表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

第8話:知恵の勝利

ステラは、ゴーレムに近づきすぎないように、距離を取った。そして、深呼吸をする。


「作戦通り……」


ステラは、心の中でアルスの作戦メモを反芻した。


まず、風と埃の魔法でゴーレムの目を眩ませる。次に、小さな音の魔法で注意を引き、最後に熱の魔法で弱点を突く。


ステラは、最初の魔法を放った。コピーした「埃を払う魔法」と、アルスから教わった「小さな風を起こす魔法」を同時に発動させる。二つの無力な魔法が、ステラの魔力を通して一つになった。


「はあぁああああっ!」


闘技場の床に溜まっていた砂塵が、ゴーレムの顔めがけて一気に舞い上がった。ゴーレムの視界は一瞬で白く染まり、その動きが鈍った。


その隙に、ステラは「物を一瞬だけ軽くする魔法」を自分にかけ、ゴーレムの懐に飛び込んだ。ゴーレムの巨大な拳が振り下ろされるが、ステラはまるで蝶のように身軽にそれをかわす。


「次は、ここ!」


ステラは、ゴーレムの胸に埋め込まれた魔石に狙いを定めた。そして、コピーした「コップの水を温める魔法」を連続で放った。微弱な熱を持つだけの魔法が、魔石の同じ一点に集中し、少しずつ、しかし確実に魔石を熱していく。


「ギギギギギ……」


ゴーレムが苦しげな音を立てる。魔石が内側から熱に侵され、亀裂が走り始めた。そして、ステラが最後の魔法を放った瞬間、魔石は音を立てて砕け散った。


ゴーレムの動きは、完全に止まった。試験官や他の生徒たちは、ただ呆然とステラを見つめていた。攻撃魔法も防御魔法も使わず、ただの「生活魔法」だけで、最強のゴーレムを沈黙させた彼女の戦い方は、誰もが想像だにしなかったものだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ