3話「異世界ロックバトル!」
ユナの指が、ギターの弦を弾いた。
——その瞬間、空間が震えた。
視界の端で、兵士たちが驚愕に目を見開くのが見えた。戦場にいたはずの彼らでさえ、こんな現象は見たことがないのだろう。
ギターのボディが、淡い光を帯びる。弦を弾くたびに、その光が熱を帯び、波紋のように空気を歪ませていく。ユナは自分の手を見つめた。確かに、ギターは今までと違う何かを持っていた。だが、それが何なのかは分からない。
(これは……魔法?)
彼女の脳裏をよぎったのは、あり得ないはずの言葉。しかし、目の前の現象はそれを否定しなかった。
「ユナ、それ……」
エリカの冷静な声が響く。彼女の視線は、ユナのギターのネックに注がれていた。
「今……音、見えた」
「見えた?」
エリカはギターを抱えながら、小さく頷く。その眼差しは鋭い。
「音の波紋が、光になってた」
「光……?」
「いや、違う……炎、だ」
レンがそう呟いた。彼女の目には、ユナのギターから放たれたエネルギーが、ゆらめく炎のように映っていたのだ。
(音が、炎になった……?)
ユナの頭の中で、疑問が渦巻く。だが、その答えを考える暇もなく、魔物が大きく唸り声を上げた。
その瞬間——。
ドンッ!!!
衝撃が大地を揺らした。
魔物が前脚を振り上げ、兵士たちを一掃しようと襲いかかる。
「やば……っ!!」
ユナは咄嗟にギターを構えた。どうするか分からないまま、再び弦をかき鳴らす。
その瞬間——。
ゴォォォッ!!!
ギターの音が炎を帯び、ユナの周囲に赤熱の波動が広がった。音と熱が混ざり合い、まるで爆発のように空間を押し広げていく。
魔物の振り下ろした前脚が、その炎に触れた。
「グォオオオオ!!」
魔物の黒い鱗が赤く染まり、灼けるような煙が立ち昇った。ギターの音と共に放たれた炎が、確かに魔物へとダメージを与えたのだ。
ユナ自身も驚いていた。
(なんだ、これ……!?)
彼女は自分の手を見る。ギターが熱を持っている。音と炎が繋がっている——そうとしか思えなかった。
「ユナ!!」
レンの声が響く。振り返ると、レンもまた驚愕の表情でユナを見つめていた。
「今の……お前の音楽の力なのか?」
「……分かんない。でも、確かに炎が……」
ユナが答えるより早く、ミサキが叫んだ。
「なら、こっちもやってみるしかねぇだろ!!」
彼女はそう言いながら、スティックを強く握りしめた。そして、目の前の空間に向かって思い切り振り下ろした。
その瞬間——。
バァンッ!!!
大地が震えた。
「なっ……!?」
ユナが驚きに目を見開く。
ミサキのスティックが、大気に響き渡るほどの衝撃を生み出したのだ。そして、彼女の足元から、まるで地面そのものが変形するかのように、黒い影が渦巻き始めた。
「ドラムセット……?」
それは、間違いなくドラムだった。
大地からせり上がるように出現したそれは、スタジオに置いてあったミサキのドラムセットに酷似していた。だが、ただの楽器ではない。黒い金属の質感が異様なまでに研ぎ澄まされ、打面は魔法陣のように光を放っていた。
ミサキ自身も、信じられないといった表情だった。
「……マジかよ」
彼女は震える手でスティックを握り直し、試しにハイハットを叩いた。
「チッ!」
軽快な音が響く。
「……何がどうなってんだか分かんねぇけど、これは確かに……」
彼女はドラムスローンに座る。そして、試しに一発、スネアを叩いた。
「ドォンッ!!!」
鼓膜を震わせるほどの重い衝撃が、戦場に轟いた。
その音に合わせ、周囲の空気が振動し、地面が軽く揺れる。
ミサキはニヤリと笑った。
「これは……使えるぜ」
——それは、異世界の音楽の力。
ギターが炎を生み出し、ドラムが大地を震わせる。
今、この異世界において、彼女たちの音楽が「戦う力」になっていた。
「よし、やるぞ!!」
ユナがギターを構え、再び弦を弾く。
戦場に、音が響く。
——NO FUTUREの、最初の戦いが幕を開けた。
ミサキのドラムセットが、黒い大地の上に完全に出現した。
その打面には、まるで稲妻が走るような模様が刻まれている。
「……マジでこれ、どうなってんの?」
ミサキはスティックを回しながら、半ば呆れたように呟いた。
目の前の異様な光景を受け入れるには、あまりにも現実離れしている。
——ギターが炎を生み、ドラムが大地を震わせる。
なら、このドラムには何の力が宿っているのか。
「試してみるしかねぇな……!」
ミサキは深く息を吸い込むと、全身の力を込めてスティックを振り下ろした。
——ドォンッ!!!
瞬間、黄色い雷がドラムセットから迸った。
「うわっ!?」
ユナが思わずギターを抱えて後ずさる。
レンもベースケースを抱きしめたまま、驚きに目を見開いた。
「……雷?」
エリカが冷静に状況を分析するように呟いた。
しかし、その声が掻き消されるほどに、ドラムから放たれた雷が戦場を駆け抜ける。
稲妻は、魔物の足元に向かって一直線に走った。
電撃が黒い鱗を焼き、ビリビリと痺れるような音が空気を震わせる。
「グォォオオオオ!!」
魔物が咆哮を上げる。
その巨体が、一瞬だが動きを止めた。
「……痺れてる?」
ミサキは、手元のスティックを見つめた。
まるで、雷を呼び出すスイッチのようだ。
「これ、最高じゃん……!」
彼女は笑みを浮かべると、両手にスティックを握り直した。
まるでステージでソロを叩くように、スネアとタムを連続して叩き込む。
——バンッ! バンッ! ババババッ!!!
雷が次々と迸る。
ミサキのビートに合わせて、黄色い稲妻が四方八方に放たれる。
魔物の全身に痺れが走り、動きが鈍くなっていく。
このドラムは、ただの楽器ではない。
「……スタン効果付きかよ。
やべぇ、バトルドラムって感じでめちゃくちゃ燃える!!」
ミサキは興奮気味にスティックを振り上げた。
ユナは、そんな彼女を見ながら呆然としつつも、冷静に状況を分析する。
「つまり……ミサキのドラムの音は、雷を生むってこと?」
「らしいな!!」
ミサキはニッと笑う。
「最高だろ? このスティック、まるで雷神の槌みたいじゃねぇか!」
「雷神の槌って……そんな大層なもんじゃないでしょ」
レンが呆れたように言うが、その表情には明らかに驚きがあった。
彼女は冷静に、そして慎重にこの現象を観察している。
「じゃあ、次は私の番ってこと?」
レンがベースケースをゆっくりと開く。
そこには、いつもと同じように見えるベースが収められていた。
「レン……お前のベースも、なんか変な力あるんじゃねぇの?」
ミサキが軽くスティックを振り回しながら尋ねる。
「……あるかもね」
レンは静かに弦に指を這わせた。
「試してみるしかないか」
彼女は、慎重に弦を爪弾く。
——ブォォォン……!!
重く、冷たい音が響いた。
ユナの炎、ミサキの雷とは違う、氷のような感触を持つ低音が、空気を震わせる。
レンは、自分の手元を見つめた。
「……これが、私の音?」
その問いに、答えるかのように冷気がベースのボディを覆い始める。
次の瞬間——レンのベースから氷の結晶が飛び出した。
「えぇっ!?」
ユナとミサキの声が重なった。
この異世界では、彼女たちの楽器はただの音を奏でるものではない。
それぞれが「音楽の魔法」として力を持っている。
ユナは炎を、ミサキは雷を。
そして——レンは、氷を。
「……なんだか、面白くなってきたな」
レンは目を細めながら、静かに呟いた。
「よし、戦いのリズムを作るぞ!!!」
ミサキがドラムの前に座り直し、スティックを振り上げる。
雷の魔力が、戦場に満ちる。
「ビートを刻めば、音が力になる……
だったら、最高のリズムでぶっ潰すしかねぇな!!」
彼女の言葉が、戦場に響いた。
エリカは、静かにギターケースのロックを外した。
金属のクリック音が響く。
彼女は、誰よりも慎重だった。
さっきからユナやミサキの楽器が異常な力を発揮している。
レンのベースも、すでに氷を纏い始めている。
(私のギターも、何かあるのか?)
エリカは静かに弦を弾いた。
——ヒュウウウウウ……
音が、風になった。
エリカは、ギターのボディを見つめる。
普通のギターと変わらないはずだった。
だが、音を鳴らした瞬間、周囲の空気がざわめき始めた。
(……これって)
ユナの炎、ミサキの雷、レンの氷。
それに続くのは——
エリカのギターが生み出す、「風」だった。
彼女は、ゆっくりとチョーキングをかけた。
ギターの弦が震え、音が伸びる。
すると、その音色に合わせて風が形を持ち始めた。
「……っ!」
エリカは、思わず息を呑んだ。
風が、刀のように鋭く伸びる。
まるで、ギターの音が「剣」を生み出しているかのようだった。
「おいおい……マジかよ」
ミサキが雷のスティックを回しながら呆然と呟いた。
ユナも、ギターを抱えたまま目を見開く。
「エリカ、今の……」
「……試してみる」
エリカは、ギターを構え直すと、強く弦を弾いた。
——ザンッ!!
風の剣が、一瞬で大地を切り裂く。
地面に鋭い傷が刻まれ、砂塵が舞い上がった。
その風圧に、ユナたちの髪がふわりと揺れる。
「……風の剣」
エリカは小さく呟いた。
「すげぇ……マジで剣みたいじゃん」
ミサキがニヤリと笑う。
「エリカ、それちゃんと狙って撃てるのか?」
レンが低い声で問いかける。
エリカは、再び弦を弾いた。
今度は、正確に目の前の魔物の脚を狙う。
——ザシュッ!!
風の剣が、魔物の黒い鱗に斬り込んだ。
「グォオオオオオ!!!」
魔物が大きくのけぞる。
風の剣は確実にダメージを与えていた。
エリカは、ゆっくりと呼吸を整えながら、ギターのネックを握り直した。
(なるほど……この音が、私の力か)
音楽の力が、魔法になっている。
それなら——
「試す価値は、ある」
エリカは、ギターのボリュームを上げると、コードをかき鳴らした。
その瞬間、彼女の周囲に風が巻き起こる。
まるで、ギターを中心に暴風が生まれているかのようだった。
「……“ウィンド・ブレード”」
エリカは、そう名付けた。
「カッコつけてんじゃねぇぞ!!」
ミサキが笑いながらスティックを構えた。
「でも、これで準備は整ったな」
ユナが、ギターを強く握る。
炎を纏ったギター、雷を放つドラム、氷の刃を生むベース、風の剣を操るギター。
「よし、やろう!」
NO FUTUREは、ついに異世界での「最初の戦い」を始めた。
ユナはギターを握りしめ、ゆっくりと呼吸を整えた。目の前には、鋭い牙を持つ魔物が唸りを上げている。兵士たちは剣を構えながらも、一歩ずつ後退していた。恐怖に押しつぶされそうになりながら、ユナは決意を固める。
(私たちは、戦わなきゃいけないんだ)
彼女はギターを肩にかけ、ピックを持つ指先に力を込める。音楽が魔法になる——それを実感したのは、ついさっきだった。それなら、このギターで世界を変えられるかもしれない。
「……やるよ、みんな!」
ユナの声が響いた瞬間、ミサキがスティックを掲げた。
「よっしゃ! だったら、最高にカッコいいライブしてやろうぜ!!」
ミサキは勢いよく地面を蹴り、宙に舞いながらスティックを振り下ろした。その瞬間——
バンッ!!
空間が揺れ、彼女の足元に巨大なドラムセットが出現する。黄金の紋様が刻まれた太鼓、雷を思わせるシンバル、そして足元に刻まれた無数の魔法陣。それは、この世界における"ステージ召喚魔法"の発動だった。
「っしゃぁぁぁ!! NO FUTURE、ライブ開始だぁぁ!!」
ミサキがスティックを振り下ろす。ドンッ!!
雷のような轟音が響いた。黄色い稲妻がドラムから迸り、周囲の地面を焦がす。
その音に呼応するように、ユナはギターをかき鳴らした。
ジャァァァン!!
赤い炎が弦から迸り、ユナの体を包み込む。灼熱の熱が、彼女の中で渦を巻いた。
(感じる……私の音が、炎になる)
そして——その音に呼応するように、彼女たちの後ろで何かが生まれた。
「グオオオオオオ!!!」
爆発するような咆哮とともに、巨大な影が姿を現す。
炎の竜——クリムゾンドラゴン。
ユナの炎の魔法と共鳴するように、灼熱の鱗を持つ竜が大地に降り立った。その爪が地面を抉り、瞳がギラリと光る。
「……私の召喚獣?」
ユナは息を呑んだ。だが、その感動に浸る暇もなかった。
「おいおい、カッコよすぎじゃねーか!! そんじゃあ、次はアタシの番!!」
ミサキは雷をまといながら、スティックを高く掲げる。そして——
ズドン!!
雷鳴が轟き、空が裂ける。電撃が地面を駆け抜け、その中心に雷神・稲妻阿修羅が降臨した。
六本の腕を持ち、雷をまとった巨躯の神。彼は天を睨み、轟く雷鳴を生み出した。
「うっわ、マジでヤベーの出てきた……!」
レンが息を呑んだ。彼女はベースを強く握る。
「……だったら、私もやるしかないな」
彼女は静かにベースの弦を鳴らす。
ボンッ……
青白い冷気が足元に広がった。レンの魔力がベースを通じて放たれる。
「キィィィ……!」
氷の結晶が舞う中、天から青白い翼が舞い降りた。
召喚獣**「フリズヴェルグ」**——氷を纏った巨大な鳥。彼は優雅に羽ばたき、空気を凍らせながらゆっくりと姿を現した。
「……本当に召喚できたんだ」
レンは呟く。その手には確かな震えがあった。
エリカは、その様子を見て静かにギターを構えた。
「……だったら、私もやる」
彼女は静かに弦を弾いた。
シュン……!
空気が一瞬だけ揺らぐ。風が巻き上がり、地面に魔法陣が浮かび上がる。
「……風よ、剣になれ」
シュバァァァァ!!
突風が巻き起こり、そこから一本の剣が生まれた。
——いや、それは剣ではない。
それは、剣を携えた騎士だった。
召喚獣「シュヴァリエ・デュヴァン」
彼は風を纏いながら、エリカの前に跪いた。
エリカはギターのネックを握りしめる。
「やれる……」
その言葉に、ユナは大きく頷いた。
「じゃあ、いくよ……!!」
ユナは、ギターの弦を掻き鳴らした。
炎の音が響く。雷が炸裂し、氷が舞い、風が唸る。
NO FUTURE、異世界での初めてのライブバトルが幕を開けた。
兵士たちは、ただただ呆然とその光景を見つめていた。
魔法の力を持つ楽士でさえ、通常は1チームで1体の召喚獣を召喚するのが限界。ましてや、たった4人の少女が、それぞれ1体ずつ召喚獣を呼び出したという事実は、彼らの常識を完全に覆していた。
「な、なんだ……これは……?」
鎧をまとった兵士の一人が、震える声で呟いた。彼の隣にいた仲間も、剣を構えたまま足がすくんでいた。
「普通、召喚獣は1チームに1体までじゃないのか……!? こいつら、一体何者なんだ……!?」
それも当然だ。この世界の召喚魔法は、強大な魔力を要する。そのため、どんなに強い楽士でも、1チームで1体の召喚獣を呼び出すのが限界だった。それなのに——
目の前で起こった現象は、規格外の一言だった。
炎の竜「クリムゾンドラゴン」が大地を踏み鳴らし、雷神「稲妻阿修羅」が稲光をまとう。氷の鳥「フリズヴェルグ」が空を舞い、風の騎士「シュヴァリエ・デュヴァン」が剣を構える。
4人の召喚獣が一斉に姿を現し、まるで戦場そのものが変わったかのようだった。
「これは……女神の奇跡なのか……?」
兵士たちは、信じられないものを見るような目で、NO FUTUREを見つめる。
しかし、ユナたちにとっては、そんなことを考える余裕はなかった。目の前には、牙を剥く魔物たち。
「なぁ、考えるのは後にして、まずは目の前のこいつらを何とかしないか?」
ミサキがスティックを回しながら、ニヤリと笑った。
「確かに……まずは、この戦場を片付けるよ!」
ユナがギターを高く掲げ、コードを掻き鳴らす。
ジャァァァァン!!!
炎が弦の振動とともに迸る。それに合わせ、クリムゾンドラゴンが口を開いた。
「スカーレット・ストレート!!」
咆哮とともに、灼熱の熱線が放たれる。赤い炎の奔流が、一直線に魔物の群れを焼き尽くしていく。
「ギャアアアアアア!!」
黒い皮膚が燃え上がり、魔物たちは次々に倒れていった。
「くっそ、これはすげぇな!!」
ミサキが笑いながら、スネアを叩く。雷のエネルギーが弾け飛び、彼女の背後にいる稲妻阿修羅の身体がさらに発光した。
「んじゃあ、こっちもいくぜ……!!」
彼女がバスドラムを踏み込んだ瞬間——
「イナズマの右腕!!」
雷の轟音とともに、天から巨大な雷の手が落ちてきた。まるで空そのものが拳となったように、魔物たちを押し潰す。
ズドォォォォン!!!
眩い雷光が一瞬戦場を支配し、視界が真っ白になる。
「やべぇ……!」
兵士たちは、目の前の光景に呆気に取られた。雷鳴が止んだとき、そこには——
蒸し焦げた魔物の死骸の山があった。
「ははっ、マジかよ……!?」
レンは、驚きと共に、静かにベースを弾き始める。彼女の低音が戦場に響いた瞬間、空気が急激に冷え込んだ。
「……そろそろ、あんたらの動きを止める時間だ」
ベースのリズムが安定するたびに、フリズヴェルグが羽ばたいた。
「クリスタルローズ!!」
氷の結晶が舞い散り、魔物たちの足元が凍りつく。
ガチィィィン!!
鋭い氷のツタが地面から生え、魔物たちの体を縛りつけた。
「これで動けないね」
レンは静かに呟いた。
「……なら、トドメだ」
エリカは風を纏いながら、ギターをかき鳴らした。
彼女の音色が響くたびに、風の剣が空に生まれていく。そして——
「無限斬!!」
シュヴァリエ・デュヴァンが剣を掲げ、突風と共に斬撃を繰り出す。
シュバババババ!!!
魔物たちは、無数の風の剣によって、身体を切り裂かれた。
「終わった……?」
ユナがギターを握りしめたまま、荒い息を吐く。
戦場は、一瞬の静寂に包まれた。
魔物は、すべて倒れていた。
兵士たちは、信じられないという顔で立ち尽くしている。
「おいおい……今の、見たか……?」
「たった4人で……あれだけの魔物を……」
「す、すげぇ……!」
最初は戸惑っていた兵士たちが、一人また一人と歓声を上げ始める。
「勝ったぞぉぉぉぉぉぉ!!!!」
勝利の雄叫びが、戦場に響き渡った。