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第1話:孤独な魔女

挿絵(By みてみん)

キングストン魔法女学院


キングストン魔法女学院の白い石畳は、いつも太陽の光を反射して輝いていた。だが、ステラ・マリーゴールドの目には、その輝きは届かなかった。彼女の視界は、常に学園の生徒たちが彼女を避けて歩く、その影に覆われていた。


「ねえ、見て。ステラよ」


「触ったら、魔法を奪われるって噂、本当なのかな?」


すれ違うたびに、囁きが聞こえた。言葉は直接彼女に向けられることはない。だが、その声は、彼女の心の壁に鋭く突き刺さった。


ステラの持つ魔法は、対象の魔法を完全にコピーする能力。その代償として、相手は永久にその魔法を失う。心からの承諾がなければ発動しないという制約は、彼女にとっては呪いに過ぎなかった。愛着のある魔法を、自ら手放す人間などいるはずがない。誰もが、自分の大切なものを奪われることを恐れていた。


「……筆記試験は、満点だったのに」


誰にともなく、ステラは呟いた。魔法理論、魔法史、魔力薬学。彼女の頭脳は、学園でも群を抜いていた。だが、明日へと迫る実技試験は、座学の知識だけでは乗り越えられない壁だった。攻撃魔法も、防御魔法も、彼女は一つも持っていない。


実技試験の課題は、実践的な魔法の応用力を問うもの。だが、彼女が持つのは、ただ一つ、「魔法をコピーする」という能力だけ。それは、敵を打ち破る力でも、身を守る盾でもなかった。


ステラは、自分自身を深く嫌悪し始めていた。この能力は、誰かから何かを奪うことしかできない。それはまるで、彼女自身の存在が、他者の光を奪って生きる影のようなものに思えた。


「私は、どうすればいいの……」


学園の片隅、誰も来ない古い噴水のそばに座り込み、ステラは膝を抱えた。噴水の水が静かに流れ、彼女の孤独を一層深くするようだった。退学、故郷への帰還。その選択肢が、まるで彼女の未来を嘲笑っているかのように思えた。

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