第36話 桃華の珍道中 その2
明けまして、おめでとうございます!
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街を目指す道中、どうやら我々は盗賊に囲まれたようだ。んで、その盗賊のせいで、称号に関する桃華の話が中断されてしまった。
―――めっちゃくちゃ腹が立ったので、ワタシ自ら盗賊を倒すことにした。
森の中から人の集団が飛び出してくる。全員がそれぞれの手に武器を持ち、何やら良からぬことを考えている目で桃華を見ている。
「よぉ、嬢ちゃん! こんな所で1人旅かい?」
盗賊の頭と思しき男が前に進み出て、桃華にそう聞いた。
「まぁ、1人というか、何と言うか……」
「どう見ても1人だろ? いけないねぇ、嬢ちゃんみたいな可愛い女の子が1人で旅だなんて」
「……何故?」
「そりゃお前、俺達みたいな悪い大人に目を付けられちまうからさ」
「嬢ちゃんみてぇな可愛い子なら、売り飛ばしても良いし、遊びにも使えるぜ」
「………」
盗賊達がニタニタと笑みを浮かべる。このゾッとする感じ、恐らくこれが "気色悪い" と言う感覚なのだろう。しかし、そんな盗賊達を目の前にして、桃華は微動だにしない。まるで「お前らごときに、私をどうこう出来るとでも?」と言いたげな態度だ。
「俺達も今は手荒な真似はしたくねぇからよ、大人しくしてくれると助かるんだが、どうだ? ……って、聞くまでもねぇか。この人数に囲まれて逆らえる訳―――」
「断る」
『……はぁ?』
盗賊達は、意味が分からないと言った表情で間抜けな声を上げる。
「……おいおい、今の自分の状況分かってんのか? 周りを見てみろ! お前は1人、こっちは20人だ。大の男20人を相手に、お前みてぇなガキが勝てる訳ねぇだろ!」
「20人? 森に隠れてる奴らを加えて100人だろ?」
「っ!!!? どうしてそれを!?」
「気配の消し方が雑過ぎる。この程度の気配遮断で隠れてるつもりだったのか?
その程度の実力では、私には到底勝てないぞ?」
「な、舐めやがってぇ……! てめぇら、やっちまえ!」
『おぉぉぉ!!』
盗賊達が一斉に襲い掛かってくる。取り囲んで来た20人と、森から出てきた80人。合わせて100人が一斉に襲い掛かって来た。
《良し、見事に挑発に乗ってくれたな》
《ふふ。さて、どう料理してやりましょうか》
最近気付いたのだが、ワタシは話を遮られるのが大っ嫌いなのだ。桃華の話を遮りやりやがったこの盗賊共には、目に物見せてやらないと!
《早速いきましょう。『赫灼幻想剣』!》
ワタシは桃華の前に、ステンドグラス模様の剣―――『赫灼幻想剣』を一振り召喚した。
「おぉ!? 何だあの剣は?」
「ありゃお宝に違いねぇ! てめぇら! あの剣も頂いちまえ!!」
盗賊達が益々色めき立っているが、ワタシも桃華もそれを無視する。
《まずは20人。"素粒子崩壊波動"!》
狙いを絞って、ワタシは『赫灼幻想剣』から波動を放つ。すると、桃華の目の前に迫っていた盗賊20人が、跡形も無く消滅した。
"素粒子崩壊波動"―――
『素粒子操作』の力によって、相手を素粒子レベルで分解する波動を放つ技だ。権能か称号の力で守りを固めなければ、鬼であっても即死するだろう。
『……へ?』
何が起きたのか理解出来なかったのだろう。盗賊達は揃って間抜けな声を上げた。が、やがて現実を理解し、震え始めた。
「な、何が起きたんだ!!?」
「仲間が消し飛んだ!? どうなってんだ!!?」
「頭領! どうしたら―――」
「落ち着けバカ野郎共!」
"頭領" と呼ばれた男が檄を飛ばすが、その表情に余裕は無かった。
「そうだ! 魔法だ! きっと今のは、近付いた奴を消滅させる魔法なんだ! だったらこっちも、遠距離から魔法で攻撃すりゃあ良い!」
「な、成程!」
「さすが頭領!」
……全然違うのだが。
そんなワタシの思いを他所に、的外れな推測で士気を上げた盗賊達は、今度は遠距離から魔法を放って来た。
《ほう? メンバー全員が魔法を使えるとは、わりと優秀な盗賊団だな。並の軍隊なら完封できたかもしれないな》
《ま、我々には遠く及びませんがね》
《戦っているのはあなただけだが》
《体はあなたの物ですから》
と、そんな話をしている間に、敵の魔法が迫って来た。
《今度はこっちを使いましょう。『赫灼幻想盾』!》
我々の周りを囲むように盾を展開すると、その直後、敵の攻撃魔法が次から次へと襲い掛かって来た。しかし、いくら魔法を使う能があったとて、権能どころかスキルすら付与されていない一撃が『赫灼幻想盾』に効くはずもない。盗賊達の放った魔法は全て、盾に吸収されて終わった。
「嘘だろ!? 魔法も効かねぇのか!?」
「や、やべぇぞ……逃げろぉーーーーー!!」
「退け! 退けぇーーーー!!」
敵わないと勘づいた途端、盗賊達は蜘蛛の子を散らす用に逃げ出した。賢明な判断ではあるが、逃がすつもりは無い。
《まだワタシの怒りは収まっては―――》
《やめておけ》
追撃でトドメを刺そうとしたら、桃華に止められてしまった。
《何故止めるんです?》
《相手はもう戦意喪失している。これ以上追う必要は無い》
《でも、ワタシの鬱憤はまだ―――》
《あなたの力は、鬱憤を晴らすための物なのか?》
《っ!!》
《あなたのその力は、仲間を、何よりカルメラ様を守る為の物なんじゃないのか?》
桃華が僅かに語気を強める。
……そうだ。考えてみたら、ワタシは何をやってるんだろう? いくら相手が盗賊とは言え、子供みたいな癇癪に身を任せてなぶり殺しにしようだなんて、どうかしていた。
《すみません、桃華。あなたのお陰で助かりました》
《良いってことよ!》
そう言って、桃華は満面の笑みを浮かべる。やはり、彼女が仲間になってくれて良かった。ワタシは心の底からそう思った。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
「はぁ、はぁ……!」
盗賊達は森の中へと入り、桃華達から距離を取る為必死に逃げていた。
(クソっ!! 只のガキだと思ったら、何なんだアイツは!? とんでもねぇ化け物じゃねぇか!!)
盗賊達は森の奥へ奥へと逃げ込んでいく。―――が、ある程度潜った所で盗賊達は足を止め、”頭領” が懐から札のような物を取り出した。
「てめぇら、俺から離れんなよ!? 『転移の御符』よ! 俺達をアジトまで飛ばせ!!」
”頭領” が叫んだ瞬間、御符は眩い光を発する。すると、盗賊達は一瞬でその場から姿を消し、先程桃華|《(ミカエル)》と戦った場所からおよそ100km程離れた場所へと転移した。100kmも離れてしまえば、ミカエルと言えど気配を探ることはできない。もちろん盗賊達はそれを知らないが、この時点で彼らは自分達が逃げ切れたと確信した。
「ふぅぅ~、何とか逃げられたぜ」
「ですが、仲間が20人も殺られてしまいました……」
「畜生! 明日アイツと飲む約束してたのに!」
塵1つ残さず消し飛んだ仲間を想い、盗賊達は表情を暗くする。彼らは決して、褒められた存在では無い。しかし、彼らには彼らなりの絆があり、仲間を奪われたことは到底許せることでは無かった。
「お頭、まさかとは思いますが、このまま引き下がるとは言いませんよね?」
「……当然だ!」
本音を言えば二度とあの少女と関わりたくないのだが、”頭領” はそれを表に出さず仲間達を見据える。
「あのガキの周辺を徹底的に洗い出すぞ! アイツの親兄弟、関係者、その他諸々、全員見つけてかっ攫う!」
「その後はどうするんすか?」
「ソイツらを餌にして、アイツを誘き出す。そんで人質取って無力化して、アイツの目の前で関係者を1人ずつ殺す!」
「ひゃっはー! 最高っすね、それ!」
「さすが頭領! 考えることがえげつねぇぜ!」
「早速準備開始だ!」
『応!!』
桃華への復讐の為、一丸となり動きだす盗賊達。だがこの直後、彼らの人生はあっけなく終わりを迎える。
「ゲギャハハハ!! 獲物発見♪」
『っ!!!?』
身の毛もよだつ程の殺気が、盗賊達に襲い掛かる。何事かと殺気が飛んで来る方角を向いた瞬間―――80人の盗賊全員が、地面から突き出した太い木の根に心臓を貫かれた。
「ガ、アァ………!」
「グェェ………!」
木の根は凄まじい速度で、盗賊達の血を吸い取っていく。盗賊達は声にならない悲鳴を上げながら、次々と血を吸いつくされて死んでいった。
盗賊達を殺した犯人は、盗賊のアジトから少し離れた場所―――森の中に、何故か木々が枯れている場所があり、その地下に犯人が潜んでいた。
(……あまり上手い血では無いな。まぁ、間食変わりにはなったが)
身長20mはあろうかと言う巨大な木の魔物―――後に『虹の錬金術師』に倒された者とは異なる個体の古代魔樹が、盗賊達の血に対する感想を漏らす。
(それはさておき、本命の村だ。手下共の報告じゃあ、ホブゴブリンにその王、女王、果てには皇帝までいるらしいじゃねぇか。しかも鬼や死霊、果てには人間と共生してるって? 餌だらけじゃねぇか! あの方に辺境の魔物の村へ行くよう命じられた時は貧乏くじ引いたと思ったが、とんでもない。コイツは大当たりだぜ!! だが、他はどうとでもなるが鬼は少々厄介だな。まずは道中の生き物を片っ端から食って、村についたらホブゴブリン共を食い尽くして力を付けるとしよう。鬼共はその後にゆっくり食えばいい)
考えを纏めた古代魔樹は周辺の植物を枯らしながら、カルメラ達の村を目指して地中を進んでいく。そんな、近場の命を食い尽くしながら進む死神の後ろに、その後を追う集団の姿があった。
「アイツか……アイツが俺達の村を!」
「落ち着け。奴に気付かれる」
その集団は、人間の集団では無い。体こそ人型だが、全身が緑色の鱗に覆われ、頭は蜥蜴そのもの。さらには蜥蜴のような尻尾が生えている。水辺を主な生息域とする魔人の一種、蜥蜴魔人だ。
そんな蜥蜴魔人の集団を率いるのは、3名の若い蜥蜴魔人の兄妹。彼らは古代魔樹を討伐すべく、仲間達を引き連れて後を付けて来たのだ。
「兄者の気持ちは分かるが、事を急いてはいけない。無策で突撃すれば、我々も命を吸われて終わりだ」
「姉さんの言う通りです。とりあえずこの距離を保って、奴を観察しましょう。そうすれば、弱点の1つくらい見つかるはずです」
「弱点ならもう見つかっているだろう? 致命的な弱点が」
「え!? 何ですか!?」
「慢心だよ。アイツ、自分が命の危機に陥ることなんか、これっぽっちも考えちゃいねぇ。自分が誰よりも強いって、自信過剰になってるからさ。つい先日の俺みたいにな」
「確かに。だがそれをどう利用する? アイツが慢心しているのは事実だが、それはその自信を裏付けるだけの力を持っているからだ」
「実際、私達の攻撃は、アイツに掠り傷すらつけられなかったですしね」
「その通り。それを踏まえて兄者。どうやって奴を倒すつもりなんだ?」
「それは……やってみりゃどうにかなる!」
「なるわけ無いだろ」
「ぐっ……! だがよ、だからってこのまま野放しにすんのは違うだろ?」
「それは当然だ。そしてその為にも、今は様子見に徹して、機を伺うのが最善なんだ」
「くれぐれも、1人で特攻なんてしないでくださいね? これ以上の犠牲は、もうウンザリですから!!」
「……チッ! わぁったよ」
末の妹に涙目で見られて、兄は渋々と言った様子で折れる。以降、蜥蜴魔人達は一定の距離を保ちながら古代魔樹をつけていき、必死に弱点を探るのだった。
本作をご覧いただき、誠にありがとうございます!
盗賊はかませで終わってしまいましたが、古代魔樹には不穏な動きが……。そしてその後を追う蜥蜴魔人達とは、どんな因縁があるのか? 続きを是非お楽しみに!
また、ここでお知らせです。
実はこの度新作を思いつきまして、現在その制作に取り組んでおります。詳細はまた後日発表となりますが、この作品とは全く毛色の違う作品となっております。こちらも乞うご期待です!
このお話をより良いものとするため、皆様に楽しい時間をご提供するため、皆様のご感想をいただけると幸いです。
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