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(2)母との別れ

 キャエルはとても優しい子だった。いつも笑顔を私に向けてくれて、私の心が幾分か楽になった。

 キャエルは次期聖女候補だと聞いた。まだ3つなのに見かけるたび、聖騎士が周りを囲んでいた。聖女は世界で1人だけ。聖女は死ななくては新しい聖女は生まれない。だからこそ聖女の仕事は楽でないはずだ。しかも第3王子の婚約者。きっとすぐに私より忙しくなる。キャエルとすぐに会えるのは何年後かには難しいだろう。だからこそ、リノンはキャエルを大切にしようと思った。

 未来、少しでも彼女の居場所と言える存在になりたくて。

 

 ―そんな平和な日々の中、事件が起きた。―


 私の母が、外出中に()()()()

 母は人よりも魔力が高く、人々に煙たがられていた。それは知っていた。でもいきなり過ぎて、頭が真っ白になった。

 この国は魔力の多い人が皇帝になって、その後国がドミノだ押しのように停滞して今王国になっている。

 それ故か魔力の高いものは不運を呼ぶと言われた。そのデモで、母は死んだ。

 リノンは葬式時、涙を見せなかった。泣きすぎて、既に涙が枯れていたから。

 リノンは自室で1人泣いた。リノンの泣き顔は本人を抜いて2人しか見たことがないと言う。リノンは「涙ない姫」と呼ばれた。母が死んでも泣かない冷徹な姫。皮肉じみた呼び名は酷くリノンに刺さった。

 そして思った。

「なら思いこの際、それでいい。冷徹で人に感情を見せない姫になってしまえばいい」

 と。

 母は死に、父は私を何とも思っていない。私を気にするのは地位のため。それだけだってわかっている。父は6歳の子供にここまで残酷な状況に立たせた。

 しかしリノンは人前で泣かなかった。それが悪いのか、妃教育はその後も続いた。

「リノン……大丈夫か?」

 キャエルに会う事を意図的に避けた。今の心がめちゃくちゃな私と会って欲しくなかったから。

 でも婚約者のオルコスには強制的に会わされた。彼が私に久しぶりに会って最初に言ったのは私への心配の言葉だった。

「……うん。だいじょお…ッ」

 いきなり目尻が熱くなって啜り泣いた。ここはオルコスの部屋。ここには私と彼の2人だけ。

 彼は私を抱きしめ、背中をゆっくりと撫でて

「ここでは泣いてもいいよ。大丈夫だから。」

「っごめッズッ……ありがと。オル…ッ…コス」

 私は涙が止まらなくてしゃがみ込む。オルコスは昔から人を慰めるのが上手かった。

 後で聞いた話だがオルコスは側室の子であり第1王子。立場上虐げられることが時にはあったそう。その時に乳母に慰めてもらったのを真似してるとか。

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