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(1)リノンとキャエル

 リノンは5歳の時から第1王子、フレジリオーク・オルコスの婚約者だった。彼女が公爵令嬢だったから都合が良かったと分かっていたものの、公爵はそれに腹を立てていた。

 それは第1王子が()()の子だったからだ。公爵令嬢である娘が側室の子と婚約だなんてと。しかし当の本人は全く気にも止めていなかった。

 当時の彼女は側室だとかそういうのは分かっていなかったから。


 6歳の時、妃教育が始まった。公爵令嬢だからといって妃教育が簡単なはずない。

 リノンはよくこっそり泣いていた。妃教育だけではなくとも家族に見せられない涙をこっそり見せた。

「だいじょうぶ?」

 その時、ちょうど来ていた女の子と出会った。リノンはそれはそれは驚いた。家族にすら隠したのに関わらず、3歳くらいの女の子に見つかったのだから。

「あっ貴方誰?」

「わたし?わたしはキャエル!」

 その子はキャエルと名乗った。一応妃教育の賜物か、彼女がチャルメイト家の人間だとわかった。3大公爵家に続く5大侯爵家の序列1位令嬢、かつ第3王子の婚約者だ。

「…キャエル嬢?」

「はい!」

 そう笑顔で言われて不覚ながら見惚れてしまった。

 チャルメイト侯爵家は元々特に身なりの良い家系だと聞いていたが彼女は圧倒的だった。

 自分のつり目と違いまん丸な目が落ちそうで、紫の瞳は宝石のように輝いている。

 透き通るような素肌にサラサラでクセのない銀髪、3歳の彼女の未来が怖くなるほどだった。

「おねえさんはだあれ?」

 座っていないような首を傾げ、私に聞く。私はしゃがんでいるから目がしっかりあってかわいくて仕方ない。

「私はリノンよ。フィロソン・リノン。」

 私がそう言うとキャエルはキラキラさせた目で私を見た。

「しってる!えっと、フロスさまのおにいさまの、こんやくしゃ?」

「そうよ。」

 フロスは第3王子の事だ。キャエルは彼の婚約者、確かにそれが一番覚えやすいだろう。

「リノンさまはどうしてないてるの?」

 子供も当たり前の質問がひどくさっさった。まあ私も6歳ではあるものの……

「ちょっと嫌なことをがあってね。」

 母は優しいけど()()が強くて、批判が多くてその娘の私も嫌われる。父は政略結婚で結婚しただけで母にも私にも愛がなく、批判される母にあたるほどだった。

 母を好きなはずが好きか分かんなくなっていっく。

 純粋無垢なこの子に言える事じゃない。軽く笑って誤魔化す私にキャエルは手を伸ばしてきた。

「リノンさまだいじょうぶ。だいじょうぶだよ。」

 私の頭を撫でながらそう言うキャエルの手は温かくて、先ほど拭ったの涙が自然と零れていった。

 これがチャルメイト・キャエル。後の聖女との出会いだった。

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