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王の裁き


夜明け前の王宮は、

不気味なほど静まり返っていた。


執務室に集められた重臣たちは、

王の前に整列して立っている。


アレクシオンは、

机の奥に立っていた。


鎧も剣もない。

だが、その佇まいに

誰もが息を呑んだ。


「――私の目の前で」


低く、よく通る声が室内に落ちる。


「王妃ローザリアは、

第二王女リリシアンによって

その命を奪われた」


ざわめきが、

一瞬だけ走った。


しかし、王は言葉を止めない。


「私は見た。

王妃は、光に包まれ、

その場から消えた」


「それは、

王妃が生きる道を

自ら断ったのではない」


「奪われたのだ」


視線が、

重臣たちを一人ずつ射抜いていく。


「王妃は、

最後に微笑んでいた」


「それは、

私に向けられた信頼だった」


「その信頼を、

踏みにじった者がいる」


沈黙。


異議は出ない。


出せるはずがなかった。


「これは私刑ではない」


アレクシオンの声は、

どこまでも冷静だった。


「王妃殺害は、

王国の法に照らしても

最も重い罪の一つだ」


「たとえ、

それが王族であろうと、

例外はない」


短く、息を吸う。


「よって――」


「第二王女リリシアンを、

ただちに幽閉せよ」


「その上で、

法の下に裁きを与える」


断定。


そこに、

迷いはなかった。


「王妃を奪った罪は、

必ず清算されねばならない」


「それが、

彼女の微笑みに応える

唯一の道だ」


その言葉は、

祈りのようでいて、

命令だった。


重臣たちは、

深く頭を垂れる。


王の言葉が、

そのまま法となる瞬間だった。


会議は、

それで終わった。


人が去り、

執務室に静寂が戻る。


アレクシオンは、

窓辺に立ち、

白み始めた空を見つめた。


「……安心しろ」


誰もいない空間へ、

静かに告げる。


「君の信じた世界は、

私が守る」


「だから――

間違っていない」


それは、

自分に向けた言葉でもあった。


剣も、

血も、

涙もない。


あるのは、

微笑みによって完成した正義。


こうして――

王妃ローザリアは

“殺された存在”として語られ、

第二王女リリシアンは

“罪人”となった。


すべては、

王の目撃と、

王の言葉によって。


(第49話・了)


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