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-武田2-

-武田2-


「そんなはずないよー 圭ちゃん音楽好きだもんー」私はふてくされた。

そう、絶対間違えるはずがない! 圭ちゃんは音楽が好き!

洋楽ってカッコつけてるみたいでかっこ悪いじゃん、といって邦楽ばかり、しかも90年代が好きで私にもよく聞かせていた。

おかげで私も多少覚えてカラオケで歌ったりできるまでになったのだ。

確かにスポーツは中高とサッカーをやってたみたいだけど、見に行ったことは一度もないし、私の前ではそんな話はしなかったなぁ。


「そんなこといわれてもなぁ。」困った顔で圭ちゃんが言う。こんなに情けない人だったかしら?

「私たちまだ付き合いだして日が浅いからあなたの趣味の話とかあまり聞いてないわ。正直自信なかったもの。」蘭子さんが言う。

「愛ちゃんは自信があったみたいだけどどうもハズレみたいね。それとも誰か他の人と勘違いしてるんじゃないかしら? それか本当にあなたも記憶障害かしら。」

「……」なにも言い返せなくなってしまった。ホントに私記憶障害なのかしら。


「ま、まぁとりあえずどっちが俺の彼女かは保留ということで……」圭ちゃんがそう言った。

「そうね、とりあえずいつまでもここにいてもしょうがないから人を探しましょう。」蘭子さんも同意した。

私としては圭ちゃんの彼女という位置をはっきりさせたかったのだが、さっきのやり取りでどうも自信がなくなってしまった。でも、このままじゃどっちが彼女なのか曖昧なまま話が終わろうとしているじゃない! そんなのよくないわ!


「ちょ、ちょっと待って! やっぱりどっちが彼女なのかはっきりさせましょうよ! というか私が圭ちゃんの彼女なんですけど、どうしたら納得してくれます?」

「なによ、あなた。まだそんなこと言ってるの? さっきの質問でわかったでしょ? お互い彼女なら当然知ってるはずことを知らないんだから決められないじゃない。」

「いや、でも……」蘭子さんに正論で攻められて困ってしまった。圭ちゃんの趣味は音楽鑑賞で間違ってるはずはないのだから、きっとそれも圭ちゃんが忘れてるに違いないはずなのだけど……


「あの……ちょっといいかな?」圭ちゃんが話に入ってきた。

「もう! そもそも圭ちゃんがはっきりしないのがいけないんじゃない! なんで記憶障害になんてなるのよ!」つい本音が出てしまった。

「いや、そんなこと言われても……俺が記憶障害なのはどうやら確実みたいだけど、もしかしたら2人にもそういう部分があるかもしれないでしょ? だからここはみんなで協力して他の乗客を探して、俺らのことを知っている人に聞いたほうがいいんじゃないかなーって思うんだけど。今は俺の彼女がどっちかを話してる場合じゃないでしょ?」

「そんな……私、確かに圭ちゃんの彼女なのに……」

「そうよ、どっちだっていいじゃない。」蘭子さんが言った。

「圭一の言うとおり私たちだって記憶障害かもしれないんだから。その証明は私たちだけじゃできないでしょ? ここはまず他に人がいないか探しましょうよ。」


「……」私は2人からもっともな意見を出されて黙ってしまった。しかもあんなに仲良しだった圭ちゃんから「彼女がどっちかなんてどうでもいい」みたいな発言がでるとは思わなかった。記憶障害にしたってひどすぎる。確かに2人の言うことはあってるかもしれないけど……

私は泣き出しそうになっていた。


と思ってると蘭子さんがとんでもない一言を繰り出した。

「何黙ってるのよ? トイレ? ならさっき行ったじゃない。」

「トイレ?」圭ちゃんが不思議そうに尋ねる。

「そうよ。私たちが最初に会ったときにこの娘いなかったでしょ? そのときはあの草むらにトイレに行ってたのよ。」といって遠くの草むらを指差した。

「ちょ、ちょっと! やめてくださいよ! 恥ずかしい!」さっきの感情に恥ずかしさがまじり、半分泣きながら言った。こんな草しかないところでトイレに行ったなんて報告されたら、恥ずかしくて逃げ出してしまいたくなった。

「なによ? 恥ずかしがることないじゃない。私は別に平気だけど。ってあなたトイレ報告されたくらいで泣いてるの? なにも泣くことないじゃない。ねぇ圭一。」

「そ、そうだよ、人間なんだからしょうがないよ。」

「ほら、圭一もそういってるじゃない。」


「もう! 二人のことなんか知りません! 2人で仲良くしてればいいじゃない!」

そういって次の瞬間この場から走って逃げた。

圭ちゃんに「どっちが彼女でもいい」的な発言をされた悲しさ。

それとこんなところでトイレにいったと知られた恥ずかしさ。

蘭子さんの同じ女の子とは思えない無神経さ。

しかもいろんなところで妙に意見の合う2人。

いろんな感情がごちゃ混ぜになってわけがわからなくなり、もうこの場にいたくなくなった。


「圭ちゃんのバカー!!」


そう叫びながら私は草むらのほうへ走って逃げていった。


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