第6話:絆の芽生え
実技試験まであと数時間。図書館の閉館時間が迫る中、ステラとアルスは最後のシミュレーションを行っていた。
「これで、全ての準備は整った。あとは、君が自分の能力と、僕たちの作戦を信じるだけだ」
アルスの言葉に、ステラは静かに頷いた。
「ありがとう、アルス。あなたがいなかったら、私はきっと、試験を諦めていた」
「いいんだ。僕も君のおかげで、自分の理論を証明することができた。僕一人じゃ、机上の空論で終わるところだった」
二人の間に、言葉以上の信頼が流れていた。それは、魔法の力ではなく、知恵と、互いを信じる気持ちから生まれたものだった。
しかし、ステラの心は、依然としてざわついていた。この数日間、アルスとの間に築き上げた友情は、彼女にとってかけがえのないものになっていた。もし、明日試験に落ちてしまったら、この関係は、いつか終わってしまうのだろうか。
「ねぇ、アルス。もし、私が試験に落ちたら……」
「大丈夫だ、ステラ。落ちても、落ちなくても、僕たちの研究は続く。それに、君はきっと合格する。なぜなら、君はただの魔法使いじゃない。君は……魔法の可能性を広げる、新しい魔法使いだからだ」
アルスの言葉は、ステラの心を覆っていた不安を、ゆっくりと溶かしていった。彼の言葉は、彼女が初めて自分の能力を肯定し、誇りに思えるようになる、第一歩だった。
外はもう、夜の闇に包まれていた。図書館の窓から見える空には、満月が輝いていた。その光は、ステラの心に、明日への希望を灯すようだった。