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事象  作者: ゆーくりうすきゃる
事象1
3/3

第一章3 『you ready?』

―なんだろう....授かり物とでもいうのかな。


自信に巻きつく不可思議な定義を持った概念がまた彼女を悩ませる。それに応えるようにその存在が薄気味悪く顕現する。先程から妙に都合よく事が進む、彼女の保有する謎の概念によって。朝食を食べようと意識すると既に食卓に座り、カトラリーすらも揃っていた。後必要なのは食べ物そのものののみ。それ以外は朝食に入る準備は既に完成されている。牛乳が飲みたいと意識すればコップと牛乳カップが目の前に咄嗟に現れる。また通学の支度をしようと意識すれば猫が巻き付くように足元にスクバがいた。


―ちょっと楽になったってかんじ?....


時刻は7時過ぎ。勝手に準備された身支度や食事終えて父に挨拶をし、外と家を繋ぐ扉を開く。天気は快晴。春特有の足元に散らす桜を吟味しながら学校への路に足をなぞらせる。好きな季節は冬だが、この春の時に得られる空間は嫌いではなかった。春というと何か新しいことが始まる。入学式、新学期、卒業式、新社会人、新生活。そして今にみる桜がそれを囲む。季節から外れるが新年が嫌い。ハッピーニューイヤーのお言葉だとかあけおめだとかただ年を跨ぐだけでおおげさなあのムードが嫌いだ。そんな忌々しいものが年を跨ぐと必ず起こることが嫌すぎる。桜に見惚れながら新年に中指を立てて通学路を辿る。家から学校までは電車を通して30分。速いのか遅いのか絶妙によく分からない。電車賃をとられるくらいなら歩きで行ってやろうと一度は意気込んでみたものの、それだと1時間は余裕のよっちゃんで裕に超えてしまう。だが電車賃千円はかなり悩ましいもんだから、一度徒歩通学してみたものの朝起きるのが苦手なことを忘れて余裕で遅刻していた。しかしまあ遠出なので許されるような雰囲気だった。恥を知るまもない経験を思い出しながら交通道路のまん前で足を止める。止めた理由はとうぜん歩行者信号が赤かったから。だが命の危機は突拍子もなくあらわれる。交通に因果する事故の原因の大半は人的要因が占めている。その突拍子もない命の危機が通学中の彼女にのしかかろうとしていた。赤が緑に変わるまで彼女はボーっと突っ立ているだけでまわりへの意識が欠けている。ある車が歩行者道路にめがけて車輪を走らせていた。ネズミ色に光らせ特徴的なフロントをしているひとつのクラウンが一人の女子高生の命に刃を突き立てようとしていた。


「あの車、なんか車道からずれてない?....こっちきてない?....」


「どうしたんだあの車。」


他の歩行者達のささやきで彼女が異変に気づいた頃に既にクラウンは時速70キロで信号待ちの歩行者達へぶち当たることが確定していた。


―え、ちょっと待って、あの車絶対やばくない?....


なんかこっち向かって走ってるよね?なんで?やばいやばい....これは絶対にやばいって....!


――ぎゅいいぃぃぃいいいいいいぃいいいいぃいいん!!!!!!!!!


―ッ?!!!


クラウンは見事に歩行者道路へ豪勢に走り込み一つの交通事故を確立させてしまった。クラウンはぐらぐらなタイヤ痕を刻み込んだ奥のコンビニの駐車場へと突っ込んでいった。しかし不可思議なことに犠牲者は出なかった。さらに不可思議なのは猫兎すみれが傷一つないこと。他の歩行者が異変に気づいた頃にワンテンポ遅れてつられるように彼女は車の存在に気づいた。その時点でクラウンと彼女はキレイに対角となっていた。彼女は死ぬはずだった。その間に彼女は何かを意識していた。それはただ避けること。その意識が彼女を数メートル横にずらしたのだ。一連の余韻に浸る中で違和感があった。彼女自信もあの時死ぬことを確信していたから。


あれ私、死んでたよね....。なんでだろう、命が無事だ。私の真正面にあの車がいたのに、間違いなく車だって認識できてたし、トヨタのマークだってみえた。けどあの車がハンドルを切ってずらしたって間に合わなかったし、私自信が避けた実感もなかったのに....。

あ、これってもしかしてまたなのかな....?


命があることに違和感を感じてただ唖然と横断歩道の前に依然として佇んでいた。歩行者信号は青に変わっていた。例の事故は歩行者の通報によって朝にもかかわらず人だかりができるほどに騒がしくなっていた。彼女はそれを横目に見て横断歩道を渡って気を取り直して通学を続けた。その先にはいつもの最寄り駅までの道が続いている。道中にはでかい建物だとかビルだとかが聳え立っている。この都会特有の空間にも慣れると鬱陶しくなってくる。最寄り駅は通学、通勤者で溢れている。高い切符を買って改札を通り、ホームで電車をまった。その間にも彼女を悩ませる出来事が待っていた。一人の人間の頭上に雲が浮かんでいたり、一人の持つバックから無数の手が伸びていたり、また一人の顔にデカい蜘蛛が張り付いていたり。


―これ、私がおかしいの?...それともこの世界自体がおかしくなった?....


あれって私だけに見えてたりするのかな。なんかキショいし非現実的すぎて頭痛くなっちゃう。さっきは死にかけたし、今日なんかヤバいことになりそう。


そう憂いている間に目的の電車がやってきた。ずかずかと電車を降りる人達を待つ者もいれば時間がないのか押しのけて強引に入り込む者もいた。あるとこでは揉めあいも起こっている。電車に乗り込んでいつも最初にすることは窓に目線を移して密集する街並みやビル群をみて黄昏れることだ。この景色がどこかエモくて心を惹きつけられて安心感がある。夜になればさらに最高の景色が拝める。煌びやかな夜景に並ぶ建物の光が目に輝きを反射してくれる。今またださっきのことを忘れるためにこの景色に耽ていたい。しかしだが、先程のホームで見た妙な光景が電車内でも繰り広げられていた。首のないスーツの男、左目だけが昆虫のような複眼になった人、足元に無数のヤスデが渦巻いている人。窓から見える景色に耽ることなんてできないほど訳の分からないものが目に映るばかりだった。


目おかしくなったんかな。それともさっきの事故でガチで死んだとか。さっきから見えるものがおかしいし..というか今日一日がおかしい。また嫌なこと考えちゃうなぁ。


気づけば手に握っていたスマホを握りながら奇妙なものを目に写して時間を潰す。初めて乗った時は電車に揺れる人たちをみて内心楽しんでいたり失礼だけどバレない程度で色んな人を観察したりしたものだがそれにも飽きてしまっていた。今また奇妙なものを見つけてじっと見つめている。


―『お客様にお知らせいたします。お客様救護のため急停止いたします。』


急停止?...なんで?何があったんだろう...遅れちゃうなぁ。


―グゴン!ドッガーーーーンンンン!!!!!!


一つの大きな物音と共に乗っている電車が大きく揺れて横転しそうな程に傾いていた。乗客達がドミノ倒しで崩れていく。咄嗟の出来事に対応できず受け身を取れず倒れ込んでしまう。


「何がおこった?」


「今の音なに?」


―『お客様へお知らせいたします。只今不測の事態が発生したため運行を停止いたします。お手数をおかけしますがもうしばらくお待ちください。』


不測の事態?....いまのバカでかい爆発音のことだよねもしかしてテロ...とかじゃないよね...。


ざわめきと奇妙な光景、引き続き流される非常事態のアナウンスで電車内はカオスの三文字で包まれている。


―ドグン!!!ドパ!ドガングン!!!


再びの爆発で電車は一瞬宙を浮き完全に横転の姿勢に入っていた。


ま、また...!今度は間違いなく傾向姿勢になってる!

やばい絶対に倒れる...!間違いなくこの電車は絶対に倒れる....!倒れて...乗ってる私たちも斃れてしまうの.....?!



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