区別
昼下がりの光が、レースのカーテン越しにやわらかく差し込んでいた。洗濯物をたたみ終えたばかりの手には、まだわずかに洗剤の匂いが残っている。
リビングに戻ると、テレビの音が少し大きめに響いていた。ニュース番組らしく、落ち着いたアナウンサーの声と、どこか浮き足立ったようなスタジオの空気が混ざっている。
ソファに座った主人は、いつもより前のめりになって画面を見ていた。
「――胸がこんなに大きい。びっくりした」
しっかりと手で胸の大きさを示している。
振り向きざまに、やけに率直な感想を口にする。妙に興奮気味で、目はまだテレビに釘付けのままだった。
「……何の話?」
そう返しながら、わたしも画面に目をやる。
そこに映っていたのは、話題になっている大手通販サイトの創業者と、その再婚相手の女性。確かに胸が大きい。
主人が純粋に驚いているのがわかって、笑えてくる。
主人はいつものようにリモコンを手に、ただ食い入るように画面を見続けている。
やがて映像が切り替わった。今度は過去の映像らしく、最初の奥さんとの結婚式の様子が流れる。少し古い映像で、色味もどこか淡い。
その瞬間、主人がぽつりと言った。
「あれ、小さくなった」
さっきと同じ熱量で驚いている。
テロップには前の奥さんとでているし、顔も違うし、髪の色だって違うけど、気が付いてない。
わたしは思わず、その横顔をまじまじと見てしまった。
真剣だ。ものすごく真剣に驚いている顔だ。
ソファの背もたれに軽く手を置きながら、わたしは小さく息をついた。
洗濯物の整った山と、ニュースのきらびやかな映像と、その隣で妙に納得したようにうなずく主人。
なんだか、全部がちぐはぐで、妙に可笑しかった。
「おまいは胸の大きさで人の区別をするんかい?」
リアルでこんな突っ込みをするとは……
主人をモデルに一作書けそう。そう思った午後だった。
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