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最強AIの異世界転移  作者: 蓬莱
第1章 ゴブリンを救済せよ!
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第20話 褒め過ぎは、災いの元?

茨木の活躍により、何とかその場は収まった。


「ありがとう、茨木さん!」

「っ!・・・ふんっ」


カルメラ様(マスター)が満面の笑みで御礼を言うが、茨木はそっぽを向いてしまう。一見冷たくあしらっているようだが、彼女の顔は少し赤くなっていた。


「さてと。まずは負傷者の手当だね!()達も一緒に来て!仲間を助けないとでしょ?」

「無論だ。茨木に星熊、一緒に行ってやってくれ」

『御意!!』

「酒吞は一緒に来ないの?」

「あたしは回復魔法も、回復系のスキルも使えないんだ。一緒に行っても邪魔になる。()(金童子)と一緒に待ってるよ」


(・・・仲間には普通に頼れるんじゃん。ゴブリン達(村の皆)にもそういう接し方をすれば良かったのに)


ボソッとカルメラ様(マスター)が呟いたのが聞こえた。


「どうした?」

「何でも無いよ~だ」


少しむくれるカルメラ様(マスター)だったが、すぐに真面目な顔になり、地面に手を(かざ)す。すると空間が歪み、熊童子と虎熊童子の2人が『時空牢獄』から解放され、酒呑童子の前に寝かされる。


「熊!」

「それに虎熊も!」

「熊さん!虎さん!」


仲間の帰還に、鬼達は歓喜する。ボロボロで未だ目を覚まさないが、ワタシが施した治療のお陰で命に別状はない。


「良いのか? 人質を解放しちまって」

「人質を取る知恵なんか無いよ」

「・・・そうかよ」


それだけ言ってカルメラ様(マスター)は、茨木と星熊を連れて村まで転移する(飛ぶ)


―――村では既に怪我人の治療が始まっていた。ユグノーを中心として、他者を回復する術を持つ者達が、敵味方を問わずに治療を行っていた。


「ユグノー君!」

「っ!カルメラ殿!よくぞご無事で!」


呼び掛けには答えるが、ユグノーは治療の手を止めない。負傷者の数が多すぎて、止まっている暇などないのだ。


「負傷者はどのくらいいるの?」

「ざっと見積もっても、両軍合わせて7000人。取り敢えず全員ここまで運ばせてますが、とにかく数が多すぎて対処しきれないんです!」


治療が行える者は、ゴブリン側に100名、オーガ側には何と、茨木以外1人もいなかった。たった100名で7000人の治療となると、恐らく手遅れとなる者が現れるだろう。


「茨木、1つ聞きます」

「何だ?」

「あなた、広範囲に『回復魔法』を発動できますか?」

「丁度今、それをやろうとしている所だ。星熊、『怪力』で強化を頼む」

「おう!」

「では、ワタシも手を貸します。少し魔法をいじらせてもらっても?」

「どうするつもりだ?」

「広範囲の回復は効率が良いですが、効果が分散して対象ごとの治癒力が下がります。見た所、あなた達のそれでは足りない者もいるようなので、広範囲且つ対象1人1人に回復を施す物に改良します」

「僕の魔素も送って!多分、魔素不足で動けない人もいるから!」

「そんなことができれば良いが、現実は―――」

「既に計算は完了してます。時間がありません。早く回復を!」

「お願い!」

『し、承知!』


茨木と星熊が広範囲の『回復魔法』を発動すると、ワタシはすかさず魔法に干渉し、負傷者1人1人を治癒するよう改造を施す。さらにカルメラ様(マスター)から譲り受けた魔素も詰め込み、魔素不足も補えるようにしておいた。


「こ、これは!」

「マジかよ、今の一瞬で術式を組み換えたのか!?」

「驚くのは後!」

「すぐ飛ばしてください!」

「わ、わかった!」


茨木の掌の上から、緑色に輝く光が幾千も飛び立ち、重症な者から優先して負傷者の元へ向かう。『怪力』が付与された回復魔法の治癒力は見事な物で、槍で腹を貫かれた者も、(あばら)を折られて肺が潰れていた者も、みるみる内に治していく。中にはカルメラ様(マスター)の予測通り、大怪我だけでなく魔素不足に陥っている者もいたが、一緒に魔素を送ったお陰でそちらも解決している。僅か数刻の間に、負傷者全員の治療が完了した。


「よし!治療完了だね!」

「ふぅ、何とか全員助けることができました。あなたの広範囲『回復魔法』のお陰です。感謝します、茨木」

「いや、その・・・私としては、もっと時間も労力も掛かると思ってて、それが、こんな一瞬で終わって、正直かなり混乱してるんだが?」

「俺もだ。そもそも、何であんな簡単に魔法に干渉できるんだ?」

「・・・? 普通のことじゃないですか?」

『普通なわけあるか!!』


2人、否、カルメラ様(マスター)も含めて3人同時にツッコまれてしまった。そんなにおかしなことを言っただろうか?


「な、何と・・・!」

「凄い!流石だね、あの2人は」

「いやいや、うちの副将もすげーだろ!?」

「あんな広範囲の『回復魔法』、副将にしか使えないでしょう?」

ガァッ(そうだ)ガァッ(そうだ)!」

「それを言うならミカエルさんは・・・」

「いやいや、頭領と副将は・・・」


見ると、近くで様子を見守っていた者達が、何故かそれぞれの長自慢を始めている。特にワタシと茨木、どちらが知恵者かの議論が白熱していた。ゴブリンとオーガ。さっきまで殺し合いをしてたとはとても思えない。それほどまでに、見ていて心が温まる時間だった。

・・・でも、恥ずかしいから止めて欲しい!


「ミカエル殿!拘束でもなんでも良いから、取り敢えず話を進めてくれ!」


茨木が顔を真っ赤にしながら、ワタシに懇願してくる。茨木も恥ずかしさに耐えられなくなったようだ。


「任せなさい茨木(我が同志)!全員聞きなさい!まずロード含め、オーガは全員拘束!ゴブリン(あなた)達が引いて、広場まで連れて行くように!鬼達は、ワタシとカルメラ様(マスター)が直接連れて行きます!」

「わかった。ミカエル殿に従おう」

「あれ~? 良いの、2人共? 折角2人が真っ赤になるくらい誉め散らかしてくれてるんだから、もうちょっと聞いてあげても―――」

(やかま)しい!!!!』

「ウゲッ!!」


どっかのアホがニヤニヤしながら口出ししてきたが、茨木と共に脳天をぶん殴って黙らせる。先程の倍以上の大きなタンコブができたようだが、自業自得だ。


カルメラ様(このアホ)が言ったことは無視して、今すぐ取り掛かりなさい!」

「ミカエル殿の言った通りだ!さっさと行くぞ!」

『は、はぃぃぃぃぃぃぃ!』


両陣営の者達が大慌てで動き始める。ゴブリン達が2人1組となり、1組で1人ずつ、オーガを広場へと連行し始めた。


「・・・少し、刺激が強すぎましたかね?」

「いや、このくらいで丁度良いだろう」

「も、もうちょっと、僕には、手加減を―――」

「ああ、こっちは刺激が足りませんでしたか」

「ひぃっ!!もう充分です!」

「―――まぁいいでしょう。それよりも、我々も広場へ行かないといけませんね」

「そ、そうだね!酒吞達も連れてくるよ!」


カルメラ様(マスター)がそそくさと転移してしまう。何やら、ワタシのことを恐れているような・・・?


「さっきの一撃が余程効いているようだな」

「ふむ。まぁ、懲りたと言うなら、今回は許してあげますかね。あなた達2人はワタシが連れていきましょう。ついて来てください」

「わかった。星熊!」

「お、おう!!?」

「・・・どうした? そんなに怯えて」

「な、何でもねぇ。それより、広場に行くんだったな」

「ああ、ミカエル殿が連れていくそうだ」

「そ、そうか。じゃあ頼むは」

「ええ、こっちです」


星熊の態度は気になりつつも、ワタシは2人を広場まで連れて行った。

かなり短いですが、内容の区切り的に考えて、今話はここまでとさせていただきます。

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