8話、「Burning Future」
Burning Future
ボーカル:天音ユナ / 作詞作曲:NO FUTURE
ドォォォン!!!!
ギターの鋭いリフが鳴り響いた瞬間、NO FUTUREのステージが燃え上がる。ユナの指先がギターの弦をかき鳴らし、火花が散るようなサウンドが響き渡る。
「Oh oh oh! Burning Future!」
ユナが叫ぶ。ステージ中央で拳を掲げると、真紅の炎が勢いよく噴き出し、観客を一気に引き込んだ。
ミサキのドラムがリズムを刻む。スティックがハイハットを鋭く打ち鳴らし、観客の心臓を揺さぶる。
「この手で燃やせ!燃やせ!」
ユナがギターをかき鳴らし、炎が巻き上がる。 その熱気をエリカの風が掴み取り、舞台全体を覆うように炎の渦が広がる。
観客は熱狂していた。
リヴェルデ村の村人たち、兵士たち、そしてブラッディ・リズムの3人が、初めて目にする「音楽が魔法となる瞬間」に息を呑んでいた。
「おおおお!! なんだこれは……!!」
「音が……見えるぞ!? いや、炎になってる!!!」
「すげぇ……音楽でこんなことができるのか……!!」
ブラッディ・リズムのルージュ・スカーは腕を組み、興奮した目でステージを見つめていた。
「ほぉ……こいつら、なかなかやるじゃねぇか……!」
シオン・アッシュがニヤリと笑う。
ベル・バレットは興奮しすぎて、思わずスティックを空中で回していた。
「くっそカッケェェェェ!!! やっべぇぇぇ!!!!」
村人たちも兵士たちも、彼らの音楽に引き込まれ、全身が震えるような感覚を覚えていた。
(これが……異世界の音楽バトル……!?)
観客たちが驚きと興奮でざわめく中、NO FUTUREの演奏は勢いを増していく。
「足元に広がる影の道」
レンのベースが唸る。
ズゥン……! ズゥゥゥン!!
地面が微かに震え、低音の波が観客の体を包み込む。まるで足元から何かが這い上がってくるような、ゾクッとする響き。
「昨日の自分が囁く『もうやめたら?』」
ミサキのドラムがスローに刻まれる。
ダン……ダン……ダン……!
心臓を締め付けるようなビートが、不安を煽るように鳴り響く。
それでも、ユナの声は力強く響いた。
「それでも鳴り止まない鼓動が」
エリカがギターの弦を鋭く弾いた。音の波が空間を揺るがす。
「迷いの壁を蹴り飛ばしてく」
ユナが炎の中を一歩踏み出した瞬間、舞台の炎が勢いを増す!
ゴォォォォッッ!!
真紅の炎が天に向かって燃え上がり、観客は再びどよめいた。
「すげぇ……これ、魔法の演出か!?」
「いや、違う……これが、音楽の力なんだ……!」
ブラッディ・リズムの3人も、ステージに釘付けになっていた。
「涙の跡も、傷ついた声も」
レンのベースがビブラートを効かせながら低音を響かせる。
ブルゥゥゥゥン……!
重みのあるサウンドが観客の心に染み込むように広がった。
「全部、燃やしてしまえばいい」
エリカがギターを滑らせるように弾き、火の粉が散るようなリフが響き渡る。
「壊れそうな世界の隙間で」
ユナは両手を広げ、観客をまっすぐ見つめる。
「今、叫ぶんだ!」
ミサキのドラムが力強く叩きつけられ、次の展開へのアクセントとなる一撃を刻んだ。
ドン!!
ここから、サビに突入する
「燃え上がれ! Burning Future!」
ユナのギターから炎が噴き上がる!!
ゴォォォォォッ!!!
「この炎は誰にも消せない!」
ユナがギターをかき鳴らしながら観客を煽る。炎はユナの動きに合わせて形を変え、まるで生きているかのように舞い踊る。
「燃え尽きるまで走り続ける!」
ミサキがスティックを振り上げ、全力でドラムを叩きつける!
バッバッバッバッ!!!
雷が迸り、ステージを覆うように青白い稲妻が奔った。
「限界なんて幻だ!」
レンがベースの重低音を響かせると、周囲に氷の結晶が生まれ、一瞬だけ会場の温度が下がり、
バキィィィィンッ!!!
氷の結晶が砕けて割れる演出!
そして、一瞬の静寂。
次の瞬間——
「響け!届け!叫べ!未来へ!!」
エリカがギターを高く掲げると、そこから竜巻が巻き起こる!!!
観客が歓声を上げる。
「おおおおおお!!!!」
「すっげええええ!!!!」
「やべえ……震えが止まらねぇ!!!」
兵士たちも、村人たちも、ブラッディ・リズムの3人も、NO FUTUREの音楽に完全に圧倒されていた。
(これが……バンドの力!!)
ドォォォン!!!!
1番のサビが終わった瞬間、ステージ上の火花が散り、静寂が訪れる。次の音が鳴るまでの、ほんの一瞬の間——その沈黙ですら、観客の心を揺さぶる。
ユナがギターを握りしめる。胸の奥が熱く滾る。このステージ、この音、この瞬間——彼女たちは、確かに今を生きている。
(こんな感覚、久しぶり……いや、初めてかもしれない……!)
「行くぜぇぇぇぇぇ!!!」
ミサキの叫びと同時に、間奏が始まる。
エリカのギターが切り裂くように鳴り響く。彼女がギターのネックを滑らせると、疾風のような旋律が空間を満たし、観客の髪を揺らした。
レンがベースを叩きつけるように弾く。
ブォォォォォンッ!!!
地を震わせる低音が、観客の心臓を鷲掴みにする。重く、深く、魂に響く音。
そして——
ミサキが叫び、両手を振り上げた。
「カモォォォォォンッ!!!!!」
次の瞬間、ドラムが炸裂する。
ババババババンッ!!!!
一音ごとに、雷が走る。雷撃がドラムのリズムと完全に同期し、観客の心拍まで支配していく。
村人たちは目を見開き、兵士たちが歓声を上げる。
「これが……本物の演奏なのか……!?」
「す、すげぇ……まるで魂を直接叩きつけられてるみてぇだ!!!」
ブラッディ・リズムのルージュ・スカーが唇を噛みしめた。
「……こいつら、マジで……ッ!」
シオン・アッシュが軽く息を飲みながら、観客の中に混じる子供たちの姿を見た。
その小さな目は、夢を見ているように輝いていた。
ベル・バレットが興奮した声を上げる。
「くっそ……ヤベェ……カッケェ!!!」
そして、間奏が終わる。
「Hey, listen!」
ユナがマイクを握りしめ、観客を指差した。
「不確かな明日も 震える心も」
レンのベースが、重く深く響く。
ブルゥゥゥン……!
まるで、揺らぐ未来の象徴のように、低音が観客の足元を震わせる。
「全部まとめて この音に乗せて」
ミサキがハイハットを繊細に刻む。
シャッ、シャッ、シャッ……
このリズムが、観客の体を揺らし、自然と体が動き始める。
(この曲、身体に入ってくる……!)
「誰が決めたルールなんてどうでもいい」
エリカがギターを低く構え、不敵な笑みを浮かべながら、刻む。
ジャガッ、ジャガッ、ジャガッ!
観客がリズムに乗り始める。
「ここにいるんだ、今を生きてんだ!」
ユナが叫ぶように歌い、観客に向かって手を伸ばす。
「ウオオオオオッ!!!」
村人たちが歓声を上げた。
それは、ただの観客の声ではなかった。
心からの声援。
純粋な感動。
音楽は、確かに彼らの魂を震わせていた。
「『夢の終わり』を誰かが笑う」
ミサキがタムを低く響かせる。
ドン……ドン……!
挑発的なリズムが観客の心を揺さぶる。
「でも、まだ終わったわけじゃない」
レンのベースが、軽く跳ねるようなリズムを生み出し、不屈の魂を表現する。
「焼き尽くせ、不安も迷いも」
エリカのギターが燃え上がるように鳴り響く。
シュワァァァッ!!
まるで、燃え盛る炎の中を駆け抜けるような旋律。
「今、飛び込むんだ!」
ユナがステージを駆け回る。
そして、まるで客席に飛び込むかのように、観客の方へ身を乗り出す!
「うおおおおおお!!!!!」
兵士たちも、村人たちも、拳を突き上げた。
「……こりゃ、すげぇな」
ルージュ・スカーが腕を組み、目を細める。
シオン・アッシュが唇を吊り上げた。
「……こいつら、こんな音を鳴らせるのか」
ベル・バレットが、拳を握りしめた。
「オイオイオイ……このままだと、マジで負けちまうぞ……!!」
その言葉を聞き、ルージュ・スカーがふっと笑った。
「……だが、それがライブバトルの醍醐味ってやつだろ?」
「燃え上がれ! Burning Future!」
ステージ全体が赤く燃え上がる!!
「炎の中で掴み取れ!」
ユナが手を伸ばし、未来を掴むかのように動く。
「くすぶるだけじゃ未来はこない!」
レンがベースをスラップで弾く。
ゴォンッ!!
低音が空間を支配し、観客の心臓を揺さぶる。
「願いじゃなくて、誓いに変えろ!」
エリカがギターをかき鳴らし、狂気にも似た熱量で観客を煽る。
「強く!激しく!光れ!未来へ!!」
ミサキがスティックを振り上げた。
「カモォォォォォォンッ!!!!!」
次の瞬間——
4体の召喚獣が現れた。
ゴォォォォォッ!!!
クリムゾンドラゴン、シュヴァリエ・デュヴァン、フリズヴェルグ、稲妻阿修羅——
それぞれの炎、風、氷、雷がステージを超えて観客の目の前まで迫る。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
観客たちは、熱狂の渦の中にいた。
音楽が、燃え上がっていた。
召喚獣の登場は、まるで神話の一幕のようだった。
ユナがギターをかき鳴らすと、クリムゾンドラゴンが咆哮し、舞台の周りを炎が囲む。
エリカがリフを奏でると、シュヴァリエ・デュヴァンが剣を掲げ、風の刃が観客の頬を優しく撫でる。
レンが低音を鳴らすと、フリズヴェルグが羽ばたき、氷の煌めきが空に瞬く。
ミサキがドラムを打ち鳴らすと、稲妻阿修羅が腕を広げ、雷が天を裂いた。
「うわああああああ!!!」
村人たちは驚きと歓喜の入り混じった声を上げ、兵士たちは戦場にいるような高揚感で叫び声をあげる。
ブラッディ・リズムの3人も、圧倒されていた。
「……マジかよ、あいつら……!」
シオン・アッシュが興奮したように呟く。
ベル・バレットが拳を握りしめ、歯を食いしばった。
「ヤベェ……熱すぎる……!」
ルージュ・スカーは、口元に笑みを浮かべながら呟いた。
「クソッ……このままだと負けちまうかもな……! けど、悪くない……!!!」
NO FUTUREは、最高に楽しかった。
ユナは——音に全身を預けながら、確信していた。
(……これが、私たちの音楽なんだ!!)
音楽を続ける意味を見失いかけていた。解散を決めたはずだった。
それなのに、今、この瞬間——
体が震えるほどの歓喜が、彼女の中を駆け巡っていた。
「うぉぉぉぉぉおおおお!!!!」
叫びながら、ユナはギターをかき鳴らす。
彼女の指が弦を弾くたび、炎が激しく燃え上がる。
「これだよ……!! これが、やりたかったんだよ……!!!」
レンは——確かな重みを持って、ベースの弦を鳴らしていた。
ズゥゥゥン……!!
低音が村の地面を揺らし、観客の鼓膜を震わせる。
(……バンドって、こんなにも楽しかったっけ?)
ただ、何となく続けていただけのはずだった。
夢なんて、ないと思っていた。
でも今、この音楽が、何よりも楽しくて仕方がない。
「……ククッ」
思わず笑いが漏れる。
(まだ……終わりたくないな)
エリカは——無表情のまま、だが、心は熱く燃え上がっていた。
彼女の指は、これまでで一番しなやかに、力強くギターのネックを滑る。
ジャガガッ!
「……最高だ」
こんなに気持ちのいい音を奏でたのは、いつぶりだろう?
いや、きっと——今が初めてだ。
「まだ……まだまだ弾きたい」
これまでエリカは、プロになるための演奏をしてきた。
だけど、今ここで弾いているのは——
ただ、楽しいから。
ミサキは——全身をリズムに委ねながら、心の中で叫んでいた。
(くっそぉぉぉ!! たまんねぇ!!!)
彼女は、ドラムセットと一体になったような感覚に陥っていた。
バスドラが鳴るたびに、雷が走る。
スネアを叩くたびに、稲妻が弾ける。
(ノッてくれ! もっとだ! もっともっともっと!!!!)
「カモォォォォォォンッ!!!!」
ミサキは叫びながら、クラッシュシンバルを叩きつけた。
バアァァァァァン!!!
稲妻が観客のすぐ目の前で炸裂する!
「ぎゃああああ!!! す、すげぇ!!」
「なんだこの雷!!! 本当に音楽の力なのかよ!?」
歓声の渦が、ステージを包み込んだ。
「燃え上がれ!!!」
ユナが叫び、ギターを高く掲げる。
「Burning Future!!!」
観客が一斉に拳を突き上げる。
村人たちが、兵士たちが、ブラッディ・リズムの3人が——
音楽に酔いしれていた。
(音楽って、こんなにも強くなれるんだ——)
ユナは、そう確信した。
「限界なんて 幻だろ!?」
最後の叫びと共に、ドラムが炸裂する!
ドォォォォォォォォォォン!!!
ステージが赤く燃え上がる。
そして——
「この手で掴め、未来を燃やせ!!!」
ユナが叫び、最後の一音を弾いた。
ギターとベースが絡み合い、ドラムが鼓動を刻み、音がすべてを飲み込む——
照明が、一瞬で落ちた。
沈黙——。
演奏が終わった。
静寂の中、観客たちの胸が高鳴る。
(……この感覚、久しぶりだ)
ユナは、ゆっくりと息を整えた。
すると——
「うおおおおおおおおおお!!!!」
村が割れるような歓声が響き渡った。
「最高だ!!!」
「すげぇ、すげぇよ……こんな音楽、聴いたことねぇ!!!」
「これが……バンドの力なのか……!?」
ルージュ・スカーが腕を組み、口元を吊り上げた。
「……ちょっと、やべぇな」
シオン・アッシュが唇を舐めた。
「こいつら……本当に新人なのか?」
ベル・バレットが手を震わせながら、拳を握る。
「……負けねぇぞ」
ステージの上、ユナたちは、満面の笑みを浮かべた。
「NO FUTURE! NO FUTURE!! NO FUTURE!!!」
村全体が熱狂の渦に包まれていた。
歓声がどこまでも響き渡る。
まるで、音そのものが生き物のようにステージを包み込み、宙に舞い上がっていくようだった。
村人たちは拳を突き上げ、兵士たちは兜を脱いで大きく拍手を送る。
年配の村人すらも、目に涙を浮かべながら笑っていた。
「すごい……こんな演奏、初めて見た……!!」
「まるで、神話の英雄たちのようじゃ!」
「音楽が魔法になる世界でも、こんなライブは他にないぞ!!」
それは、ただの喝采ではなかった。
村人たちの目には、確かな敬意と驚嘆の色が宿っていた。
彼らはただ楽しんでいるだけではない。
このバンドに、心を動かされたのだ。
「……ふっ」
ルージュ・スカーが、腕を組んだまま口の端を吊り上げた。
「……こりゃ、ちょっと本気でやらねぇと、ヤバいかもなぁ?」
シオン・アッシュは、腕を組んで目を細める。
「なぁんか……思ったよりも、ずっと楽しませてくれるじゃん?」
ベル・バレットは、観客の盛り上がりを見つめながら、舌をぺろりと出した。
「……素直に言うわ。ちょっとムカつくくらい、カッコいいぜ!!」
ルージュ・スカーが、低く笑いながらポケットからマイクを取り出した。
「認めるよ。お前ら、最高に熱いじゃねぇか。」
彼女がそう言うと、観客の歓声がさらに大きくなる。
「うおおおおお!!! ブラッディ・リズムが褒めてる!??」
「これはマジでスゲェことなんじゃ……?」
「NO FUTURE!! すげぇぞお前らぁぁぁ!!!」
村人たちの興奮が止まらない。
高揚感に浸るNO FUTURE
ユナは、ステージの上でゆっくりと息を整えた。
まだ、心臓が激しく鳴っている。
ギターを弾く指先が震えていた。
興奮が冷めやらず、呼吸が乱れる。
(——こんなこと、今まで一度もなかった)
解散寸前だったバンド。
観客がまばらなライブハウス。
誰も、私たちの音楽なんかに熱狂しなかった。
でも、今。
この世界では、彼女たちの音楽が、間違いなく「届いている」。
それを、目の前の光景が証明していた。
「ユナ」
隣から、エリカの声が聞こえた。
彼女もまた、静かにステージを見つめている。
「……どうした?」
エリカは、無表情のまま、ぽつりと呟いた。
「……楽しいな」
ユナは、一瞬、言葉を失った。
エリカが、こんなにもストレートに感情を表すのは珍しい。
それだけ、この瞬間が彼女にとっても「特別」だったのだ。
「うん……楽しいね」
ユナは、そっとギターを撫でながら、小さく微笑んだ。
レンは、ベースのネックを握りしめたまま、息を吐いた。
「まさか、こんなライブができるなんてな」
彼女の言葉には、驚きと誇らしさが滲んでいた。
「まぁな!!」
ミサキは、スティックを握ったまま、満面の笑みを浮かべる。
「最高だろ? こういうの!!」
「……ああ、本当に最高だよ」
ユナは、ギターのストラップを握りながら、静かに呟いた。
(——まだ、終わりたくない)
この感覚を知ってしまったら。
この音楽を続けていきたいと思ってしまったら。
もう、後戻りなんてできない。
だけど、それは——
最高の「迷い」だった。
ステージの上で、ユナは観客を見渡した。
村人たちが、目を輝かせながら自分たちを見上げている。
兵士たちが、拳を突き上げながら名を叫んでいる。
「……まだ、終わらない」
誰に言うでもなく、ユナはそっと呟いた。
音楽の魔法に魅せられたこの世界で、彼女たちは確かに「生きていた」。
この音が、彼女たちの未来を導いてくれる気がした。
「NO FUTURE! NO FUTURE!! NO FUTURE!!!」
観客の声は、まだ鳴り止まない。
それは、彼女たちにとって——
解散寸前の現実世界では、決して味わえなかったものだった。
歓声がまだ鳴り止まない。
村人たちが、兵士たちが、そして「NO FUTURE」自身が興奮と高揚感に包まれる中——
突如、鋭いギターの旋律が空を切り裂いた。
「!!?」
ユナが驚いて振り向くと、ステージの向こう、ブラッディ・リズムの立つ舞台から鮮烈な音色が響き渡っていた。
「……こいつぁ、いいライブだったぜ」
ルージュ・スカーが、ギターをかき鳴らしながらニヤリと笑う。
彼女の指先は、まるで火花を散らすかのように弦の上を駆け巡る。
エッジの効いた歪んだ音が、まるで闘争心そのもののように響き渡る。
「だが、ここからは——うちらのターンだぜ?」
その言葉と同時に、ブラッディ・リズムのステージが赤黒く輝いた。
まるで、血のような深紅の光が、彼女たちの足元から広がっていく。
「おいおいおい、なんだなんだ!?」
村人たちがざわめく。
しかし、その顔には驚きよりも期待が浮かんでいた。
「今度は、ブラッディ・リズムのライブか!?」
「ここまで盛り上げて、負けっぱなしじゃ終わらねぇってことか……!」
兵士たちもまた、剣を握りしめながら見守る。
ユナは、まだ心臓の高鳴りが収まらないまま、目の前の光景を見つめていた。
(すごい……私たちのライブを見た後なのに、こんなに堂々としてる)
むしろ——
「NO FUTURE」のライブを見たからこそ、さらにやる気を出している。
ルージュ・スカーの瞳には、炎のような情熱が灯っていた。
対抗心が燃え上がる「ブラッディ・リズム」
「くぅ~~~っ、やっぱ音楽はこうでなくっちゃなぁ!!」
ベル・バレットが、ドラムスティックを指の間で回しながら叫ぶ。
「こりゃあもう、ぶっ放すしかねぇだろ!!」
「フッ……ま、こんなにワクワクするの、久しぶりかもね」
シオン・アッシュが、細い指でベースの弦を軽く弾く。
その一音だけで、すでに空気が張り詰めるような緊張感が生まれた。
「おいおい、熱くなってんじゃねぇか」
ミサキが腕を組みながらニヤリと笑う。
「ていうか、お前らノリノリじゃねぇかよ!!」
「そりゃそうだろ」
ルージュ・スカーが、ギターを高く掲げる。
「……最高にアガるライブを見せてもらったんだ」
その視線は、ユナに向けられていた。
「アンタら、なかなかやるじゃねぇか」
ユナは、一瞬言葉に詰まった。
(……私たちのライブが、相手を本気にさせた?)
「でもなぁ」
ルージュ・スカーは、ギターを振り下ろしながら叫ぶ。
「——今度は、こっちの番だ!!!」
轟音が響いた。
ルージュのギターソロが、空間を一気に支配する。
爆発するような速弾き、唸るディストーション、ビリビリと震える重低音。
まるで、叫び声のような音だった。
「おぉぉ……!」
村人たちが息を呑む。
だが、それは驚きだけではなかった。
「なんだよこれ……カッコいいじゃねぇか……!」
「やべぇ、熱くなってきた!!」
「これが、ブラッディ・リズムのライブか!!」
村人たちは、次第にその音に引き込まれていく。
兵士たちすらも、剣を掲げてリズムに合わせて動き出していた。
(すごい……!)
ユナは、心の中で圧倒されていた。
(こんなの、ライブハウスでも聞いたことない……!)
彼女たちの音には、荒々しく、破壊的な熱があった。
「くっ……面白いじゃねぇか!」
ミサキがスティックを握りしめる。
「こっちも負けてらんねぇな……!」
エリカは、じっとルージュのギターを見つめながら、静かに笑った。
「……ふふ。いいね」
レンは、ベースのネックを撫でながら、低く呟いた。
「なかなか骨のあるヤツらじゃねぇか」
そして、血のように紅い旋律が鳴り響く——
「お前ら!!」
ルージュ・スカーが、再び叫ぶ。
「この村を、もっともっと熱くしてやる!!」
その声とともに、ブラッディ・リズムのステージが一気に燃え上がる。
だが、それは炎ではなかった。
赤黒いオーラが渦巻き、まるで血液が沸騰するかのように波打っている。
ルージュは、観客を見渡しながら——
ユナと目が合った。
「アンタたちのライブは、確かにすげぇよ」
そして、彼女はギターをかき鳴らしながら叫んだ。
「だけどな——本物の"アウトローの音"を聴かせてやる!!!」
「お前らも準備はいいな!?」
「おぉぉぉぉ!!! 行くぜぇぇぇぇ!!!」
ベル・バレットがスティックを掲げ、シオン・アッシュがベースの音を鳴らす。
その瞬間——
空気が爆発した。
「曲名!!!」
ルージュ・スカーが、ギターを大きく振り上げる。
「Bloody Riot!!!」
ステージの赤黒い光が、観客を飲み込むように広がっていく——!!