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最強AIの異世界転移  作者: 蓬莱
第1章 ゴブリンを救済せよ!
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第11話 僕がコイツを、君がアイツらを

今回はカルメラ視点です

鬼達の想定以上の強敵っぷりに、僕は内心焦りを覚えていた。


「行け!怨念ども!」

「カカカカカカ!」


酒吞童子が、青白い炎を纏った骸骨を召喚してきた!


(な、何なのあれ!?)

〔『酒吞童子』の称号の力。その内の1つ―――『鬼火』です。殺した相手の魂を捕らえ、青白く燃える怨念として使役する力です。怨念には呪いが付与されているため、決して直接触れないでください〕


え、えげつない・・・!

でも、そんなこと言ってる場合じゃない!


「カカカカカカ!」


不気味な声を上げながら、怨念達が迫ってくる。僕は剣に魔素を纏わせて、怨念達を切っていく。

・・・って、おかしいな。この攻撃、酒吞童子(アイツ)の攻撃にしては弱すぎる。


(何か裏が―――っ!)

〔上です!〕


背後から強烈な殺気を感じた直後、ミカエルちゃんの声が聞こえてきた。咄嗟にその場から離脱すると、またしても茨が空中から生えていた。

・・・危なかった。さっきの怨念達は陽動で、本命はこっちだったんだ。


(この茨、僕1人じゃ全然対応できない!どこから生えてくるかすらわかんないし!)

〔茨木童子は、指定した座標から直接茨を生やせるようです。例えそこが空中であっても、『茨木童子』の力ならば茨を生やすことが可能です。ワタシのように、時空間の魔素の流れを完全に把握できなければ、発動にすら気付かず串刺しでしょうね〕


それはつまり、気付いた時には目の前に、爆発直前の爆弾があるようなものだ。殺気に気付いた時には、茨が生えてくる直前。殺気に気付いてから動くのでは間に合わない。


(『時空防壁(ファイアーウォール)』でどうにかならない?)

〔無理です。あれは元からある何かを、どこか別の場所から、カルメラ様(マスター)の周辺へ転送するのを防ぐ物です。この茨は、指定された場所に()から創造される物。『時空防壁(ファイアーウォール)』の対象外です・・・〕


そう言うミカエルちゃんは、少し落ち込んでいるように見える。でも僕としては、茨の発動がわかるだけでも大助かりだ。正直言って、ミカエルちゃんがいなかったら詰んでたかもしれない。


〔かもではなく、確実にです。あの茨は、敵の体内に捩じ込むこともできますから。既に何度か、カルメラ様(マスター)の体内から茨を生やそうとしていましたよ?〕

(え、そうなの!?)


あんな可愛い顔してそんなこと考えてたなんて・・・


〔また来ます!〕

「くっ!」


怨念達は、尚もこちらに飛んできてる。1体1体は大した強さじゃないけど、数百を超える怨念の群れを捌くのは中々骨が折れる。隙を突いて攻撃に転じたくても、その度に茨が生えてきて、攻撃ができない!


(・・・あれ? 何か僕、同じ方向に逃げてない?)

〔マズいですね。誘い込まれています〕

(やっぱりか)


気配を探ってみると、避けて進んでいる方向に星熊童子がいる。加えていえば、酒吞童子と茨木童子も少しずつ間合いを詰めてきていた。どうやら挟撃するつもりらしい。


(・・・よし、そうとわかれば利用しちゃおう!)

〔え? そんなこと可能なのですか?〕

(ふっふっふ。まだまだだね、ミカエルちゃん)


ミカエルちゃんは凄く頭が良いけど、こういう白兵戦に関してはまだまだ経験が少ない。だから相棒として、困った時の対処法をしっかり教えてあげないとね!


(よく見ててね!)

〔は、はい!〕


鬼達の作戦に気付いていないフリをして、僕は怨念達を捌きながら、隙を突こうとした瞬間生えてくる茨を避け続ける。すると、5秒も経たない内に、星熊童子が動いた。


(拳にエネルギーが集まってる!今度は何をするつもりなの?)

〔単純に凄まじい剛力と超加速、雷の力、さらには敵の防御を問答無用で破壊する力が込められています。『防御貫通の必殺の一撃』という物を放とうとしているのでしょう。カルメラ様(マスター)の『蒼盾』にもひびを入れられそうです〕

(へえ、それなら・・・)


鬼達の思い通り、僕はまんまと星熊童子の目の前まで誘い込まれる。その瞬間、今までじわじわと距離を詰めていた酒呑童子と茨木童子が、一気に距離を詰めてきた。


「掛かったな!『瞬雷破怪』!」


星熊童子が凄まじい速度で拳を振るってくる。さらに―――


「茨鬼戦法・一ノ型『茨突き』」

「『縮地・居合抜き』」


僕を逃がすまいと、茨木童子と酒吞童子も迫ってくる。完全な挟み撃ち。普通に避けようとしても、確実に誰かの攻撃が当たる。でも、わかっていればどうにかなる。


「『公正な裁き(フェア・ジャッジ)』」


僕は空間を切り裂き、3人の攻撃の軌道上に空間の裂け目を作る。それを入口として、同時に出口を3人のお腹あたりな作る。するとそれぞれの攻撃が、それを放った本人へと返っていった。


「かはっ・・・!」

「ぬぐぁ!?」

「くっ!」


結果は見ての通り。

茨木童子は自分の攻撃をお腹に食らい、さらにそこから刺が伸びて体を貫通していた。

星熊童子もお腹に拳を受けて、そのまま吹っ飛んだ。

酒呑童子は・・・彼女だけは、直前に僕の意図に気付いて、自分で自分を斬ることはなかった。―――でも、想定内だ。


(逃がさない!)

「っ!?」


僕は即追撃する。追撃されたのが予想外だったのか、酒呑童子はかなり驚いた様子で硬直する。戦場でそれは、命取りだ!


「『一点突破(ストレート)』!」


『絶対切断』と『時空支配』を付与しただけの、ただただまっすぐな剣による一撃。反応が遅れた酒呑童子は、『一点突破(ストレート)』をどてっ腹に食らって吐血した。


〔さすがですね、カルメラ様(マスター)!〕

(ふふん!そりゃあ僕は最強だからね!でも、まだ終わってない。気を引き締めるよ!)

〔はい!〕


「かはっ、がはっ・・・やって、くれるじゃ、ないか・・・まさか、あたしらの作戦に気付いて、逆に利用してくるとはな」


そう言いながら、酒吞童子は立ち上がる。見ると、どてっ腹に空いた穴が、既に塞がっていた。


「―――『高速再生』か」

「いや、そのさらに上の『超速再生』さ」


『再生』は、魔素を消費して肉体の損傷を治すスキル。上位の魔物や魔人は、大抵は『再生』或いはその上位のスキルを持ってる。でも、『超速再生』にまで至ってるのは見たことがない。


カルメラ様(マスター)、あれを!〕

(っ!)


他の2人も、既に傷が完治している。アイツらも『超速再生』持ちか。


「でも、いずれは魔素が尽きるはず。体力だって無限じゃない!」

「それまでお前が持つのか?」


今度はどこかから瓢箪(ひょうたん)取り出して、その中身を飲み始めた。


〔マズい!今すぐ止めてください!〕

(え? 何で―――)

〔早く!〕

(が、合点!)


僕は酒呑童子に接近し、剣を振り抜いた。でも、躱されてしまった。


(さっきより速度が上がってる!?)

〔『酒呑童子』は酒を操り、酒を飲むことで自身を超強化できます。そしてあの瓢箪は、『酒吞童子』を持つ者のみが召喚できる『酒豪瓢』。術者の力を一切使わず、文字通り無限に酒を湧かせることができます〕


・・・ってことはアイツ、無限に自分を強化できるってことじゃん!


〔一度強化を発動すると、その力を体に馴染ませるまで、強化が使えないという弱点がありますが・・・〕

(それがどのくらいの時間かわかんないし、体力はともかく、魔素切れなんて待ってらんない!)


強化された酒吞童子が、再び斬りかかってくる。さっきよりも一撃が速く、重くなっている!


「うぐっ・・・!」

「どうした? さっきは涼しい顔して、あたしの一太刀を受け止めてなかったか?」


酒吞童子の攻撃は激しさを増していく。


(っ!ヤバい!)


咄嗟に危機を感じて上へ飛んだ直後、僕の真下の地面が大爆発を起こした。


「クソっ!何でバレてんだ!?」

(あっぶなぁ・・・!)

〔申し訳ありません!反応が遅れました・・・!〕

(大丈夫!それより、あれは何なの?)

(称号『星熊童子』の力です。大地を支配し、自在に形を変えることができます。例えば今のは、地中に水蒸気の溜まり場を作り、水蒸気爆発を起こしたようですね)


水蒸気爆発?はわからないけど、大地の支配ってのがヤバそうなことはわかる。


「よそ見すんな!」

「してない!」


跳躍してきた酒吞童子の一撃を、僕は剣で受け止める。そのまま2人で切り結ぶ流れになってしまった。酒を飲んだ酒吞童子が強すぎて、これじゃあ茨木童子と星熊童子に対応しきれない!


〔ならば、2人はワタシが引き受けます!〕

(えっ!?)

「『転送』」

〔『時空防壁(ファイアーウォール)』!〕

「っ!ちぃっ!」


早速茨木童子が何か仕掛けてきたけど、ミカエルちゃんがあっさり止めてみせた。


「だったら叩き落としてやるぜ!『星鈍重怪』!」

〔させません!『怪力』発動。『星鈍重怪・反』!〕

「なっ!? 搔き消されただと!?」


星熊童子の攻撃まで止めてみせた。

・・・すごい。あの2人だって決して弱い訳じゃないのに。


〔恐らく、ワタシのサポートがあっても、カルメラ様(マスター)1人でこの3人の攻撃を捌き、撃破するのは無理があるでしょう。しかし、カルメラ様(マスター)が酒呑童子1人に注力し、他2人をワタシが引き受ければ、勝機はあります〕

(でもそれだと、ミカエルちゃんは1人で2人も倒さないといけないんだよ? それに、結局アイツらが狙ってくるのは僕なんだよ?)

〔そこは問題ありません。それに・・・酒呑童子は今の時点で、他の2人が束になっても勝てない程の力を持っています。これ以上酒を飲ませないためにはカルメラ様(マスター)が酒呑童子に注力しなければなりません。茨木か星熊、どちらか1人でも加勢に入ったら、勝利は絶望的です。ワタシが止める他ありません!〕

(ミカエルちゃん・・・)


ミカエルちゃんから、恐怖が伝わってくる。ミカエルちゃん僕と違って、自由に動かせて、戦いに使える体が無い。だからスキルの力だけで、鬼を2人も倒さないといけない。怖くて当然だ。それでも、不甲斐ない僕のことを思って、勇気を振り絞ってそう言ってくれたんだと、すぐにわかった。

・・・ったく、何が『僕は最強』だ。簡単に調子に乗って、相棒を不安にさせて。後で修行のやり直しだ。


(・・・わかった、2人は任せる!でもその前に、酒吞童子の持ってる力、全部教えて!)

〔了解!〕


瞬間、僕の頭に酒吞童子の情報が流れ込んでくる・・・!


(ありがとう!酒呑童子は絶対倒すから、そっちはよろしくね!)

〔お任せを!〕


僕は、茨木童子と星熊童子に向けていた意識を閉じて、酒呑童子のみに当てる。今まで以上に、酒呑童子の動きが鮮明に見える。相手はさっきよりも速くなっているけど、これならいける!


「はあっ!」

「っ!? 何だ!? 急にキレが増した!?」

「まあね。色々あったんだよ」

「だが、そんなにあたしばっか見てて良いのか? こっちは3人だぞ?」


酒呑童子の言う通り、敵は3人いる。でも、茨木童子と星熊童子はミカエルちゃんに任せた。だから、そっちの方は無視する。


〔『蒼き守護騎士(ブルー・ガーディアン)』!〕


頭の中にミカエルちゃんの声が響いた直後、何か巨大なエネルギーのような物がせき止められたのを感じた。


「茨木と星熊の攻撃を、ノールックで!?」

「隙あり!」

「ぐがっ!」


僕は隙を突いて剣を振り下ろし、それを『地獄門』で受け止めた酒吞童子を地上へ叩き落とす。もの凄い速度で地上に激突したことで、酒吞童子が落下した場所に巨大なクレーターができた。


(この戦い、必ず勝つよ!コイツらは、絶対に村へは行かせない!)

〔はい!〕


ミカエルちゃんと背中合わせで戦っているような感覚をおぼえながら、僕は地上に落ちた酒吞童子の下へと突撃した。

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