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過去の名残...

 俺、三竹優音(みたけゆうと)は現在24歳の無職だ。

高校生あたりから、ゲームに夢中になり大学2年生の頃()()()ゲームで良い記録を残した。

その後はそのゲームの影響か、他のどんな娯楽や趣味に高揚感を得ることが難しくなってしまった。

虚無感を持ったまま大学を卒業し、新卒採用で会社に就職するも、周りと馴染むことができず1年未満で退職した。両親は物心つく前には亡くしており、祖父母の家にて生活を送っている。


 家に引きこもっては寝てばかりというわけでは無く、常に情報を収集し俺の心を動かす何かを探している。ゲームという名の転機点は俺の心の奥深くに動かないまま固定されている。

この鎖をほどけるほどの存在があれば、このような生活から脱出することができる...はずだ。


 今日も今日とて、乾燥してる部屋の中、目を半分空けながら人差し指でマウスホイールを動かしていると、そこには【新作!これまでのゲームでは味わうことのできない新体験! 『ルミナス・スフェーン』】という輝かしい文字が脳に入ってきた。

思わず目を見開きそうになったが、このような文言のゲームは死ぬほど見てきたので、またかと思いつつ下の方にスクロールしていくと、専用ページが出てきたので押してみた。


「こ、これは...。」


 何か月ぶりだろうか、水分の失われたスカスカの声が口から出てきた。

そこには確かに今までのゲームとは異なる紹介PV映像や、発売時期、使用機器など多くの情報が押し寄せた。パソコンにVR機器を接続し、専用の機器を身体に装着するだけで『ルミナス・スフェーン』の世界に飛び込むことが出来るらしい。


 「か、金...貯金はた、確か....っ!」


 長時間座りっぱなしだったせいもあり、両足と腰回りに鋭い痛みを一瞬感じたがそんなことよりも貯金をしまっていた場所へと足を運んだ。

大学生の間、勉強とアルバイトと少しの友人との時間を繰り返し送っていたのでお金はまぁまぁ溜まっていた。綺麗な封筒にはおよそ5,60万円ほどのお金が入っていた。

このゲームの専用機器と値段は、10万円と3万7900円合わせて14万円弱ぐらい、スマホやノートPCと同等くらいの値段だ。つまりこのゲームには、現代の社会での生活必需品である神器と同等の価値があるということだ。今の俺にはもう誰も止められない。革新的な衝撃が脳に走った。

一階にいる祖父母に伝えるべく、すぐさま階段を下り、夕飯の支度をしているであろうキッチンに向かった。案の定、そこにはテレビを聞きながら読書をしている祖父と味噌汁を作っている祖母の姿があった。珍しく自ら降りてきたので俺の姿を見た二人は思わず手を止め少しの間唖然としていた。


 「ど、どうしたんだい...?優音や。」

 「おじいちゃん、おばあちゃん、大事な話があるんだ。」

 

 二人にはどうしようもない俺を支えてくれた恩がある。

今ここで、新ゲームをやりたいからといって、今まで通り何もしないままだと駄目だ。

納得させれるぐらいの条件を持ち出して、なんとか...、なんとか...!


 「し、新作のゲームがやりたいんだ。も、もちろん俺の貯金からお金は出すし、今まで通りの生活を送るわけじゃない!......あ、アルバイト!アルバイトを始めるよ!社会復帰を目指しながらゲームをするっていう条件でど、どうかな...?」


 言いたいことは言い切った。

アルバイトくらいなら今の俺にもできるはずだ。

社会復帰なんて大きく出てしまったが、ちょっと言ったことを後悔してきちゃった。


 「じいさん...。」

 「あぁ、ばあさんよ。」

 「優音、よく言った!それでこそ立派な男子だ。」

 「あぁ、優音や、無理はしなくていいからゆっくりと頑張っていきなさい。

  理由なんてどうだっていい、ゲームのためだろうが、わし達は、優音が元気に過ごせればそれで、

  いいんだ。自分のペースで頑張りなさい。」

 「あ、ありがとう!」


 許可も得たので、自分の部屋に戻り素早く着替え、お金とクレジットカードが入っている財布をズボンに入れ、夕飯の時間になる前までに帰ってこれるように、何か月ぶりに近くのコンビニに入金をしに行くためだけに外出をした。

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