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わかる~の正体


「ねぇ聞いて〜!」

昼休みのカフェテリアに、甲高い声が響いた。

恋愛脳Aが、スマホを握りしめたまま身を乗り出す。

「彼氏がさ〜、最近ほんと返信遅くてさ〜」

承認欲求Bが、すかさず頷く。

「わかる〜! 不安になるよね〜!」 「既読ついてから三時間とか無理なんだけど〜!」

病み系Cは、ストローを噛みながらぼそっと言う。

「……私なら無理……」 「絶対、浮気してる……」

三人の視線が、一斉にユキに向いた。

「ね、ユキもそう思うよね?」

ユキは、少しだけ間を置いてから、口を開いた。

「……わかる〜」

(全然わからん)

心の中で、即座に否定する。

返信が遅い? 未読? 既読スルー?

そんなもの、人生において何の価値もない。

Aが、ふと首をかしげた。

「そういえばさ〜」 「ユキって彼氏いないの?」

ユキは、ストローで氷をかき混ぜながら答える。

「今はいないかな」

(※客はいる)

しかも、太客。

Bが目を輝かせる。

「え〜! もったいない!」 「絶対モテるのに〜!」

「へぇ」

(※興味ゼロ)

その後も、話は止まらなかった。

・元カレが最低だった話

・匂わせ女がムカつく話

・未読三日で泣いた話

・浮気されたトラウマ話

延々。 永遠。

ユキは、

「うんうん」 「わかる〜」 「それはつらいね〜」

を自動再生しながら、心を無にしていた。

(……長いな)

(……時計、進まんのか)

二時間後。

ようやく解散。

夕暮れの駅前を、ひとりで歩く。

人混みの中で、ユキはスマホをポケットにしまいながら、ぼんやり考えた。

(……この二時間で)

(ナカジマなら、三十万は出すな)

ため息とも、笑いともつかない息が、静かに漏れる。

「……はぁ」

今日も平和だ。

そして、虚無だ。

終。

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