かった。
明日は人生初のデートの日。
眠れない…
どうしたものか。
前日に眠れなかった時どうすればいいかなんて雑誌には書いてなかった。
困った。
俺は無理矢理目を閉じた。
何か白く丸い物が動いていた。
それは三年前に捨てたはずの野球ボールだった。
赤い縫い目がやけに鮮やかだった。
俺は手を伸ばした。
その手は空を掴むことしかできなかった。
遠くで監督の声がした。
かつての仲間の声がした。
どんなに耳をすましても、その声が近づくことはなかった。
審判が手を動かしていた。
どんなに目をこらしても、セーフなのかアウトなのかわからなかった。
頭痛がする。
目眩がする。
耳鳴がする。
眠れない。
俺はどうすることもできず途方に暮れた。
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