-藤堂4-
-藤堂4-
「まったく、蘭子のやつは……」
愛に続いて蘭子にまで先を行かれてしまい、俺はノロノロと道を抜けた。
するとそこは広場のようになっていて人がたくさんいた。現地の人か? 救助された人か? そう考えていると、蘭子と愛らしき人を発見した。近くにもう1人いるようだ。
「あ、藤堂さーん。こっちですよー」愛が俺を呼んだ。俺は3人のいるほうへ向かった。
「藤堂さん、すみませんでした。こちらが私の彼氏の圭ちゃんです。」愛がご丁寧に説明する。
「話は愛から聞きました。藤堂さんですね? スイマセン、愛が迷惑かけたみたいで。」目の前の青年が答える。
背格好は俺に似ているが、俺よりもはるかに頼りがいのありそうなこの人の名前はおそらく――
「圭一君……だね?」
「はい、そうです。佐藤圭一といいます。そしてこちらが彼女の武田愛です。」
「こんにちは。二度目まして。武田愛です。藤堂圭一さんの彼女ではありませーん!」愛がうれしそうにふざけていった。
「佐藤君か。はじめまして、藤堂圭一です。そしてこちらが僕の彼女の陣内蘭子です。」
「え? ちょっと何よ。」蘭子はいつものように不機嫌そうである。
えっと、とりあえず現状を確認しよう。
ここにいるのは4人。①俺こと、藤堂圭一。②陣内蘭子。③武田愛。④愛の彼氏の佐藤圭一君。
そう、この一連のめんどくさい事件の結末は単純そのもの。
単に俺以外に「愛の彼氏の圭一君」がいたのである。
年齢や背格好、髪型はやや似ている。が、普通間違えるか? と誰でも疑問に思うだろう。しかし話を聞くに愛はド近眼だそうだ。普段はメガネをしているのだが、波にのまれてどこかにいってしまったらしい。まったくもって迷惑な話だ。
初めの自己紹介のときにキチンと苗字を名乗っておくべきだった。いまさら後悔しても遅いのだけど。
おまけに「まさか違う人だなんておもいませんでしたよー なんだか圭ちゃんが急に頼りなくなった感じはしたんですよねー」といらない一言までつけてくれた。コレだから天然は嫌いだ。
救助の連絡もしてあるようだし、これで事件は一件落着。
……と思ったのだが、なんだか納得してない方が約1名。
まぁその理由は俺にはなんとなくわかるのだけど。
「ねぇ。」蘭子が俺に聞いてきた。
「はい、なんでしょう?」俺はわざとらしく答えた。
「私ってあなたの彼女なの?」
ほらきた。最初に自分で言ったのにね(笑)