いつも進展は突然に。
僕には友達がたくさんいる。自慢である。将来一緒に暮らしたいとまで思える親友がいる。自慢である。高校一年生の4月末現時点、恋愛は3回敗北している。不幸自慢である。
ここまでの道のり15年。まあ普通の人生を歩めているんじゃないだろうか。そんなところでこの僕、薄野佐久間には最近気になっている人がいる。え?3回も負けて懲りないのかって?...まあ人の感情は難しいもので普通にそういう人間だと思ってくれ。
気になっている人というのは窓側の後ろから二番目の彼女。この上なくうるさく、僕が見る限りではいつも元気だ。気になっているといってもまだ話したことはなく、休み時間に楽しそうに話しているところを少し見るくらいだ。言葉にするとキモいのでもうやめようと思う。
昼休み、自販機の前。僕は水分を家から持ってくることを忘れたことに気づき、もうすぐなくなる今月分のお小遣いに思いを巡らせながら120円のお茶を選ぶ。
「そんなに渋るなら水買えばいいのに」
「...へ?」
僕が気になっている彼女、白露天音とのファーストコンタクト。まずいぞ。間抜けな声が出てしまった。
「だってさー、お金やばいんでしょ?だったら10円安い水選ばない?ふつーさ」
「財布の中身は危ういが、それはそうとして僕は10円だしてお茶を買う派なんだよ」
「マイノリティだねー」
と、言いながら彼女は180円のコーラを選ぶ。富豪だ。
「あんまり意味はない。逆張り精神があるのは若い人間の性だよ」
「言ってて恥ずかしくないの?」
「マジョリティよりも住み心地がよくてね」
「言い方変えただけじゃん」
僕は少しの笑いをお茶とともに零す。彼女は僕に失態を取り返す暇を与えずに続ける。
「同じクラスだよね。そろそろ男子と絡もうと思ってたんだー」
「わざわざ自販機まで僕を追ってきたの?」
「違うよー!友達に彼氏ができたんだよー。これからはそっちとお昼を食べるって言うから一人寂しくせめて中庭で食べようかなって」
「思ったよりネガティブな理由だったから教室に逃げようかな」
「じゃあまたねー。ラインだけ交換しとこ!」
調子に乗って下手なことを言ったせいで一緒に昼ごはんを食べるというイベントを逃した自分を悔いつつ、いきなりのライン交換というイベントの発生に歓喜しながら教室に戻った。