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いろんな人がいろんなところで

区別

掲載日:2026/04/18

 


 昼下がりの光が、レースのカーテン越しにやわらかく差し込んでいた。洗濯物をたたみ終えたばかりの手には、まだわずかに洗剤の匂いが残っている。


 リビングに戻ると、テレビの音が少し大きめに響いていた。ニュース番組らしく、落ち着いたアナウンサーの声と、どこか浮き足立ったようなスタジオの空気が混ざっている。


 ソファに座った主人は、いつもより前のめりになって画面を見ていた。


「――胸がこんなに大きい。びっくりした」


しっかりと手で胸の大きさを示している。


 振り向きざまに、やけに率直な感想を口にする。妙に興奮気味で、目はまだテレビに釘付けのままだった。


「……何の話?」


 そう返しながら、わたしも画面に目をやる。


 そこに映っていたのは、話題になっている大手通販サイトの創業者と、その再婚相手の女性。確かに胸が大きい。


 主人が純粋に驚いているのがわかって、笑えてくる。


 主人はいつものようにリモコンを手に、ただ食い入るように画面を見続けている。


 やがて映像が切り替わった。今度は過去の映像らしく、最初の奥さんとの結婚式の様子が流れる。少し古い映像で、色味もどこか淡い。


 その瞬間、主人がぽつりと言った。


「あれ、小さくなった」


 さっきと同じ熱量で驚いている。


 テロップには前の奥さんとでているし、顔も違うし、髪の色だって違うけど、気が付いてない。


 わたしは思わず、その横顔をまじまじと見てしまった。


 真剣だ。ものすごく真剣に驚いている顔だ。




 ソファの背もたれに軽く手を置きながら、わたしは小さく息をついた。


 洗濯物の整った山と、ニュースのきらびやかな映像と、その隣で妙に納得したようにうなずく主人。


 なんだか、全部がちぐはぐで、妙に可笑しかった。



「おまいは胸の大きさで人の区別をするんかい?」



 リアルでこんな突っ込みをするとは……



 主人をモデルに一作書けそう。そう思った午後だった。




いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

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