第38話 錬金術師の手掛かり
さて、さっそく錬金術師探しと行きたい所だが、あてもなく探しても絶対に見つからない。
《まずは情報収集と行きましょう。桃華、情報の集まる場所に心当たりはありますか?》
《それなら冒険者ギルドが1番だろう。冒険者は世界各地で活動する何でも屋で、冒険者ギルドはその冒険者を統括する組織だ。世界中に支部を持ってるから、情報が大量に集まる。だが冒険者の中には、一定数の猛者がいる。下手をすると、私が魔族であることに気付く奴もいるかもしれない》
《それは困りますね。では、冒険者ギルドは最終手段として、まずは街の人達から聞き込みを行うことにしましょう》
《あ~……その前に、腹ごしらえしないか? 持ってきた食料も尽きてしまって、お腹が減っているんだ》
《っ! そういえばそうですね。まずは食事にしましょうか》
という訳で、我々は近くにあったレストランに入ったのだが……それが間違いだった。レストランに入り席に案内されるや、桃華はメニューを食い入るように見始めて、次から次へと料理を注文して食べ始めたのだ。
《あの、桃華?》
桃華に話し掛けても返事が無い。出された料理を片っ端から、一心不乱に食べ続けている。
《………桃華!》
《っ! な、何だ?》
《何だじゃ無いですよ。もうそろそろ良いでしょう? 早く錬金術師の情報を集めに行きましょう》
《ち、ちょっと待ってくれ! 最後にこのどデカフルーツパフェだけは―――》
《もう充分食べたでしょう? 山菜の超山盛り併せから始まり、火炎猪の丸焼き3頭。さらに蛇尾魔鶏の丸焼き6羽。これだけ食べてデザートまで欲しいんですか?》
しかもメニューのイラストからして、おそらく人間の大人3人分の量がある。既に相当量食べてるはずなのに、まだそんなに食べるつもりなのだろうか?
《当然だろう! 食後のデザートは必須だ! とにかく、このどデカフルーツパフェは絶対食べるからな! 話はその後だ!》
《………》
ダメだ。これは何を言っても聞きそうにない。
「すいませ~ん! このどデカフルーツパフェもお願いしま~す!!」
「あいよ! ちょっと待ってな!」
天真爛漫な少女の笑みを浮かべて、桃華はパフェを注文する。店の奥から返事が聞こえて来て、数刻の後に女将さんがフルーツを山盛りに乗せた、一抱え程はある巨大なパフェを持ってきた。
「はいお待ち! 当店自慢のどデカフルーツパフェだよ。たんとお上がり!」
「わ~~い!! いっただっきま~~す!!」
桃華はどデカフルーツパフェを、それはそれは幸せそうに食べ始める。最初はさっさと食べ終わって欲しいと思いつつ見ていたが、あまりに美味しそうに食べるので、ふと「パフェってそんなに美味しい物なのか?」と気になり桃華と味覚を共有してみる。
(っ!!!!!!!!!!!)
その美味しさといったら、もう衝撃的だった。あまりの美味しさに桃華との味覚共有を切ることも忘れ、2人揃ってパフェを堪能することとなってしまった。
「……はぁ~~~!! うまかった!!」
《えぇ、本当に! 確かにこれは欠かせませんね!》
《そうだろ?》
帰りにカルメラ様へのお土産に、このパフェを買っていくとしよう。きっと喜んでくれるはず!
「いやぁ、本当に良く食うねお嬢ちゃん。見ていて爽快な食いっぷりだったよ!」
女将さんがカラカラと笑いながらそう話しかけてきた。改めて見ると、店にいる全員がこちらを見ている。どうやら桃華の食べっぷりが凄過ぎて、すっかり注目の的になっていたらしい。
「おいおい、マジで全部平らげちまったぞあの子……」
「嘘でしょ? あんな華奢な女の子が?」
「凄ぇな! 大したもんだぜ!」
称賛の声を上げる者や、若干引いている者もいる。中には唖然としている者もいた。
「ところでお嬢ちゃん、この街じゃ見かけないね。外から来たのかい?」
「あぁ。実は今、我々の村は魔土に侵されていてな。魔土をどうにかしてもらう為に、錬金術師を探しているんだ」
「へぇ、それで遥々ここまで来たのかい」
「女将さんは、優秀な錬金術師について何か知らないか?」
「それなら ”虹の錬金術師” はどうだい?」
「”虹の錬金術師” ?」
「今じゃこの街で知らぬ者無しの、凄腕の錬金術師さ」
聞けば、その男は年齢、出自などの詳細が不明で、突然現れては常識がひっくり返るようなアイテムを授けて去っていくという。何故そんなことをするのかは不明だが腕は確かで、冒険者や衛兵の中にはそのアイテムに命を救われた者も数多くいるようだ。
《”虹の錬金術師” ………ソイツなら、錬金術師として申し分ないのでは?》
《ですね。この食事の時間も、無駄ではありませんでしたね》
「女将さん。その男が現れる場所に心当たりなどは無いか?」
「さぁ? 何しろ神出鬼没だからねぇ。路地裏に現れることもあれば、いきなり街中に現れることもあるし。おまけにフードを被ってるから誰も顔を知らなくてね、こっちから探すのはかなり大変だと思うよ」
「となると、現れる瞬間を待つしかないか」
「いいや、冒険者ギルドなら情報を持ってるかもしれないよ。あそこには情報がたんまり集まるからね」
「そうか……なら、そこにいってみるよ」
少し迷った後、桃華はそう言った。
《良いんですか? 気付かれるかもしれませんよ?》
《だとしても、行くしかないさ。カルメラ様の為にも》
《っ! そうですね。……ありがとう、桃華》
桃華がカルメラ様のことを想ってくれていることが、嬉しかった。……そうか、これが ”感謝” の気持ちか。
「色々と助かったよ女将さん」
「良いってことさ」
「そういうわけで、お勘定頼む。これで足りるか?」
「あいよ! 毎度あり!」
お会計を済ませて、レストランを出ようとした、その時だった。
「―――? なんだか外が騒がしいな」
「何かあったのかねぇ?」
外から何やら騒がしい声が聞こえてきた。何故騒いでいるのか不思議がっていると、いきなりレストランの扉が大きく開け放たれて、1人の青年が入ってきた。
「皆大変だ! 近郊の森に古代魔樹が現れた!」
「何だって!?」
店の中が大いにざわめき始める。
《桃華、古代魔樹とは?》
《自治領内に樹系魔族が出現しただろ? あれの上位種さ。ランクは確かS+だったな》
《中々の魔物のようですが、我々の敵ではありませんね》
《だな。とは言え、一応用心はしておこう》
「あんた、それ本当なのかい!?」
「あぁ、間違いそうだ。だが既に討伐されたそうだ」
『………え?』
なんだ。もう討伐されていたのか。
「なんだいまったく。紛らわしいね!」
「す、すまない。だが話はそれだけじゃねぇんだ。どうやらその倒した奴ってのが、例の ”虹の錬金術師” だったんだとよ!」
「っ!!」
”虹の錬金術師” だって? まさか、今現れたのか!?
「マジかよ!?」
「本当なのかい?」
「あぁ、どうやら本当らしい。アクスさんとフェイさんが見てたんだ。聞いた話じゃ………」
青年の話を聞き終わる前に、我々はレストランを飛び出していた。
「お、お嬢ちゃん!? どこ行くんだい!?」
「ちょっと用事ができたんだ! また来るよ!」
レストランを後にした我々は裏路地に入り、最近開発した遠視のスキル『千里眼』を発動する。すると、街の北の方角に、激しい戦闘跡が残る森があるのが見えた。
《行こう、ミカエル様!》
《えぇ、『転移』!》
我々は森へと飛ぶと、『気配察知』と『魔素感知』のスキルで辺りを探索する。既に人の気配は無かった。いきなり ”虹の錬金術師” に会えるかと思ったが、どうやら一足遅かったようだ。
《くっ、そう上手くはいきませんか………》
《まぁな。だが、どうやら古代魔樹は本当に表れたらしい。奴等の種族スキル『怨嗟の咆哮』の、怨嗟の欠片が残っている》
《で、その古代魔樹を倒したのが、”虹の錬金術師” ですか。どうやら、錬金術師として優秀なだけでなく、相当な実力者のようですね》
《だが、妙な点があるな。古代魔樹は15mはある巨大な魔物だ。それが討伐されたというのに、その死骸がどこにもない》
《それはおかしいですね。15mの大木が一瞬で消えるようなものでしょう? 我々のポーチと同じような、大容量の袋にでも収納でもしたんでしょうか》
《分からんが、そんなことを可能にする能力は持っているようだな。加えてこの戦闘跡、ついさっきできたばかりの物だ。こんな短時間で我々の探査可能範囲から抜け出すなど、普通はできない》
《……まさか、彼も空間転移を?》
《その可能性が高いだろうな。それもかなりの距離を移動可能と見た》
ワタシとしては、錬金術師というのは素材のエキスパートであって、戦闘力は皆無だと思っていたのだが、どうやらその認識を改める必要がありそうだ。
《………ここで議論を重ねても、話が進みそうにありませんね》
《あぁ。見切り発車で森へ来てしまったが、やはり情報収集が必須のようだ。そうだ。確かあの青年、目撃者がいると言っていたな。まず彼らに話を聞いてみよう》
《そうですね。では、1度街へ戻りましょう》
そして我々は、再び『転移』を発動して街へ戻った。
本作をご覧いただき、誠にありがとうございます!
中々第2章の冒頭に戻れない……
蓬莱も少々焦る状況ではありますが、できることは書くことのみ!
これからもめげずに書いていきます!




