戦う者たち
玉座の間に足を踏み入れた瞬間、
アレクシオンの胸が高鳴った。
――来た。
長い旅。
血と土と、無数の夜。
そのすべての果てに、
ようやく辿り着いた場所。
(……聖女を、取り戻す)
内心の歓喜を、
彼は誰にも悟らせなかった。
玉座の前に立つ影。
魔王ヴェルゼリオ。
その脇に、
淡い光の壁。
結界。
中にいる白い影を見て、
アレクシオンの喉が鳴る。
(……無事だ)
安堵と、
歓喜と、
名づけられない感情が混ざる。
「行くぞ!」
ブラムの号令で、
戦いが始まった。
次の瞬間、
魔力が爆ぜる。
「――っ!!」
衝撃が、
床を抉った。
ヴェルゼリオの攻撃は、
容赦がなかった。
剣を弾き、
盾を砕き、
空間そのものを歪める。
「……強い!」
ブラムが呻く。
エルシアの防御がなければ、
前衛はすでに倒れていた。
「前衛、下がって!」
リリシアンの制御魔術が走る。
だが、
それでも押し切れない。
魔王は、
確かに強かった。
セレスタンは、
歯を食いしばる。
(……本気だ)
だが同時に、
違和感もあった。
致命的な一撃が、
来ない。
勝ちに行く攻めが、
最後の一線で止まる。
その理由を、
勇者一行は知らない。
――結界の内側で。
ローザリアは、
それを見ていた。
魔王の攻撃は、
すべて計算されている。
殺せる一撃を、
殺さない。
避けられる攻撃を、
避けない。
(……この人は)
(最初から、
戻るつもりがない)
その事実に、
気づいてしまった。
「アレクシオン!」
セレスタンの声が飛ぶ。
魔王の動きが、
一瞬、鈍った。
その隙を、
アレクシオンは見逃さなかった。
剣が、
深く食い込む。
本来なら、
避けられた一撃。
ヴェルゼリオは、
受け入れた。
視線が、
結界に向く。
一瞬だけ。
だが、
ローザリアには十分だった。
(……だから)
(私を、
ここに閉じ込めた)
魔力が、
急激に失われていく。
ヴェルゼリオは、
崩れ落ちながらも、
最後まで立っていた。
誰も、
とどめを刺した感触を得られない。
ただ、
“勝った”という結果だけが残る。
魔王は、
倒れた。
だが――
まだ、消えていない。
結界の光が、
静かに揺らぐ。
その向こう側で、
ローザリアが動いた。
(第27話・了)




