表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

薄目とプライドと指差しゲーム


 金曜の夜。

 店は、いつも以上にうるさかった。

 理由は簡単。

 agjtmが、ホスト仲間たちを連れてきていたからだ。

いつものようにユキ指名。悠々と着席。

「今日さー」

 金髪ホストが笑いながら言う。

「この中でさ」

「一番タイプの子、目つぶって指さそ?」

「え~まじ?」

「いいじゃんいいじゃん!」

 周囲が盛り上がる。

 agjtmは、一瞬だけ固まった。

「……え……」

(いや……)

(でも……)

(ユキ、俺のこと結構気に入ってるし……)

(さすがに……俺だよな……)

「……い、いいじゃん」

 余裕ぶった声で言う。

 内心、心臓バクバク。

「じゃ、せーの!」

 全員、目を閉じる。

 指を伸ばす。

 その瞬間。

 agjtmだけ――

 薄目。

 ほんの1ミリ。

(……ちょっとだけ……確認……)

 視界の端に映る。

 ユキ。

 腕を組んで。

 無表情で。

 ――ナカジマの方向を指している。

 別席。

 壁際。

 酒を抱えて待機中の。

 あの、重課金おぢ。

(…………は?)

 脳、停止。

「はい、開けてー!」

 全員、目を開く。

「えっ」

「え?」

「そっち!?」

 指差しの先。

 ナカジマ。

 困惑している。

 号泣寸前で。

「え……俺……?」

「……ユキ……?」

 ユキは、にこっと微笑む。

 営業用。

「待ってくれてて、可愛いなって」

 ナカジマ。

 即死。

「……っ!!」

「嬉しい……!!」

「結婚……!!」

「黙れ」

 agjtm、即ツッコミ。

 声が低い。

「いやいやいやいや!!」

「おかしいだろ!!」

「俺いるじゃん!!」

 仲間ホスト、大爆笑。

「やばw」

「負けてて草w」

「もう指名替えまちゅ?w」

 agjtmの心、粉砕。

「……ユキ」

 必死に笑顔を作る。

「冗談だよね?」

「え?」

 ユキ、きょとん。

「本気だけど」

 即答。

 0.1秒。

「……は?」

「だって」

 ユキは肩をすくめる。

「ナカジマの方が」

「使うし」

「静かだし」

「楽だし」

 正論三連撃。

 致命傷。

 agjtm、白目。

(……金……)

(俺……負けてる……)

 そのとき。

 ナカジマ、震えながら手を挙げる。

「……ユキ……」

「俺……」

「……今日も……」

「…ピンドン…」

「いれる……」

「待って」

 ユキ、即制止。

「今日はクリスタルのロゼな気分」

「……っ!!」

 ナカジマ、昇天。

 agjtm、死亡。

 心の中で叫ぶ。

(……くそ……)

(絶対……俺の方が……)

(顔いいのに……!!)

「…………俺も」

 一拍。

 唾を飲む。

「…………サロン……入れるわ」

 言ってしまった。

 完全に。

 取り消せないやつ。

 ナカジマ、即反応。

「え!?」

「agjtmも!?」

「マジで!?」

「負けねぇ!!」

 勝手にライバル化。

 ユキ、無表情。

「……本気?」

 agjtm、背中に冷や汗。

(……いや無理……)

(……まだ、売掛回収もできてねーし……やばい……)

(でも……)

 ナカジマを見る。

 札束。

 勢い。

 狂気。

(……ここで引いたら……)

(俺……一生……負け犬……)

「……本気」

 震えを殺す。

 笑う。

「ユキのためだし」

 ユキ、少しだけ目を細める。

「……ふーん」

「じゃ、タワーにしてね」

「……っ」

 死亡宣告。

 その後。

 ナカジマとagjtmは並んで座り、

 同じように青い顔で、

 同じようにスマホで残高を見ていた。

「……なぁ……」

 ナカジマが呟く。

「俺たち……」

「……幸せだよな……?」

 agjtm、遠い目。

「……うん……」

「……たぶん……」

 ユキは、その二人を見ながら思う。

(今日も順調。)

(養分が増えた。)

(最高。)

 ユキは、そんな二人を見ながら思う。

(今日も平和。)

(収入安定。)

(最高。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ