第30話 これで僕らは仲間だ!
お待たせいたしました!
連載再開です!
「「・・・・・・・え?」」
一瞬、我々の思考は真っ白になり、何が起きているのか理解できなかった。
―――が、すぐに理解して、カルメラ様は大パニックになる。
〔『神速思考』、『並列思考』!〕
ワタシも危うくそうなりかけたが、元AIとしてのプライドで何とか踏ん張り、『神速思考』と『並列思考』を起動することに成功した。ついでにカルメラ様の思考にも同じ技を施し、脳内での会話を開始する。
(ち、ちょ、ちょちょ、ちょっと!? ミカエルちゃん聞いた!? あ、あのしゅ、酒呑童子が、ぼ、僕達のな、仲間に―――)
〔落ち着いてください!そんな状態ではまともな話はできませんよ?〕
(そ、そうだね!え、えと、すぅ~~、はぁ~~・・・)
〔落ち着きました?〕
(うん、ありがとう。もう大丈夫!でも、空耳じゃないよね?)
〔ええ、間違いありません。彼女は間違いなく『私達を我々の麾下に加えてくれ』と言っていました〕
(だよね!?)
余程驚いているのだろう。カルメラ様は今までにない程混乱している。ワタシだって驚いた。まさか酒呑童子があんなことを言い出すなんて、コンマ1%も考えていなかったのだから。
(どうして急に? 昨日の夜、一緒にぬらりひょんと戦う約束したから?)
〔本人の意思を確かめる他ありません。スキルを解除します。言っておきますが、解除してすぐに大慌てするようなことはしないでくださいね?〕
(が、合点・・・!)
いつも自身満々なカルメラ様が、今回はちょっと自信なさそうにしている。事態を考えればしょうがないことなのだが・・・そこは何とかしてもらうしかない。
〔では、スキルを解除します〕
ワタシは2つのスキルを停止する。
あまりの衝撃に広場は静寂に包まれているが、鬼達、オーガ達に驚いた様子はない。どうやら事前に聞かされていたようだ。
(———あるいは、予測していたのかもしれませんね。ワタシと違って、彼らは酒吞との付き合いも長いようですし)
「酒呑。どういう風の吹き回しかな? どうして急に、僕達の仲間になろうと思ったの?」
「少し長くなるが、良い―――よろしいか?」
「無理して畏まらなくて良いよ」
「すまない。それで、少し長い話だが、良いか?」
「もちろん。どんなに長くても、ちゃんと聞くよ」
「・・・あんた達に親父の話をした後、あたしなりに今までのことを振り返ってみたんだ。まったく、随分と小さな世界で生きていたもんだよ。ゴブリン達を奴隷にしていい気になって、お山の大将も良い所だ。親父は大陸の長やってたってのに」
「・・・・・・」
「過去に囚われて、あたしは自分を小せぇ奴にしちまった。これじゃあ仇討ちが成ったところで、親父に顔向けできねぇ。だからあたし、決めたんだ。ただ仇を討つだけじゃなくて、御家を復活させようって」
「え、それって!」
「あぁ、あたしはぬらりひょんを倒した後、新たな妖怪の王になって、大陸を纏め上げる!」
・・・驚いた。まさか酒呑童子が、仇討ちの先を考えていたなんて。
「でも、良いの? 相手はお父さんを裏切った連中なんでしょ? ・・・受け入れられるの?」
「もちろん簡単なことじゃないさ。今でもあの裏切り者共のことは、思い出すだけで怒りが抑えられない。でももし、その選択を後悔してる奴がいるのなら―——ソイツらが謝罪をしてくれるのなら、あたしはそれを受け入れようと思う。カイザー達が、あたし達にそうしてくれたようにな」
「・・・っ!」
「それに、何も全ての妖怪が寝返ったわけじゃない。寝返ったのは、兵士や騎士なんかの力の強い奴らばかりなのさ。恐らく文官や市民の中には、今も親父に忠義を尽くそうとしてくれてる奴らがきっといる。だから、ぬらりひょんを倒してソイツらを助け出し、親父が目指してた統治を実現する。それが、親父への手向けになるとあたしは思うんだ」
「そっか・・・覚悟の上なんだね!」
「当たり前だろ? 覚悟がなきゃ統治者は務まらないからな」
酒吞の心境の変化はわかった。だが―——
「しかし、そうなると益々わかりません。後々統治者になるつもりなら、なぜ別の者———それも一度は敵対した、我々の麾下に入りたいなどと?」
「親父の目指した統治を実現するには、ただ親父の真似をするだけじゃいけねぇ。あたし自身、未だに ”甘い” って考えは抜けねぇし、ぬらりひょんに反旗を翻されたことからも、何かしらの問題があったことは明白。だが、親父のやり方の何が問題だったのか、改善するにはどうしたら良いか、あたしにはさっぱりだ。だからそれを見つける為に、2人の元にいさせてほしい」
「と、言うと?」
「カルメラは親父に良く似た考え方をしてる。親父とまったく同じことを言い出すことも、1度や2度じゃないだろうさ。そん時そこに問題があれば、ミカエルさんなら気付けるだろ?」
「なるほど、そういうことですか」
つまり、カルメラ様が酒呑の父親と同じことを言った時、そこにある問題をワタシに見つけさせることで、自分の統治に役立てようというわけだ。
〔まったく、随分と自分に都合の良い話をしますね。自分じゃ方法を思いつかないからって、ワタシに考えさせようだなんて。茨木に助けを求めてたカルメラ様と、何ら変わらないじゃないですか〕
(いや、本人もそれは承知済みだよ。その上で、確実な統治を行うには、これが最善だって判断したんだと思う)
〔・・・彼女にとっても、苦渋の決断ということですか〕
きっと、カルメラ様が『出来ないことと、誰かに頼ることは恥じゃない』と言ったのが影響しているのだろう。その言葉を聞いて、酒吞童子はプライドを捨てて、自分が考えうる最善の道を選択した。同じ悲劇を繰り返さないために。
〔・・・あの頑固だった酒呑童子が、仲間のために、変わろうとしているのですね〕
(自分を変えるって、すっごく覚悟がいることだと思う。それを実現しようとしてる人のこと、僕は尊敬するよ)
〔1つ、ワタシの意見を述べてもよろしいですか?〕
(聞かせて!)
〔自己に都合の良いことを言っていることに変わりはありませんが―――ワタシは彼女の想いを、無碍にしたくありません。酒吞一味が我々の麾下に入ることも、問題改善への協力も、両方協力したいです!〕
(だよねだよね!僕もおんなじ!酒吞ともぉっと仲良くなりたいし!)
〔とはいえ、都合の良さを本人も自覚している以上、向こうから見返りがあるという体裁を用意すべきかと〕
(う~ん。それは向こうが用意してると思うけど?)
〔っ!確かに。直接聞いてみましょうか〕
(だね!)
ワタシは前へと進み出て、酒吞童子に話しかける。
「あなたの言いたいことはわかりました。しかし、今のままではあまりにあなた達に都合が良すぎます。何か、見返りはあるんですか?」
「あたし含め、家の連中を好きに使ってくれて構わない。兵力としたいなら先陣切って戦うし、農作業を手伝えってんならいくらでも手伝う。文句は言っちまうかもしれねぇが、逆らうようなことはしないと誓おう」
なるほど、人材の貸し出しときたか。確かに酒吞一味なら、戦力としては申し分ない。労働要員としても適している。
〔あれだけの力を無条件で借りられるというなら、確かに見返りとしては十分ですね〕
(なら後は、ゴブリン達の気持ちだね!)
ワタシが頷くと、意外にもそのゴブリン達から声が上がった。
「カルメラ様!ミカエル様!どうか、酒呑童子達を受け入れてやってくれよ!」
「そうだよ!最初はいがみ合うことしか考えられなかったけど、今じゃ友人くらいに思ってる奴もいる!一緒に暮らしたいと思ってるんだ!」
「過去のしがらみは乗り越えた!あたい達は大丈夫だ!」
「あなた達・・・」
「皆・・・!」
ゴブリン達は口々に、酒呑童子を受け入れてほしいと言ってくる。
(皆、本当に良い子達だよね・・・!!)
〔ええ。彼らの心の強さ、優しさ、そして度量には驚嘆を禁じ得ません〕
(うん・・・!)
〔ではカルメラ様、受け入れを宣言しましょう!〕
(合点!)
「皆の気持ちは良くわかった!僕達は、酒呑一味を受け入れる!ただし、単なる兵士としてじゃない。仲間として、酒呑一味を迎え入れる!」
『ウオオオオオオ!!!!!』
ゴブリン達、酒吞一味から歓声が上がる。今ここに、ゴブリンとオーガの混成群が誕生し、酒吞一味との戦いは終わりを迎えた。
・・・以前のワタシなら、どのような結末を迎えただろう? 心を持たぬままこの世界に来ていたら、ワタシはどうしただろうか? 決まっている。最初に襲われた時点でゴブリン達を皆殺しにし、酒吞一味も皆殺しにしていたはず。なぜなら、心無きワタシにあるのは「カルメラ様を守る」という任務のみなのだから。合理的で、確実で―――虚しい方法を取っていただろう。
(以前のワタシって、こんなにも空虚だったんですね)
そう考えずにはいられなかった。同時に、この結末を迎えられたことを、嬉しいとも感じていた。
「さて!こうして僕達は晴れて1つの組織となったわけだけど、まず最初にやりたいことがありまーす!」
・・・物思いに耽ってたらなんか始まった。
「やりたいことって、いったい何をする気ですか?」
「改めてあたしらに自己紹介させる、とかか?」
「違うよ!やりたいことっていうのはね・・・名付けでーす!」
『っ!!』
「ゴブリンだけに名前があるのは不公平でしょ? だからまずは、酒吞達に名付けをしまーす!」
なるほど、確かに。思えば酒吞一味はまだ誰も名前がない。『酒吞童子』や『茨木童子』もあくまで称号。個人としての名前を持つ者はいないのだ。
「ふふ、そうか、そうだったな。スカルの時もあんたは、仲間の証として即座に名前を付けてたもんな」
「あ、因みに、付けてほしい名前とかが無かったら、名前は完全に僕のセンスに寄っちゃうけど、良いかな?」
「―――是非も無し。我等一同、名前を賜るこの名誉、謹んでお受けさせていただく!!」
またしても酒吞童子が畏まったと思ったら、酒吞一味全員が臣下の礼を取ってきた。全員タイミングはぴったりで、良く教育が行き届いていることがわかる。
(か、かっこいい・・・!!)
〔何を悶絶してるんですか!ほら、早く答えてあげてください!〕
(そ、そうだね!)
「え~と・・・相分かった!それじゃあ今から順番に並んで!1人ずつ名前付けてくから!」
わざわざかっこつけて「相分かった」なんて言ってるが、結局はいつも通り。ともかく、こうしておよそ3000人に及ぶ名付けが始まった。
順番はこう。
まずオーガとホロウオーガ計3000人に名前を付け、次にオーガロードとホロウオーガロード計30人に名前を付ける。そしてその後に、熊童子、虎熊童子、金童子、星熊童子、茨木童子、そして最後に酒吞童子の順番だ。
名付けは順調に進み、気付けばお昼時。残すは酒吞達6名のみとなった。
「まず熊童子!君は、猛る牙の意味を込めて ”牙猛” ね!」
「はっ!」
「虎熊童子は雷使いってことだから、”雷電” はどうかな?」
「名前を頂けるだけで充分です!ありがたく頂戴します!」
「合点!そんで次は、金童子だね」
「・・・さすがにそれは名前にしたくないぞ?」
「大丈夫!名前は別にあるよ!君の名前は、”蒼創” だよ!」
「蒼創? ”創” はまあわかるが、どうして ”蒼” なんだ? 使うなら ”金” だと思うが?」
「君を見た時、一番印象に残ったのがその蒼い角と目だった。だから、どうしても ”蒼” を入れたかったんだ」
「印象に? 何故だ?」
「だって、すっごく綺麗だから!」
「え、綺麗? 私が??」
「うん!宝石かと思うくらい綺麗だった!」
「・・・っ!!そ、そうか。私は、う、美しいか、あはは・・・!」
おや? なんだか金童———蒼創の顔が赤くなっているような?
―——と、疑問を抱いていると、酒吞童子が『念話』を繋いで来た。
(カルメラめ、無意識に金———蒼創を ”堕とし” やがったぜ)
〔堕とした?〕
(簡単に言うと、惚れたってことなのかな)
〔惚れる? それはいったい・・・?〕
(それはそのぉ・・・なんだ。まあ、あんたも心が育ってるなら、その内わかる時がくるさ)
途中で言葉を濁されてハッキリとした答えは得られなかったが、とりあえず蒼創への名付けも完了した。
「そんじゃ次は、星熊さんだね」
「おう!」
「星熊さんはイメージとして『剛力を振るう羅刹』ってのがあるから・・・そうだ! ”羅剛” なんてどう?」
「羅剛か・・・へへ、気に入ったぜ!今日から俺の名は羅剛だ!」
羅剛の名が魂に刻まれた途端、凄まじい力の上昇が起きた。
『っ!!!』
羅剛の身体組成が内側から作り替えられ、与えられた力と順応し、昇華させていく!
・・・やがて力の上昇が収まったところで、ワタシは羅剛を『解析鑑定』してみた。
名前:羅剛
種族:霊鬼(天地)
ランク:SSS
・霊鬼
精霊と同質の存在に進化した鬼。
属性を用いた攻撃は、正しく自然現象そのもの。加えて鬼由来の剛力もあるため、自然現象を手足の如く操って大陸を半日もかからず落とせる。
し、進化してる・・・!
しかもランクSSSって、確か概念上は『世界の危機』じゃ・・・!?
「いやぁ、なんかすっごい強くなったね!」
「正直、自分が自分じゃなくなったみてぇで、怖ぇくらいですぜ」
「ま、四天王の筆頭ならこのくらいはやってもらわないと」
「おいおい茨木、そんなこと言われたら頭領のあたしのハードルが上がっちまうよ」
なんて呑気な話をしてる連中がいるが、事はそんな軽い話ではない。
そもそも精霊とは、自然現象が意思を持った存在。それと同じ存在に進化した鬼という時点で強いことは確かだが、羅剛はそれに加えて極上持ちだ。下手をすると少し暴れただけで、味方に大被害を齎しかねない。
そして、このレベルの進化を遂げる可能性を秘めた者が、まだ大勢残っている。
羅剛は既に昇華させてしまったが、現在名付けをしたオーガ達・鬼達の体内では、大きな力が渦巻いている。名付けによって得た魔素を、完全に己が力として吸収しようとしているのだ。それがスキルという形で出るか、進化という形ででるか、はたまたまったく違う形ででるのか。現状は不明だが、凄まじい強化が成されることは間違いないだろう。もしかすると我々は今、恐るべき戦闘集団を生み出してしまっているのかもしれない。
(・・・ワタシがしっかりしないと!)
肥大化した力も、制御できればリスクは激減する。その制御を、ワタシが全力でサポートするんだ。そうだ、どうせなら彼らが制御しやすいように、強化の形を調整してしまえば良い。
「ミカエルちゃん!そろそろ茨木さんに名付けするよ!」
おっと、気付けばもうそんな所まで来たか。ここはまた思考を増やして、調整はそっちでやろう。
「失礼しました。再開しましょう」
「うん!それで、茨木さんの名前なんだけど、”桃華” はどう?」
「”桃の華” と書いて、桃華か」
「そう!その綺麗な桃色の髪が、僕的にすっごく印象に残ったんだよね。それに茨木さんの使う技は、芸術みたいな美しさがあったからさ。だから、美しき華の意味も込めて、桃華はどうかなって」
「・・・素晴らしい!」
その途端、桃華の力が激しく上昇する。調整を加える暇もない。桃華は手にした力を一瞬でものにして、見事に霊鬼へと進化を遂げた。
「これからよろしくね、桃華さん!」
「この名に恥じぬ働きを約束しよう」
そういって桃華は、カルメラ様の前に恭しく跪く。
(またか・・・)
またしても霊鬼が誕生してしまった。しかも次に控えているのは、よりにもよって酒吞童子。正直、霊鬼を超える怪物が生まれるとしか思えない。いったいどうなってしまうのか。
「酒吞の名前は結構悩んだんだけど・・・勇ましき華って書いて、”勇華” なんてどう?」
「あたしってそんなに勇ましかったか?」
「うん!僕達と戦ってる時なんて、もうヤバかったんだから!でもその分、仲間を守りたいっていうのが本気だって伝わってきて、それで思ったんだ。あの勇ましさは、仲間を想う心の象徴みたいだって」
「なるほど、それであたしには勇ってわけか。華については桃華とお揃いでって意味もあるんだろ?」
「そう!酒吞と茨木さんは姉妹なんでしょ? だから、同じ漢字があったほうが良いかなって思って」
「お前の割に、結構しっかり考えて名前つけてんだな」
「むぅ!お前の割にって何さ!いつも考えてないみたいな言い方して!」
・・・いや、実際そうだと思うが。
「悪かった。あたしのことちゃんと見た上で名前をつけてくれて、正直嬉しく思う。ありがとな!」
そして勇華も例のごとく、突然大幅に力が上昇し、そのまま進化を遂げた。ワタシは、進化をとげた勇華を『解析鑑定』してみる。
名前:勇華
種族:王霊鬼(炎)
ランク:SSS+
・王霊鬼
霊鬼を束ねる王。
存在自体が伝説となっている最強の妖怪。
天変地異くらいなら鼻歌交じりで繰り出せる。
SSS+・・・
世界の危機のその上って何なんだ本当に・・・
「これからよろしくな、カルメラ頭領!」
「あはは!カルメラで良いよ!とにかく、これで僕らは仲間だ!よろしくね、勇華!」
カルメラ様と勇華はお互いに握手を交わす。その時だった。
「っ!!?」
突然カルメラ様の奥底で、何かが胎動を始める。
「え、えぇ?」
「どうしたカルメラ!?」
「わかんない!何か胸の奥で、何かが動いて―――」
「落ち着いてください。それは悪いものではありません」
「「え?」」
「新たな魔王の目覚めです」
「「っ!?」」
「カルメラ様。あなたは今、新たな魔王への覚醒の最中にあるんです」
「「っ!!!!!!!?」」
事の発端はスカルへ名付け。
あの時からカルメラ様の魂の奥底で、1つの大きな変化が起き始めていた。それこそが、魔王への覚醒だ。おそらくゴブリン族に加えて、10億を超える不死系魔物を従えた不死王に名付け、配下にしたことで、元よりカルメラ様に備わっていた魔王の素質が本格的に目覚め始めたのだろう。
ただしこの時は、あくまでもギフト『魔王ノ資格』が目覚め始めたのみ。勇華のような正式な魔王には程遠く、まだスキルとして使用できる状態にもなかったため、その時点ではカルメラ様への報告も控えていた。
その目覚めかけだった『魔王ノ資格』が、鬼達への名付けが完了した途端、急速に力を増し始めた。しかもこの上昇速度、資格どころではない。恐らく、今ここで、『魔王』に進化する!
―――バキャ
聞きなれた卵の割れる音。ワタシは早速カルメラ様を『解析鑑定』する。
覚醒スキル:『魔王』
【闇魔法・民ノ希望(魔王)】
思った通り、カルメラ様は『魔王』を獲得していた。勇者と魔王、決して相容れないはずの両者の力を、カルメラ様は1つの身に宿したのだ。
「おめでとうございます、カルメラ様!魔王への進化は無事完了致しました!」
「いや、僕一応勇者なんだけど・・・」
「勇者だからといって、魔王になってはいけないなんてことは無いでしょう? それにスキルが無くたって、魔族を従えている時点で立派な ”魔王” なのでは?」
「っ!それもそっか!」
そう言っていつも通りニコニコ笑い始めるカルメラ様を、勇華達は少々呆れた様子で見ていた。
「まったく、まさか勇者にも魔王にもなっちまうとはな」
「勇者な魔王。差し詰め、”勇魔王” ってところか?」
「勇魔王か。私達は本当に、とんでもない人の下についてしまったようだな、姉さん」
「ああ、こりゃ今からうかうかしてられねぇな!そうだろ野郎ども!」
『ウオォォォォォォ!!!!!!!!』
酒吞一味の者達が、一斉に雄たけびを上げる。さらに―――
「俺達だってそうだ!一度は勝ったが、今の俺達では全員掛かりでも、桃華殿1人に及ばないだろう!カルメラ様とミカエル様、お2人の仲間として恥じることのない戦士を目指すぞ、皆の者!」
『オォォォォォォォォォォ!!!!!!!!』
カイザー達も、勇華たちに負けず劣らずの雄たけびを上げた。
こうして、カルメラ様を中心とした1つの巨大な組織が誕生したのだった。
本作をご覧いただき、誠にありがとうございます!
勇華たちへの名付け!作者が書きたかったシーンをようやく書くことができました!勇華たちのことも、暖かく見守っていただけると幸いです。
このお話をより良いものとするため、皆様に楽しい時間をご提供するため、皆様のご感想をいただけると幸いです。
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