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最強AIの異世界転移  作者: 蓬莱
第2章 ぶっ飛ばせ!魔樹の軍勢
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第37話 こんなの許せるか

大変長らくお待たせいたしました!

連載再開です!

盗賊に襲われて以降、我々に挑んで来る者は1人もいなかった。


《なんだか、平和な道のりですね。と言うより、平和すぎると言った方が良いでしょうか?》

《あぁ、これは明らかに異常事態だ。新設した村がスッポリ入る程の森だぞ? 盗賊にしろ魔族にしろ、もっと潜んでいてもおかしくない。なのに、あれ以来襲撃が1度も無いなんて……何か妙だ》


そう言って、桃華は警戒を強める。


《いったい森で、何が起きているのでしょう?》

《分からないが、良くないことが起きていることだけは確かだな。警戒を怠らないようにしよう》


しかし、結局その後も平和な道のりが続き、警戒は徒労に終わった。



*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*



7日目―――

我々は遂に、視界の端に街を捉えた。


《あれが人間の街ですか》

《ふむ。この気配、全て人間か。街と言うだけあって、凄い人の数だな。建物の作りもしっかりしているし、道も綺麗に均されている。技術もある程度発展しているようだな》

《これなら錬金術師の1人くらい見つかるでしょう》

《そうだな。さて、いよいよ街が目の前に見えて来たわけだし、ここからは少し走って行かないか? そうすれば、今日中に街に着くと思うのだが》

《"転移" では行かないんですか?》

《飛んだ先に罠か何かぎあったりしたら大変だろ? だから走って行こうと思ってな》

《成程、確かに。では、ここからは走って行きましょうか》

《おうよ!》


言うや否や、桃華は全速力で駆け出した。桃華の足の速さは凄まじい。音速と言っても差し支えない程の速さだ。しかもその速度で移動しても、障害物に一切ぶつからない。障害物の全てを紙一重かつ最小限の動きで回避しているのだ。お陰で彼女は一切減速せず、街の門前へ辿り着いた。


「うぉっ!? 何だあんた!?」


門の前には、2人の男達がいた。中年の男と若い青年の2人組で、どちらも鎧を身に着けている。いきなり目の前に人が現れて驚いたのだろう。2人は怯えたように手にした槍をこちらに向けていた。


「驚かせてすまない。私は桃華と申す者。あなた達はこの街の衛兵か?」

「あ、あぁ。そうだ。それで、衛兵の俺達に何の用だ?」

「今から街に入りたいのだが、村から出てきたばかりで入り方が分からない。どうすれば入れるか、教えてくれないか?」

ミーサス(この街)に入りてぇのか? それなら、身分証が必要だ。無いならまず犯罪歴を調べて、問題無ければ銅貨5枚で身分証を発行できるぜ。ま、この街でしかつかえねぇけどな」

「そうか。では生憎、身分証を持ち合わせていないので、発行をお願いしたい」

「分かった。じゃあまずはこの水晶に触れてくれ。これであんたの犯罪歴が分かる」


中年の衛兵が懐から透明な水晶を取り出す。こっそり『解析鑑定(ラーニング)』で見てみると、どうやら触れた者がこれまで歩んで来た人生を覗き見ることができるらしい。んで、その中に殺人(正当防衛などを除く)、強盗、放火などの犯罪を見つけた場合には、赤く光るようだ。


《桃華、今までに罪を犯したことは?》

《数え切れない程の罪を犯したよ。殺人という名の大罪をね》

《っ!! やはりそうですか。少し待ってください。経歴の偽装を―――》

《心配ない。水晶は反応しない筈だ》

《え?》


桃華は何の気なしに水晶に触れる。すると桃華の言う通り、水晶は何の反応も示さなかった。


「よし! 犯罪者では無さそうだな。嬢ちゃん、金はあるかい?」

「ここに」


桃華が腰袋―――もちろん内部を拡張した特別製だ―――の中から銅貨を5枚取り出して、中年の衛兵に手渡す。


「オーケー。確かに受け取った。おい、身分証の発行を」

「分かりました」


中年の衛兵はその場に残り、若い衛兵が我々を門の内部へと案内する。ワタシは訳が分からず、”念話(コール)” で桃華に話しかけた。


《いったいどういうことです? あなた、殺人を何度も犯しているんじゃないんですか?》

《そうだ。東の大陸にいた頃、他の大陸から攻め込んで来た者達への対処で、何百もの命を奪って来た》

《ならばどうして?》

《その者達が、魔族だったからだ》

《……え?》

《私、いや、私達は幾度も殺人を犯した。だがそれは、あくまで魔族の観点での話。人間の観点では、それは只の狩りと同義なんだ。人間の法律じゃ、魔族はどれだけ殺しても罪にならないのさ》

《………っ!?》


そんなバカな。魔族というだけで、殺しても罪に問われない? ワタシが元いた世界では人間も野生生物も法律で守られていたというのに、魔族には身の安全を保障する法律自体がないのか?


《確かに、知能の低い魔物は見境なく襲い掛かって来ますし、魔人の中にも悪人はいるでしょう。でも、魔族の中には知恵を持ち、言葉を話せる者達がいるんですよ? なのに魔族というだけで、いくら殺しても良いということになるんですか?》

《少なくとも、人間にとってはそうらしい》

《そんな………!》

《別に魔族に限った話じゃない。この世界には、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、その他にも様々な知性を持った種族がいるが、遥か昔の時代は人間から亜人種と呼ばれ畏怖され、蔑まれ、ひどい時には亜人種=狩りの獲物とされていた時代もあったらしい。今は流石にそこまでひどくないが、未だに人間による他種族への差別は根深く残っている。人間はどうも、自分達と違う奴らを受け入れるのに時間が掛かるらしい》


桃華の言葉は的を射ている。

私がまだAIだった頃、他国の防犯カメラをハッキングした時に、肌の黒い男がリンチを受けている所を目撃したことがある。男は肌の白い男達から暴行を受けながら、同時に罵声を浴びせられていた。カメラに音を採る機能が無かった為声は聞こえなかったが、唇の動きから「黒人が白人(俺達)の前を通るな」と言っているのだと分かった。


このような光景は、他にも様々な所で見受けられた。性別の違い。肌の色の違い。文化の違い。様々な異なる点を見つけては、差別の対象とする者を大勢見てきた。やがて知識が増えて、ワタシはこのような差別が、ずっと昔から行われて来たことを知った。そして、人間から差別を切って捨てることも、不可能だと理解した。だからと言って、差別意識に共感はしないが。


《特に魔族はひどく嫌われているようでな。魔物達が見境なく暴れていることもあって、未だに魔族そのものが獣扱いされているんだ》

《バカな! あなた達が獣なはずない!》

《そう言ってもらえるのは嬉しいが、大多数の人間にはそう見えている。人間から見れば、魔物も魔人も大した違いは無いのさ》

《何を言うんですか! カルメラ様(マスター)を思い出してください! あの人は最初からあなた達のことを人として見ていたじゃないですか! カルメラ様(マスター)の他にも、そういう人間がいても不思議じゃないでしょう?》

《カルメラ様は超レアなケースさ。普通は魔族絶対排除主義になるか、良くても弱くて可愛らしい魔物が》


丁度そこで、若い衛兵が発行された身分証を渡して来た。


「こちらが身分証になります。お確かめください」

「ふむ………問題ないな。ありがとう」

「いえいえ、これも仕事ですから。そうだ! 1つ注意してほしいことがあるんです」

「何だ?」

「この街の近くに森があるのですが、そこには不用意に近付かないようにしてくださいね。低ランクではありますが、あの森には魔物が大量に湧いていて、少なくとも一般人が1人で通れるような場所ではありませんから」

「……そうか。忠告、痛み入るよ」


若い衛兵は、目の前にいる少女の見た目をした人物が、まさか世界すら滅ぼしかねない存在だとは夢にも思っていないのだろう。桃華をただの旅人と勘違いして、わざわざ忠告してくれたようだ。どうやら親切な人間のようだ。もしかすると、彼なら魔族のことも―――


「まったく魔族ってのは、どうしてこうも無駄に湧いてくるんでしょうね。あの害獣共(・・・)がいるせいで、我々は常に奴らの脅威に怯えなければならない。特に魔人って奴は、魔物のくせに人みたいな姿になって、しかも知恵をつけて人の言葉を話せるそうじゃないですか。亜人はまだ良いけど、魔族が言葉を話すのは気持ち悪くてしょうがないですよね」


……どうやら、ワタシの予測は外れていたらしい。彼のような人間ですら、魔族や他種族への偏見があるようだ。


「おいおい、見ず知らずの人に愚痴を言うのは感心しねーな」

「こ、これは失礼しました! 魔族のことを思い出したら、つい……」

「ま、気持ちは分かるけどな。今は仕事だ」

「はい先輩! では、桃華さん。ようこそ! ミーサスへ!」

「どうも」


ようこそと言われても、今の話を聞いた後では全く歓迎されている気がしない。桃華も同じことを思ったのか、淡泊な返事をするのみだった。


《あの青年は差別が無いように見えたのに……》

《これが現実さ。言ったろ? カルメラ様は超レアなケースだって。主を思って希望を持とうとするのは良いが、まず目の前の現実を受け止めないとそれもままならないぞ?》

《っ! そうですね………ワタシ、少し目が曇ってたみたいです。ですが、単にカルメラ様(マスター)のことを思ってたからではないです》

《と言うと?》

《さっき、差別の話をするあなたを見て思ったんです。”許せない” って》


人間による他種族への差別の話をする桃華の表情は、何かを諦めた人間が見せるものと同じだった。その表情を見たワタシは、怒りを覚えた。どうして魔族だからという理由で、こんな扱いを受けなければならないのか? カイザー達は、当時の勇華達に仲間を死に追いやられ、それでも仲間の未来の為に勇華達との共存を選んだ、強いゴブリンだ。勇華だって、父の無念を晴らして故郷の統治者に返り咲くべく、恥を忍んでカルメラ様(マスター)に直談判する程の強い精神を持っている。なのに……なのに! 人間の勝手な解釈のせいで獣扱いだと? ……ふざけるな! そんなこと、認めて良い訳が無い!!


カルメラ様(マスター)のように、種族の垣根を越えて人と接することができる人間はいるのに、大多数の人間が他種族を差別するせいで人間という種族全体が差別の方向に走ってしまっている。ワタシはそれが許せなかったんです》

《……本当に、元が只のスキルとは思えないな、あなたは。だが、所詮は個人の意見。もちろん我々もあなたに賛同するが、世界に対し何の影響力も持たない今の我々では、世界は変えられないぞ?》

《だったら、国を作りましょう》

《っ!!?》

《確かに今の状態では、我々が何を言っても「ただの動物好きの少女が、動物達と何かほざいてる」としか見られないでしょう。ですから国を作って、何か大きな偉業を成し遂げて、世界に我々の存在を知らしめるのです。そうやって我々の価値が世界に認められれば、我々の言葉にも重みが増す。そうなれば、この憎たらしい差別も消すことができるはずです》

《それはそれは、滅茶苦茶デカい目標だな。だがその為には、国として確立する力が必要だ。武力とは違う、生産力や財力などの力が》

《であれば、まずは自給自足の力をつけることですね。その為には、魔土の改善が必須。今すぐ錬金術師を探しに行きましょう》

《だな。喫緊の課題はまずそれだ。ただ……》

《ただ?》

《『魔族に対して偏見の無い人間』という条件が追加されたが》

《…………………あ》


やれやれ。これは長丁場になりそうだ。

本作をご覧いただき、誠にありがとうございます!


ようやく新作を書き終えることができました!

……短いですが。


今後は「戦神様の厄払い」と並行して本作を執筆していくこととなるのでまた休みが増えてしまうかもしれないですが、皆様、どうか本作をよろしくお願いいたします。


このお話をより良いものとするため、皆様に楽しい時間をご提供するため、皆様のご感想をいただけると幸いです。


(・・・面白いと思ったら、ポイントもお願いしたいです)

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