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最強AIの異世界転移  作者: 蓬莱
第2章 ぶっ飛ばせ!魔樹の軍勢
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第40話 襲撃

アクスとの接触に成功した我々は、”虹の錬金術師イリゼ・アルケミスター” の情報を得る事が出来た。分かった事は、彼がカルメラ様(マスター)(とワタシ)と同等レベルの強者の可能性がある事。相棒としてスララという名のスライムを連れている事。そして、どうやら訳ありらしい事。この3つだ。


《収穫はあったが、彼がどこにいるかは、相変わらず不明なままだな》

《そうですね。ですが、やりようはあります》

《と言うと?》

《あなたが例の森で、覇気を解放するのです。それも、ほんの少しだけ》


着目すべきは、そもそも彼が何故森に現れたのか。「自身の渡したアイテムの性能を確かめる為」というのも考えたが、それだとアクス達にわざわざアイテムの感想を尋ねた理由が無くなる。となると彼が森にいた理由は、単純に古代魔樹(エルダートレント)の気配を察知して、警戒していたからではないだろうか。


仮にそうだとすれば、彼は地中に潜っていた魔物の気配を察知した事になる。ならば、桃華が覇気をほんの少し解放しただけでも、その存在に気付くだろう。そして敏感に桃華の力に気付き、警戒して再び森へ来るだろう。あくまで推論に過ぎないが、試してみる価値はある。

……ただしこの場合、”虹の錬金術師イリゼ・アルケミスター” と戦闘になる可能性がある。その場合はワタシと桃華が相手をしなければならない。万が一の時はカルメラ様(マスター)を召喚する事になっているが、それにも一定の時間が掛かる。つまり、一番危険を伴うのは桃華なのだ。


《―――以上が作戦の流れです。お分かりの通りこの作戦、一番危険が及ぶのは―――》

《あぁ、私だな》

《……引き受けて、もらえますか?》

《無論だ》


2つ返事で桃華は答えてくれた。これでもし、ワタシが心無きAIのままだったら、ただ無機質に森へ飛んでいただろう。でも今のワタシは、心の奥に何か苦しい物を感じて、すぐに動けなかった。


《私を心配してくれているのか?》

《っ!!》

《ふふっ、ミカエル様は優しいな。安心しろ。私も引き際は弁えている。それにミカエル様も、サポートしてくれるんだろう?》

《それは勿論!!》

《なら、心配はない。姉さんとも約束したからな、最悪の事態になる事だけは避けてみせるさ》

《……絶対ですよ? フリじゃないですからね!?》

《分かっている》


ワタシは、そうしつこく念を押した。そうせずには、いられなかった。



*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*



次の日、ワタシは桃華と共に森へ転移した(飛んだ)。森は古代魔樹(エルダートレント)出現の影響か、森は静かだった。


《それでは桃華、お願いします》

《分かった》


そう言うと桃華は、ほんの少しだけ覇気を放つ。本当に、ほんの少しだけ。気配に敏感な者でなければ気付かない程に。


《これで、釣れるだろうか?》

《相手が我々の思い描く通りの実力者ならば、必ず》


やがて覇気が街まで到達したが、気付く者はほんの一握り。だが、カルメラ様(マスター)はおろか、桃華に届きそうな者すらいない。ワタシの予測は間違っていたのだろうか?

―――そう思った時だった。


《っ!!!》

《どうした?》

《……どうやら、当たりだったようです》


途徹も無い力を持つ何かが、こちらに意識を向けたのを感じた。この力、まるでカルメラ様(マスター)だ。そう感じてしまう程、強い。さらに傍にもう1人、かなり強い何かがいる。遠すぎてそれが何なのかは分からないが、少なくとも桃華と同等レベルの力があるのは間違いない。恐らく、”スララ” だろう。


《後はここで待ちましょう。彼は必ずここへ来ます》

《あぁ。だがその前に、そこに隠れてる(・・・・)連中をどうにかしないとな》

《ですね》


覇気を放出した時、森の中に妙な集団が潜んでいる事に気付いた。数は凡そ10人で、気配からして全員が魔族(及び冒険者)のSランクに相当する実力を持っている。特に気配を消す能力はかなりの物で、ワタシでも一度見失ったらまた見つけられるか分からない。


《………む、動き出したな》

《こちらが存在を認知した事に、気付かれたようですね》


鬱蒼(うっそう)とした森の中を、10人の集団は障害物を避けながら一切減速せず駆け抜け、こちらに近付いて来る。そして10秒足らずで、我々は取り囲まれてしまった。


《軽装。目立たない装束。そして目以外を覆う覆面。コイツら、”(しのび)” に似ているな》

《”忍” と言うと、隠密部隊の事でしょうか?》

《良く知っているな》

《ちょっとした縁がありまして。それより、確かに彼らはどこかの隠密部隊のようです。彼らのスキル、隠密や暗殺に関わる者ばかりです》





(ハイ)スキル『気配隠蔽』

………自身の気配を隠蔽する。

   上位の看破スキルでなければ見破れない。


(ハイ)スキル『上位毒』

………様々な毒を生成する。

   相手を死に至らしめる毒も作れる。




謎の集団10人の内、9人がこの2つのスキルを持っていた。残りの1人は恐らくリーダーで、こちらは特上(エクストラ)スキル『存在隠蔽』と、現在は我々の仲間となっている ”熊童子” こと牙猛(がもう)と同じ『猛毒』のスキルを持っている。明らかに暗殺に特化した集団だ。何故そんな集団がこんな所に? そもそも、我々に何の用だ?


「あの、一体何の御用でしょうか? 私は―――」

「小娘」


リーダーと思しき男性が、桃華の話を遮って一方的に話し始めた。


「貴様、()についてどれだけ知っている?」

「奴?」

「”虹の錬金術師イリゼ・アルケミスター” の事だ」

「っ!!」


どうやら彼らの目的は、我々と同様 ”虹の錬金術師イリゼ・アルケミスター” のようだ。だが、勧誘したいという空気ではない。寧ろ ”虹の錬金術師イリゼ・アルケミスター” に対する敵意すら感じる。


《どうせ我々も、大した事は知りません。が、全ては語らずにおきましょう。彼が男であることと、錬金術師である事以外知らないと伝えてください。穏便に事を済ませられるなら、それに越した事はありません》

《分かった。だが気を付けろ。いざとなったらコイツら、殺し程度平気でやるぞ》

《えぇ、警戒を続けます》


「……生憎、私もそんなに詳しくは知りません。知っている事と言えば、彼が男である事と錬金術師だって事くらいです」

「そうか。ならば―――もう用済みだな」

「っ!!!」


集団のリーダーが、いきなりナイフをこちらに向けて投げて来た。ワタシは結界を展開しようとするが、何故か桃華に止められる。そして桃華は飛んできたナイフを、指で挟んで止めた。


《嫌な予感が的中したな。見ろ、このナイフ。スキルを無効化する力が込められているぞ》

《っ!!?》


スキルの無効化だと? そんな力が存在するとは………。


「勘が良いな。流石は上位魔族の鬼と言った所か」

「私の正体に気付いていたのか?」

「ふっ、当然よ。昨日貴様が街に入った時から気付いておったわ」

「その割には視線を感じなかった。つまりその時は、こうなる予定では無かったんだろう? 何故私を襲う?」

「貴様が奴の事を調べているのを見掛けてな。接触した後殺す事に決まったのだ。我々の姿を見た者は、1人残らず始末するよう言われているのでな」

「………」


言われている(・・・・・・)、か。どうやらコイツらは、どこかの組織に属しているようだ。ここでコイツらを倒したとしても何も解決はしない。またどこかで、命を狙われる事が目に見えている。裏にある組織について、情報を絞っておいた方が良さそうだ。


《桃華、申し訳ないですが―――》

《分かっている。一旦殺さず捕縛しよう》

《よろしくお願いします》


桃華には無理を掛けてしまって申し訳なく思う。帰りには絶対、あの店のドデカフルーツパフェを好きなだけ奢ってあげよう。


「―――()れ」


リーダーが一言呟くと、他のメンバー達が一斉に動きこちらに迫る。これに対し桃華はスキルも魔法も使わず、格闘技のみで応戦する。ナイフを手に突き出された攻撃をいなし、背後に迫る敵を回し蹴りで吹き飛ばし、一瞬でも隙を見つけたら即飛び込んで掌底を討つ。芸術的な技の応酬で確実に数を減らしていくが、スキルも魔法も使わない分効率が悪い。


《彼らの武器も、スキルを無効化する力があるのですか?》

《あぁ、コイツらの武器、防具、黒装束に至るまで、全てスキル無効化―――『能力無効化(スキルキャンセラー)』の力を持っているようだ。加えて防具と黒装束には、魔法を無効化する『魔法無効化(マジックキャンセラー)』まで宿っている。どんな魔法もスキルも、コイツらは無効化できる。恐らく格闘技以外、コイツらには効かない》

《いや、ちょっと待ってください。それはおかしいです》

《何故?》

《本当に全てのスキルを無効化するなら、何故あなたは彼らの武器防具の情報を入手できたのですか?》

《っ! 言われてみれば!》


もし本当に、彼らの武器防具の全てがスキル・魔法を完全に無効化できる物なら、ワタシが彼らを鑑定することも出来なかっただろう。それが出来たという事は、何か制限があるに違いない。早速『解析鑑定(アナライズ)』で見てみた。





・『能力無効化(スキルキャンセラー)

………スキルの効果を打ち消す。

   (ただし、攻撃・防御系スキルのみ)


・『魔法無効化(マジックキャンセラー)

………魔法の効果を打ち消す。

   (ただし、攻撃・防御系魔法のみ)




やはり、万能な力では無かったようだ。解析系のスキル・魔法への対策はまったく出来ていない。一応レジストする力はあったようだが、少なくとも『代行者(サブマスター)』のワタシから見ればお粗末な物だ。そして『解析鑑定(アナライズ)』が出来たという事は、その情報(データ)を元に ”『無効化』を無効化する” スキルの創造も容易い。


《『創造(クリエイト)』発動。無効化貫通用スキル、『無効化抹消(アンチ・キャンセラー)』の創造を開始―――成功です!》


無効化抹消(アンチ・キャンセラー)』。スキルや魔法にこのスキルを付与すれば、彼らの無効化の力も意味を成さなくなる。


《桃華。もうスキルや魔法を使って大丈夫ですよ》

《そうか! ありがたい!》


早速、桃華は魔法を発動する。


「”万雷”!!」

『アババババババババババババ!!!!』


桃華を中心として四方八方に雷が迸り、謎の集団の意識を刈り取っていく。雷が収まった時、まだ意識を保っていたのはリーダーのみだった。


「ぐっ……! バカな! 何故我々に魔法が通用するんだ!?」

「そんな事より質問に答えろ。お前達、いったい誰に頼まれてここへ来た? 何故 ”虹の錬金術師イリゼ・アルケミスター” を探している?」

「はっ! 素直に言うとでも?」

「そうか。まぁ別に良いんだが」

「―――?」


『後は任せた』と、桃華が ”念話(コール)” で行って来た。なのでワタシは、最近開発した新スキルを使う事にした。それスキルとは、『記憶探索メモリーサーチ』。相手の魂から記憶を読み取るスキルだ。『解析鑑定(ラーニング)』がスキル特化なのに対し、こちらは記憶の探索に特化している。まだ試運転も出来ていなかったので、正直ウキウキしながらワタシはスキルを発動する。

―――だがスキルを使う前に、突然現れた1人の男によって、コイツらの素性が判明した。


「ソイツらは、ヴィオンド帝国の機密特殊部隊 ”影狼” だ」

『っ!!?』


気付けば、その男はそこにいた。誰一人として、その気配に全く気付かなかった。黒いローブを身に纏い、頭にはフードを被り、左肩には虹色のスライム(・・・・・・・)を乗せた男。

間違いない。彼が、”虹の錬金術師イリゼ・アルケミスター” だ!!

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