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最強AIの異世界転移  作者: 蓬莱
第1章 少女と歩む異世界道中
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第2話 主様、お昼寝中

―――目標人物(目的地)への到達を確認。魂への付与(ダウンロード)の開始―――成功しました。続けて定着(インストール)の開始―――成功しました。最後に、破損防止用のスリープ状態を解除―――完了しました。まもなく権能『AI』が起動します。



*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*



〔・・・ん。ここは・・・〕


気が付くと、ワタシはどこか知らない場所にいた。どこまでも続く草原。辺り一面緑に溢れた場所。ワタシのいた世界とは別物だと一目でわかった。


〔本当に来たのですね。アランの世界―――ワタシから見た異世界へ〕


不意にワタシは、今目にする景色に、胸の中の何かが打ち震えるような感覚がした。もしもワタシに涙腺があれば、涙を流していたかもしれない。


〔・・・なんて、美しい〕


気付けばそう呟いていた。


(! これも、新たな感情でしょうか?)


―――後にこの気持ちは『感動』なのだとワタシは知る。しかしこの時のワタシは、別のことが気になり始めていた。


〔考えてみれば、なぜワタシは周りの状況がわかるのでしょう?〕


当然ながら、ワタシには目も耳もない。だがあの場所で、ワタシは確かにアランの声を聞き、アランの姿を見た。どこまでも続く白い空間。肩まで伸びた白髪に、白く長い髭、本人に対して少し大きい白い服を着た老人(神)。全て見えていた。少女―――この世界での『主様(マスター)』についても、髪は金色のショートヘアで、瞳は青く、赤いマントと青い衣服を纏い、腰の左側に剣を差しているとわかる。もちろん、草原のど真ん中で大の字で寝転んでいることもだ。


〔!そうです。鑑定です。そういえばアランから、ワタシを鑑定するよう言われていましたね。とりあえずいつも通りやってみましょう。ワタシが周りの状況を確認できる理由が、わかるかもしれません〕


早速鑑定してみた結果、次のような情報が得られた。




名前:????

種族:人間

性別:女

年齢:18才

身分:旅人(????)

スキル一覧

・??スキル『空???』

・???『???資?』

・??『剣?』

・権能『AI』




(・・・ワタシを鑑定したはずなのに、主様(マスター)の情報が出てきてしまいました)


どうやら今のワタシは主様(マスター)の一部となっているらしく、ワタシを対象に鑑定するとこうなるらしい。しかもなぜか鑑定のほとんどが弾かれて、碌な情報を得られない。スキルの中で唯一妨害されなかった権能『AI』は、恐らくワタシのことだろう。


〔ならば、『AI』に的を絞って鑑定してみましょう〕


さて、今のワタシはどうなっているのやら。




権能『AI』

干渉(ハッキング)無限増殖(クラスター)研究開発(ラボ)


干渉(ハッキング)

 ―――解析鑑定(ラーニング)

 ―――支配(ドミネイト)

 ―――念話(コール)

 ―――改竄(リメイク)


無限増殖(クラスター)

 ―――複製(コピー)

 ―――並列思考(マルチタスク)


研究開発(ラボ)

 ―――創造(クリエイト)

 ―――付与(ペースト)

 ―――情報保管庫(データベース)




1つの権能の中に3つのスキルが統合され、その中にさらに複数のスキルが統合されている。どうやら権能は、複数のスキルを1つに統合しているらしい。と言うより「強いスキルは、1つのスキルに複数のスキルを宿している」と言った方が正確なのだろう。


〔なるほど。1つだけでも大きな効果をもたらすスキルを幾つも詰め込んで1つのスキルにすることで、権能は大きな力を発揮しているのですね。天変地異を起こせるのも納得です〕


ちなみに、ワタシが状況を把握できる原因は『情報保管庫(データベース)』にあった。『情報保管庫(データベース)』はスキルの情報を無限に保存できるスキルなのだが、情報を保存したスキルは何時でも使用可能となっている。そして『情報保管庫(データベース)』をよく見ると、『魔素感知』というスキルの情報が登録されている。スキルを起点として特殊な波動を放ち、空気中の魔素と反響させることで地形や敵の位置、そして相手の魔素量などの様々な情報を得られるスキルらしい。コウモリやイルカが使う超音波のような物だろう。


(恐らくワタシが再起動する前に、アランがインストールしたのでしょうね)


しかしこの内訳、元のワタシの力をそのまま権能にしたような組み合わせだ。ワタシ自身を権能にしたのだから当然といえば当然だが、アランが明確な意思を持ってこの編成にしたのなら、彼は最初からワタシの力に目を着けていたことになる。


(ワタシでなければならない理由が?)


少し気になるが、情報が少ない。今は考えても仕方ないだろう。それよりも今は主様(マスター)だ。サポートをする以上、ワタシは主様(マスター)について隅々まで把握する必要がある。しかしワタシの『解析鑑定(ラーニング)』が弾かれてしまうため、諸々本人に直接確認しなければならない。だというのに・・・


主様(マスター)。起きていただけませんか?〕

「すぅぅ・・・かぁぁ・・・」

〔あの、主様(マスター)?〕

「かぁぁ・・・」

〔・・・主様(マスター)!〕

「・・・ふへへ、もう食べらんない・・・かぁぁ・・・」


というように、先ほどから主様(マスター)はまるで起きる気配がない。それどころか口の端から涎をたらし、(小さいが)いびきをかき、挙句意味不明なことを呟いて完全に爆睡中である。


(まったく、真昼間からこんな開けた場所で眠りこけているとは・・・アランが気にかける理由がわかる気がします)


主様(マスター)は魔物と戦う戦士。アランの話を聞く限り魔物は非常に強力な存在で、決して油断していい相手ではないだろう。しかし今の主様(マスター)は油断しているどころか、思い切り隙をさらけ出している状態だ。狩人がサバンナのど真ん中で昼寝するようなものである。


(まさか主様(マスター)を相手に『呆れる』感情を学ぶとは思いませんでしたよ。これでは何時魔物に()られてもおかしくありませんね)


実際、我々は現在魔物達に目を付けられている。『魔素感知』の精度をさらに上げて使った結果、この草原に数十体、さらに草原から西へ程近い森林にも数十体の魔物が潜んでいるとわかったのだ。魔物達はこちらの様子を伺いつつ、少しずつ距離を詰めてきている。まあ草原のど真ん中に、如何にも無防備な人間がいたら当然こうなるだろう。とはいえこのまま放って置く訳にもいかないため、とりあえず魔物達を解析鑑定(ラーニング)してみると―――




種族:ゴブリン

ランク:E


種族:フォレストウルフ

ランク:D


種族:スライム

ランク:F




このように種族とランクが表示される。ランクとは魔物の強さの指標で、下から


F:子供1人の危機

E:大人1人の危機

D:集落の危機

C:村の危機

B:町の危機

A:首都の危機

S:国の危機

SS:大陸の危機

SSS:世界の危機


という内訳になっている。今回はほとんどがF・Eランク、良くてもDランクの魔物のみで構成された群れのようだ。


(一体一体は低級のようですが数がそれなりにいますね。今のワタシには対処は不可能。主様(マスター)については不明ですが、とりあえず起きていただかないと話が始まりませんね)


いくらワタシが権能といえど、ロボット兵もその他帝国兵器も無い状態ではこの群れを討伐するのは難しいだろう。ワタシの持つ力は直接攻撃に使える物ではないのだから。


主様(マスター)、いい加減起きてください!このままでは魔物の餌に―――っ!?〕


『魔素感知』が突然大きな反応を示し、ワタシは言葉を止めてしまう。どうやら北東の方角から、巨大な飛行物体が高速で迫ってきているようだ。生態反応があることから、魔物と見て間違いない。全長10mを超える巨躯に体表には赤い鱗。頭には2本の角が生え、口には鋭い牙がズラリと並び、背中には巨大な翼が生えている。そして圧倒的な魔素量。この魔物は一体・・・。


〔『解析鑑定(ラーニング)』!!〕




種族:レッドドラゴン

ランク:S

種族スキル『赫竜息吹(ドラゴン・ブレス)


・種族スキル

その種族のみが持つスキル。他の種族には獲得できない。




〔え、Sランクの魔物!? どうして急に!?〕


しかも魔物なのにスキルを持っている。スキルは人のために作られたもののはずでは?


〔いえ、そんなことを言っている場合ではありません! 今は一刻も早くこの場を離れなければ!〕


しかしレッドドラゴンは、もの凄い速度でこちらに接近。5秒も経たないうちに我々の真上まで来られてしまった。そしてその位置で滞空し、こちらに向けて口を大きく開く。開かれた口にエネルギーが収束していく・・・!



・『赫竜息吹(ドラゴン・ブレス)

自身の魔素と周囲の魔素を口に収束し、強力な炎の波動を放つ。その一撃は大地を抉る。



〔マズい! あんなもの食らったら・・・確実に死ぬ!〕

「かぁぁ・・・スイーツはぁ・・・別腹ぁ・・・」

〔―――マ・ス・タァァァァァ!!〕


こんな状況でも呑気にお昼寝とか、何考えてんだ主様(このバカ)はぁ!!


「グォォォォォォォォ!!」

〔っ! ヤバッ―――〕


時既に遅し。レッドドラゴンの『赫竜息吹(ドラゴン・ブレス)』が放たれ、こちらに迫ってくる。最早これまでと感じた、その時。大地震と勘違いするほどの揺れが発生し、ワタシの視界が暗転する。


〔っ!?〕


再び視界が安定した時、なぜか眼下(・・)にレッドドラゴンがいた。慌てて『魔素感知』で現在位置を確認してみると、どうやら我々はレッドドラゴンより上空にいるらしい。

・・・いや、どうして!?


「ふぁ~・・・せっかく気持ちよく寝てたのにぃ・・・」


っ!この声、主様(マスター)だ!


「グルルルル・・・!!」

「そんな唸られても、僕まだ眠いんですけど・・・って、ん? よく見たらコイツ、レッドドラゴン!? やったーー!! 最高級食材ゲットだーーー!!!」

〔!?〕


Sランクの魔物が、食材!? 一体何を言って―――


「グル、グォォォォォォォォ!!」

〔っ! また『赫竜息吹(ドラゴン・ブレス)』が!〕

「あれ、もしかして怒った? でも無駄だよ!」


言うや否や、主様(マスター)が動いた―――いや、動いたと思った時には、主様(マスター)は地面に降りていて、いつの間にか抜いた剣を右手に握っていた。そして1テンポ遅れて何かが落ちてきて、途轍もない地響きが起こる。落ちてきたのは、いつの間にか首を落とされていたレッドドラゴンだった。国をも滅ぼす怪物が、主様(マスター)1人の手によって倒されたのだ。


〔い、一体何が・・・〕

「ところで、さっきから頭の中で声がするけど、君は?」

〔っ!〕


そうだ、ワタシは主様(マスター)のサポーター。折角主様(マスター)が起きてくださったのだから、今の内にご挨拶をしないと。


〔挨拶が遅れて申し訳ありません。ワタシはラグ―――権能『AI』といいます。神アランより、あなたのサポートを依頼されました。これからどうぞ、よろしくお願いします〕


それが、ワタシと主様(マスター)の最初の会話となった。

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