-陣内3-
-陣内3-
「はぁ? マジで言ってるの?」
「いや、マジメに。」
圭一の顔がマジだ。もしかして名前まで忘れちゃったの??
「藤堂……圭一でしょ?」恐る恐る圭一の名前を口にだす。
「そう……だよな。 よしよし。」確認するような感じでうなずく圭一。どうやら名前の記憶をなくしたわけではないらしい。と思ってるとさらに質問が飛んできた。
「俺の趣味ってなんだっけ?」
何がしたいのかよくわからないが、ここは素直に答えたほうがいいような気がする。
「スポーツ観戦じゃなかったっけ?」
「そうそう。ってあれ? 今度は映画って間違えなかったね。」圭一がニヤニヤしながら答える。
「何わけのわからないこと言ってるのよ! さっきあなたが自分でいったんじゃない! 頭打っておかしくなったんじゃないの?」
「まぁおかしくなったというかよくなったというか。」
「意味わかんない!」
私はあきれて少し早足で歩いた。なんかからかわれているようでムカツク。頭打って本格的にアホになったんじゃないかしら。
スタスタと1人早足で歩いていると、道が終わり広場のようなところへ出た。
そこには、たくさんの人がガヤガヤしていた。
「あー! 蘭子さん!」
聞き覚えのある声がした。愛だ。
愛はさっきまでの泣きそうな顔と違い、今の顔はすっきりしているように見えた。
さっきのやり取りでちょっといじめすぎてしまった感じがして罪悪感があったので正直ほっとした。
もうネタ晴らししちゃおうかしら? あんまり悪役をしても損だし、いつかはばれるのだから。
正直圭一とのやり取りは楽しかったけど、圭一にはちゃんと愛という彼女がいるのだからこれ以上関係をおかしくするのはいたずらの範疇を越えてるな。と私は思った。
「あ、愛ちゃん。よかった無事だったのね。」
そんなことを白々しくいいながら、私はこのややこしい話を終わりにする決意を胸に秘めた。