第2話:不毛な懇願
ステラの心に、一つの微かな光が灯った。ありえない可能性。誰かに、魔法を譲ってもらうこと。たとえそれが、どれほど身勝手で、恥ずべき行為だとしても。
最初に声をかけたのは、親友だったリリアだった。長い銀髪を持つ彼女は、可憐な花を咲かせる魔法を操る、優しい心の持ち主だった。
「お願い、リリア。私にあなたの『花咲かす魔法』を分けてくれない?実技試験を乗り越えるために、この力が必要なの」
ステラの懇願に、リリアは後ずさり、怯えたように目を泳がせた。
「ごめん、ステラ。私、この魔法を覚えるために、どれだけ練習したか。それに、あなたとずっと友達でいたいけど……」
リリアの言葉は最後まで続かなかった。だが、その瞳に宿る恐怖が、彼女の言いたかったことを雄弁に物語っていた。「魔法を失うことのほうが、友情よりも大切だ」と。
リリアの拒絶は、ステラの胸に深く突き刺さった。二人の間にあったはずの温かい友情は、もろくも崩れ去った。
その後も、ステラは誰彼構わず声をかけた。廊下で、中庭で、食堂で。
「あなたの『コップの水を温める魔法』、コピーさせていただけませんか?」
「お願いです、『ホコリを払う魔法』を……。試験が終わるまででいいんです!」
しかし、返ってくるのは、憐れみや拒絶ばかりだった。
「そんなに困ってるなら、いいわよ。私の『石鹸玉を浮かせる魔法』、あげるから。ただし、もう二度と私に話しかけないで」
差し出された魔法は、どれもこれも生活の片隅にあるような、取るに足らないものばかり。ステラは、そうした魔法をコピーするたびに、自分の存在が、誰かの不要なものを集めるゴミ箱のように思えて、ひどい自己嫌悪に陥った。
彼女は、魔法を奪うという行為が、他人の善意を利用した強奪行為に思えて仕方がなかった。