第4話:魔法の連鎖理論
アルスが語る『魔法の連鎖理論』は、ステラにとって、まるで新しい世界の扉を開く鍵のようだった。魔法は、個々の力を競うものではなく、知識と想像力によって無限に広がる可能性を秘めている――アルスはそう力説した。
「君の『ホコリを払う魔法』と、僕が考案した『小さな風を起こす魔法』。この二つを組み合わせれば、ゴーレムの目を眩ますための砂嵐を生み出せる。風の魔法がホコリを巻き上げ、それを払う魔法がさらに勢いを増す。これだけで、ゴーレムの視界はゼロになる」
アルスの言葉に、ステラは目を見開いた。彼女の持つ魔法は、どれもこれも無力で、まるで役立たずだと思っていた。だが、アルスの理論に当てはめてみると、それらはまるで、大きな絵を描くための小さな絵筆のように思えた。
「それに、僕が調べた限りでは、このゴーレムの魔力核は、高熱に弱いんだ。君の『コップの水を温める魔法』を一点に集中させれば……」
アルスは、興奮した様子で図書館の床に数式を書き始めた。彼の言葉は、魔法の複雑な理論を、まるでシンプルな算数のように解き明かしていく。魔法を使えないアルスが、なぜこれほどまでに魔法に詳しいのか、ステラには理解できなかった。だが、彼の瞳に宿る真剣な光は、彼女の心の壁を溶かしていくには十分だった。
「信じてみるわ、あなたの理論を」
ステラは、アルスの研究を助け、彼の魔法の連鎖理論を理解しようと努めた。彼女の筆記試験で培った膨大な知識が、アルスの理論を補強し、二人の間に確かな信頼関係が生まれ始めた。