第29話 労役の終わり
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ワタシ達が話し込んでいると、いつの間にかそこにいた茨木達が、話に加わってきた。
「お、お前ら!何時からそこに!?」
「カルメラさんが頭領に、自分達を呼ぶよう頼んだあたりからさ。それより・・・私達を仇討ちから外そうだなんて、どういうつもりだ?」
「そ、それは―――」
「まあ、聞くまでもねぇだろ。頭のことだ。俺達を巻き込みたくねぇとでも思ったんだろ」
「だろうな。だが、それは余計なお世話という物だぞ、頭領!」
「っ!!」
金童子の言葉に、酒呑童子はハッとする。
「俺達にとっても、ぬらりひょんは親の仇も同然。絶対に許すことはできない!」
「俺達にも手伝わせてくれよ!頼む!」
「・・・・・」
頭を下げて頼んでくる仲間達を前に、酒呑童子は難しい顔をする。仲間達を危険に晒したくはないが、その仲間の気持ちを無碍にもできず、どうするべきか迷っているのだろう。
『・・・』
少しの間、沈黙の時間が続く。最初に沈黙を破ったのは、カルメラ様だった。
「良い仲間を持ったね、酒呑」
「ああ。あたしにはもったいないくらいな」
「それで、どうする頭領? 連れていくか? それとも置いていくか?」
「・・・どうせ、止めてもついて来るんだろ?」
『っ!!』
「どうなっても知らないからな?」
「そうこなくっちゃ!!」
鬼達は歓喜の声を挙げる。
・・・酒呑童子の答えは曖昧で、どちらを選択したのかはわからない。だが、少なくとも勝手について来るのを止める気は無いようだ。
「だが、今すぐは無理だ。それはわかるな?」
「もちろんさ。今の私達じゃどうやっても奴らに勝てないだろうからな。今は自分を磨くことに専念するよ」
「それもあるが・・・まずはこの労役を終えないとだろ?」
『っ!!』
「労役を終わらせて、カイザー達と協力関係結ぶまで、仇討ちはお預けだ。そろそろ休憩時間も終わる頃だし、お互いそろそろ持ち場に戻ろうぜ」
おっと、気付けばもうそんな時間か。誰かと話していると、時間はあっという間に過ぎる。
・・・不思議だ。
「もうそんな時間? よし、それじゃあ後もう一踏ん張り、いってみよう!」
『おぉーーーーー!!!』
何故かカルメラ様が占める形となったが、こうして一応話は纏まり、鬼達は各々の村へと戻っていく。
―――そして何事もなく時間は進み、夜を迎えた。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
次の日の朝―――
我々は、カイザーの村の大広場へと集合していた。ワタシとカルメラ様は壇上にいて、そのすぐ下にカイザーを筆頭とする村長達が勢揃い。新入りのスカルは壇の下の右端に控えている。そして我々の目の前には、鬼達を先頭に整列した酒呑一味の姿があって、その周りを囲むようにゴブリン達が整列していた。初日と違い今回は全員整列しているため、余計に手狭に見えた。
「オーガの皆!今日まで本当にご苦労様!君達が手伝ってくれたお陰で、畑の開墾が大分進んだよ!」
「おいおい、あたしらはあんたにやれって言われたからやっただけだぜ?」
「それでもだよ!本当にありがとう!!」
そう言って、カルメラ様は満面の笑みを浮かべる。わざわざ捕虜に対して礼を述べるとは、律儀な人だ。
「そして、ゴブリンの皆!僕の我儘に付き合ってくれてありがとう!君達にとってオーガは、色々思う所がある相手なのはわかってた。なのに僕は、そんな彼らと一緒に農作業をしてほしいって、我儘を言っちゃった。でも、皆は僕の我儘に付き合ってくれた!ううん、それだけじゃない。皆は僕が願った通り、オーガ達との距離を縮める努力をしてくれた!感謝してもしきれないよ!ほんっとうにありがとう!」
「気にするな。俺達としても、いずれは乗り越えなきゃならん壁だった」
「その機会が速攻で訪れたってだけさ」
「寧ろ、こんなに早くその機会を与えてくれたこと、感謝してますよ!」
「み、皆・・・!!」
ゴブリン達―――特に、村長達から口々にカルメラ様を肯定する言葉が聞こえてくる。そんな彼らの言葉に、カルメラ様はあまりの嬉しさで泣きそうになっていた。
「カルメラ様もカルメラ様で、良い仲間に恵まれましたね」
「ぐすっ・・・うん!」
「ですが、泣いてたら話が進みませんよ?」
「そうだね・・・よし!」
カルメラ様は両側から頬を平手打ちして、改めて話し始める。
「さて、次は皆のお願いに対する答えを言うよ!」
『・・・・・・・・・っ!!』
ゴブリン達に緊張が走る。言うまでもなく『答え』とは、"長になって欲しい" というゴブリン達の願いに対する答えだ。
―――まぁ、答えは決まっているが。
「僕達は決めたよ。僕達はこの村の、延いてはこの地域の全ゴブリンの長になる!」
『ウォォォォォォォォォ!!!!!』
ゴブリン達が歓喜の雄叫びを上げる。壇の下にいるカイザー達は、面子を気にしているのか、無表情を貫こうとしている。
・・・全然できていないが。(何かもう泣いてる奴もいるし)
〔これ程歓喜するとは・・・カルメラ様に長になってもらえたのが、余程嬉しかったのですね〕
(それもあるだろうけど、安心したっていうのもあるんじゃない? なんせ1週間も結論を先伸ばしにしちゃったから、気が気じゃなかった子もいたんだと思うよ)
〔・・・不安だった、ということでしょうか?〕
(そうそう!そんな感じ!)
〔なるほど。それなら安心したというのも納得ですね〕
下手をすると、長になる話を断られるかもしれない。そう考えていた者も一定数いたのだろう。その不安が消え去ったと言うのならば、この反応は当然のものと言える。
「コホンッ!さて、そういう訳で僕達は、めでたくゴブリン族の長になった!のは良いんだけど、まずはどうするかな・・・」
・・・記念すべき瞬間だというのに、この人の場合はどうもしまらない。
〔はぁ・・・やっぱり何も考えてないんですか?〕
(うっ、すいません・・・)
カルメラ様が話に詰まって慌て始めた、その時だった。
「ならば、新たなゴブリンの長よ!1つ、私の話を聞いていただけないだろうか!」
壇の下―――我々の目の前にいる酒呑童子が、今までにない程畏まって頼み事をしてきた。
(どうしたんだろう? あんなに改まって)
〔とりあえず彼女の話を聞いてみましょう。あ、なるべく尊大に振る舞ってくださいね?〕
(合点!)
「聞こう!話とはなんだ?」
「かたじけない!話とは、我らの処遇についてだ」
「「処遇?」」
「図々しいことは承知の上で、お頼み申し上げる。どうか・・・どうか我らを、カルメラ様とミカエル様の麾下に入れていただきたい!」
酒吞童子がそう言った瞬間、鬼達、全オーガ達が一斉に頭を下げてきた。
本作をご覧いただき、誠にありがとうございます!
先日は更新がストップしてしまい、大変申し訳ありません!
風邪には強い方だと思っていたのですが、慢心していたようです・・・
そしてもう1つ、最近更新するお話の内容が短くなってきていることにも、お詫びを申し上げます。
スランプを脱却し、必ず以前のような文章を書けるようになりますので、皆さまどうか、温かい目で見守っていただけると幸いです。
このお話をより良いものとするため、皆様に楽しい時間をご提供するため、皆様のご感想をいただけると幸いです。
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