短冊草
坊やの父はとても勇敢な軍人で、坊やは憧れていた。
坊やの憧れの程は、父が亡くなる前日も「大きくなったらお父ちゃんの様な立派な人になるんだ」と坊やの母に語る程であった。
しかし、そんな坊やの父はこの前の戦で命を落とした。
坊やは父が亡くなって一週間経った時に父が戦死したことを知らされたが、まだ幼い坊やには理解できないことで、坊やの母がそのことを知ると、忽ちその場で泣き崩れ、坊やが「お母さん何故泣いているの」と言うと、坊やの母は「お父ちゃんはもう此処には居ないんだ。とっても遠いとこにいっちゃったんだ」と悲しみながら答えた。
坊やはあまりお母さんが何を言っているのか分からなかったが、もうお父さんに会えないことを理解すると坊やも泣き崩れた。
坊やの祖母が息子の戦死を知り、坊やの家に駆けつけた。そこで、泣き叫んでいる坊やに「お父ちゃんはね戦場で立派に戦ったんだよ」と伝えた。
しばらく経つと坊やは泣き止み、小さな声で「もうお父ちゃんには会えないんだ」と呟いた。
祖母は何か思いついたのか「今日は七月七日、何の日か知ってるかい」と坊やに聞くと、「知らない」と小さな声で答えた。祖母は「今日は七夕っていう日で、願いことを短冊に書いて笹に吊るすと願いが叶うって言われているんだよ」と坊やに伝えた。
坊やは少し考えて鉛筆を持ち、短冊を探し始める。ところが、短冊どころか紙ひとつ見つからない。すると、坊やは突然家を飛び出した。
慌てて、母と祖母が追いかけると、坊やは草を一枚ちぎり、鉛筆で何かを草に書き始めた。祖母は「何しているんだい」と尋ねると、坊やは「お願い事を書いてるの」と答えた。
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その後、坊やは笹に願い事を書いた草を吊るした。坊やの書いたお願い事は何かは分からないが、微笑む様な夜空が坊やをどこか温かい弱い明かりで照らした。
中学時代に書いたものです。稚拙だとは思いますが、このときならではの感性もあったのではないかと思います。