第3話:奇妙な協力者
絶望の淵に立たされたステラは、実技試験の前日、学院の図書館の片隅で、不思議な少年と出会った。彼の名はアルス。魔法を使えないが、魔法の理論に異様に詳しい、変わり者の生徒だった。
山積みにされた古書に顔を埋めていたアルスは、ステラの姿を認めると、躊躇なく話しかけてきた。
「君、魔法コピーのステラさんだろ?噂はかねがね。君の能力、すごく興味深いんだ」
ステラは警戒した。自分を恐れない人間など、この学園にはいなかったからだ。彼女は、集めた無価値な魔法をアルスに見せた。
「こんなもの、実技試験の役に立つはずないわ」
アルスは、一つひとつの魔法をじっくりと観察し、目を輝かせた。彼の反応は、他の誰とも違っていた。
「いや、これはすごい!『ホコリを払う魔法』は風の魔法の亜種、『コップの水を温める魔法』は熱の魔法の亜種だ。これらを組み合わせれば、もっと大きな力が生まれるかもしれない」
彼は、ステラの持つ魔法を、まるでパズルのピースのように組み合わせ始めた。彼の語る理論は、常識的な魔法使いの思考とは全く異なっていた。魔法そのものの強さではなく、魔法の連鎖と応用を語るアルスの言葉に、ステラの心は揺さぶられた。
「考えてみて。単体では無力な魔法も、他の魔法と組み合わせることで、一つの目的を達成できるかもしれない。これが、僕の提唱する『魔法の連鎖理論』だ」
アルスは、実技試験の課題である「魔力の暴走した古代ゴーレムの鎮静化」を想定し、一つの作戦を提示した。
「ゴーレムは視覚と聴覚に頼っている。君の魔法で、それを撹乱するんだ。そして、最後に熱の魔法で弱点を突く。どうだ、やってみないか?」
アルスの瞳に、ステラは初めて、自分の能力に対する希望を見た。彼はステラを「呪われた者」としてではなく、「可能性を秘めた者」として見ていた。この出会いが、ステラの物語を大きく変えることになる。