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D.G  作者: チコ=ミスティーズ
第2章 「友達」
23/23

23話 「合流」

 二人が目にしたのはどんでもなく痩せ細ったミイラに等しい男だった。

壁に寄りかかって、彼からは尋常じゃないほどの悪臭を放っていた。

しかし、彼はまだ息をしていた。これでは近寄ることもできない。

ベールはバッグの中から食料を取り出し、その男の脇に目掛けて下から優しく投げ出した。

上手く男の右手あたりに止める事が出来た。

 食欲が失せていなければいいが、それよりも食べる程の気力があるかどうか。

おそらく彼もガレスによって被害を受けた人であろう。そう勘ぐったベールは次に彼に近づける方法を考える。

その場を見渡すが彼女の視界では暗くてまともに物を判別することが出来なかった。


「ん?あれ、ワインじゃねぇか?」


「え?」

 フライヤが何かを見つけてベールの腕を掴んでその場所を導いてくれた。

さりげなかったが彼女はこの状況に顔を赤らめる。ジャックにもされたことが無かったから余計にドキドキが止まらなかった。

彼の言うとおり、そこにおいてあったのは大量のワインの瓶と均等に置かれた樽の数々だった。


「ワインの香りで臭いなんとかなんねぇかな…」

 そう言っていくつかのワイン瓶入りの箱を引っ張り出してミイラ男の部屋へ持っていった。

やはり、ミイラ男は1ミリも動けていなかった。もはや息をする以外動かす気力がなかったのだ。

今命を断ってもおかしくない、急いで二人は瓶を取り出す。

そしてお互い頷いて、瓶を壁に打ち付けて割ったり、ヒビを入れて周りの床や壁にワインをぶちまけた。

数十本割ったところでマスカットの香りがその部屋に充満し、二人はようやく彼の近くへ身体を寄せる事が出来た。


「大丈夫ですか?」

 多少悪臭は残っているが、彼には失礼だがこの程度なら数分耐えられる。先ほど投げ渡した食料の袋を開けて、

彼の若干開いた口に軽く押し込める。ワインの栓をナイフでこじ開けて、零しつつも口の中へ流しいれる。

どうやら飲み込む力はあるようだ。必死にワインの液体で柔らかくなった食料を飲み込んで身体の中へ取り入れる。

あまりに久方ぶりだったのか、彼の目は涙で潤っていた。

ベールはそれに構わずある提案を投げる。


「身体にワインを掛けても大丈夫ですか?」


「え?」

 それにフライヤが聞き返した。男はゆっくりと頷いて肯定の意思を確認した。

すぐにワイン瓶を取り出してナイフで栓を抜くと、ためらいなく男の全身にワインを振り掛ける。


「フライヤさん、一緒に彼を部屋の外に出してくれますか?」


「あぁ、分かった」

 戸惑うことなく彼女のお願いを聞く。男を担いで牢屋の外へ出し、少し開けた所の真ん中あたりまで彼を運ぶ。

そこの手前にベールは専用の棒で何かを書き始める。円を書き、直線、曲線、ありとあらゆる線を引いて、

出来上がったのは紋章のようなものだった。再び男をその紋章の真ん中に運び入れると二人は少しだけ距離を取って、

ベールは唱え始める。すると彼が少しずつ浮き始め、貧弱過ぎる身体が嘘のように見る見ると健康体のように立ち上がる。

それに男も驚く表情を見せる。


「身体は動かせますか?」

 そういうと男は全身を動かし始める。小鹿のようにぎこちない感じはあったがどうやら歩けるようだ。

3人は見つからない場所に移動して、彼の素性を聞くことにした。


「私はベール。ある依頼でこの世界に訪れた死神です。そして彼がフライヤさん、

 一緒に戦ってくれるお仲間さんです。私達の仕事を遂行している内にとんでもない事が起きて居るのに気づいて、

 その元凶がこの屋敷の主、ガレスの可能性があるのです。そのためにこの屋敷に忍び込んだ次第です。

 そこであなたが倒れこんでいるのに気付いた。さっき、魔法で貴方の身体を一時的に軽くしているので、

 今の体力でも少し力を入れれば声を出すことは出来るはずです」

 先ほど掛けたのは闇の反重力魔法で範囲内の者の重力を軽くする魔法だったのだ。

予想外の重力で動きを制御しづらくするのが本来の使い方なのだが、たまたま今のような運用を思い出したのだ。

男は口をもごもごさせ、努力している様子を見せる。声の発し方を思い出したのか、ついに言葉を口に出す事が出来た。


「俺、は…ジーク」


「なっ!?」

 その名前にフライヤは驚いた。彼女はその様子に顔をそちらに向けて聞き返した。


「ベールが気絶してる間にジャックから思い出話をしてくれたんだ。

 その幼い頃、ジャックを拾ってくれた恩人の名だ」

 それを聞いてジークの方へ視線を戻した。彼がジャックの命の恩人と聞いて、自分の行いが一番正しかったと感じた。

彼はまだ慣れない口を動かして自分の生い立ちを話した。


「俺は、ジャックの生き甲斐を作るためにアイツの元で働かせるようにした。だが奴はいい人間を装って、

 色んな人を人生ごと奪い取ってこき使って居やがったんだ。俺も自身が奴隷商人だっていうのを利用して、

 言うとおりにしなければジャックを殺すと追い詰められた。それから数年が経った。

 最初はそれなりに食いもんは貰っていたさ、だが必要無くなったのか、2ヶ月前から一切渡されなくなった」

 聞けば聞く程、ガレスの下劣で非道な行いにベールの心に怒りがこみ上げてくる。拳を握り締めて、

あまりの力に手を振るわせる様子を見せる。

フライヤもその様子を見て真剣な目つきで痩せ細ったジークの姿を見つめなおす。

暗殺を試みようと考えたが、一度でもバレてしまえば愛弟子に等しいジャックが殺される。

リスクがあまりに高すぎる上にガレスにとってはジャックを殺めるなど息をするようなレベルで可能だ。

状況が割りに合って無さ過ぎるため、一度も決断することが出来なかった。

そんな自分を強く責めるように言葉を発し、身体をなだれ崩れていく。

フライヤもガレスに対して怒りが湧き上がってきた。ジークのそばまで歩み寄って、立ったまま彼に向けてこう言った。


「ジークさん。悪いがジャックはもう人間じゃなくなってる」


「っ!フライヤさんっ!」

 今まさに自身も苦しい状況の中、それはあまりに無慈悲な一言だった。ベールもそれに止めるように彼の名前を呼ぶ。

だが、男ならその現実と向き合わなければならない。ましてやそれが愛する者であるのならば。

彼は顔を地につけたまま少しの間無言だった。でも、何か思い出したかのような感じでフライヤにある事を問いかける。


「あいつは…ジャックはまだ、自我があんのか?」


「あぁ…。もし、アンタのプライドが許せるんなら」


「……?」


「俺達にその想い、託してくれねぇか?」

 いつの間にか、フライヤも拳を握り締めていた。もし、俺が彼だったら、同じように挫折していたかもしれない。

チコがもし、どうしようもない事態に陥っていた時、何も出来ず助けられない状況を考えたら、俺はきっと一生後悔する。

だとしても俺はプライドを捨てて誰かに助けを乞うだろう。それで愛する者の心が変わってしまったとしても、

一度でも愛した人の命は助けたい。たとえ、その対価が自分の命だったとしても。

ジークも葛藤したと思う。でも出てきたのは彼の思い通りの答えだった。


「お願いだ…ジャッグをっ…助げてぐれぇっ!」

 出てきた野太い答えはフライヤの心、そして怒りの感情を突き動かす。

きっと彼が人生で一番、自分のプライドを押し殺した言葉だったはずだ。

自分自身の限界を知り、愛する者の危機的状況を知り、それでもどうしようも出来ない自分が出来る事。

それは先ほど自分に置き換えて言った通り、誰かに助けを乞い、想いを託す事だった。

ベールも彼の意思を重んじて鎌を呼び出した。


「ベール…」


「うん。私達が終わらせないと行けないです…」

 二人が薄暗い空間の中、横に並んで地上へ続く階段を見つめる。


「俺は彼のプライドを代わりにぶつけるため」


「私はジャックの生き様を救うため」

 お互い体勢を構えて、ベールとフライヤが強い意志を同時に口にした。


「「ガレスを討つ/潰す」」




 一方その頃、一直線に屋敷へと走り抜けるチコとシエラ。

途中、残党が銃を撃ち込んでくるがこれを軽く回避して流れるように打ち倒して行く。

まだ少数なら体力的消耗はほとんど無いので助かっている。ところどころ倒れているギャング達の数を見ていると、

ベール達の体力も気がかりになってくる。


「大分戦っているようじゃな…」


「そうですね…それに相手は霊障石を持ってます。つまり、同じような量のレイスを今度は相手しなきゃ行けない…」

 霊障石は小型ではあるもののレイスを呼び覚ます力を持っていると資料で見たことがある。

それを戦い抜いてきたベール達二人ではさすがに体力が持たないだろう。

幸いにもターゲットはギャングの力でなんとかなると踏んでいて、レイスを未だ呼び覚ましてない事だ。

駒の力不足に気付いて、レイスを召喚されるまでには彼女達と合流をしなければならない。


「何だあいつら!?」

 場所を変えればまた残党が立ち向かってくる。しかし、どの道残党ごときに足を止められる二人ではなかった。

横を瞬時に通り抜けて、ギャング達を斬り倒したり、

鎖で身体を縛ってそのまま他のギャング達にぶつけていって集団を打ちのめしていく。


「それにしてもこの1年ちょっとで随分と成長しておるな。チコ」


「私もただ死神稼業しているわけではないですからね。それに」


「それに?」


「今はフライヤがいる。昔のように守られてばかりじゃなく、これからは私も一緒に彼を守って行くと決めたんです

 だから私は毎日、今という自分を越えるように努力し続けて行く」

 その眼差しから、決してお世辞で言った訳ではないと伝わってきた。

シエラも彼女の言葉にフッと軽く笑い、彼女の強い意志を褒めてあげた。


「おぬしはまだ強くなれるはずじゃ。確証は無くとも分かる」


「絶対に守り抜くから…フラ」

 その様子にシエラは何かを思い出し、彼女に隠すようにして思い悩んだ。

そこに新たな残党達が倒れた仲間を車に回収していた。二人の接近に気付くとすぐに銃を構えて発砲を始める。

チコは魔法で水を呼び起こし、銃弾の速度を抑えながら接近する。

ある程度距離を詰めるとその水の壁を複数の棘へと形を変化させてギャング達に飛ばした。


「そっちが銃ならこっちは水の弾よっ!」

 律儀と言わんばかりにニードルの中には1発ずつ銃弾が入っていた。綺麗にギャング達にヒットして次々と撃ち倒して行く。

シエラは銃弾を回避するどころか、そのまま突き進む。


「そんな撃ち方じゃ避けるまでも無いわ!!」

 シエラは打つという言葉の意味を変えて、拳でギャングの腹を強打する。怯んだところを双剣を素早く地面に突き刺し、

身体を横に一回転した後、回し蹴りを繰り出す。

男が吹き飛んだ先には他の残党達が居て、見事に巻き添いを誘う事が出来た。

双剣を手元に戻して再び二人は屋敷へ続く道を走り出す。ようやく、屋敷へ続く1本道の坂へ辿りついた二人。

そこでシエラの端末に無線が入る。彼女はすぐに取り出して通話に応答した。


「どうした?」


「シエラ様、どうやらベールの通信が途絶えました!おそらく地下に潜入したようです!」


「通信が途絶えたか」

 その言葉にチコはシエラの持つ端末に視線を向ける。二人はベールが建物の中に入ったのだろうと察した。

本来のターゲットであるレイスの件を尋ねると屋敷の庭でギャング達と一人で交戦していると伝えられた。

現状なら放置してもいいのだが、霊障石の影響かつベールの知り合いとなれば話は変わってくる。

未だ急ぎである状況に変わりは無いようだ。返事をかえして、引き続き偵察を続けるよう指示を出して通話を解除した。


「おそらく、ベールに無線を送るのはやめた方がいいですね」


「そうじゃな。ひとまずベールの仲間であるレイスはギャング達と単身で戦っているらしい」

 端末をしまいながらチコに通話内容を伝える。一人で戦っていることに彼女は大きく驚いた。


「一人でっ?!」


「うむ。じゃが奴はタンカーじゃ。己の弱点も理解しているようじゃしのう。

 現世の武器では弱点さえ突かれなければまともなダメージにならんはずじゃ。

 だがベールの話を聞く限り、奴も長い間攻撃を受けているようじゃ。彼の体力も限界に来てる危険性はある」

 確証はないものの、最悪の事態を考えると休む暇などない。といっても二人は今、余裕をもって休むつもりは毛頭ないのだが。

再び二人は屋敷に向かって走り出す。ベールが屋敷にいると考えれば、先にレイスであるジャックと合流をする事を目指した。




「撃ち込めぇ!!撃ち込むんだぁっ!!」

 銃声に負けぬ大声で集団のリーダーが怒号を響かせる。それに応えるように、

ギャング達はジャックに向かって無数の銃弾を打ち込んで行く。いくらダメージが無いからといっても、

長年の消耗でいい加減ヒレも限界に来ていた。


(ダメだ…まだ…!まだ耐え続けなきゃ!メリーに約束したんだ…!生き抜くって…!)

 強い気持ちで己の戦意を高ぶらせる。金属音を響かせて銃撃を耐え抜く。

時折ロケットランチャーが飛び込んでくる。それを受け止めるとさすがに耐久が間に合わない可能性があるため。

それだけは回避して消耗を抑えた。倒すにもこの人数では後ろを取られてしまう危険もあり、

銃弾も何もかも回避すれば最悪、数人がベール達に狙いをつけ、屋敷内に移動する可能性もある。

自分がレイスであり、彼女が言っていたタンカーというタイプである以上はこの身体の良さを活用するしかない。


「撃ち込んでこいよっ!このゲス野郎っ!!」

 彼の言い放つ言葉も奴らにはただの咆哮にしか聞こえていない。そんなこと分かっている。

だがジャックはガレスに対する怒りを意思表示させ続ける。無慈悲な銃撃は絶え間なく展開されていく。

数撃ちゃ勝てると思い込ませるようにわざと体を退かせる仕草を見せる。

少しでも奴らの戦力を分断させ、時間を稼がなければ。そして隙を見せ、打ち倒せれば幸運だと考えるんだ。

改めて飛んでくるロケットランチャー。これも回避して再び銃撃を耐える。これを何度も繰り返した。

しかし、知らない間にジャックはギャング達の策に溺れていた。

茂みの中に身を隠して、奇襲を狙うギャングが居たのだ。


(しまったっ!!)

 数発の銃弾が背中を打ち込まれたジャックは咄嗟に回避をして背中を取られない位置まで下がった。

しかし長年の戦いにおける消耗が響き、ダメージは相当大きかった。不意に膝をついてしまったジャック。

それを見逃すことは無かった。これは勝利の機と捉えたギャングのリーダーはより息巻いて、

彼に攻撃を続けるように声を轟かせた。


「やれぇっ!!やっちまえぇっ!!」


(くっ…!!これまでなのか…!?)

 残った体力で攻撃を絶え続ける。しかし、先ほどのダメージのせいで時間を稼ぐほどの体力がない。

前方のダメージだけでも装甲を貫かれる危険がある。窮地に立たされた現状に絶望を感じた時。

何か背後から接近してくるのが伝わってくる。


(…!!まさかっ!?)

 再びギャングが背後を取ろうというのか。

だとしても下劣で非道な奴らがこうもバレバレな気配を醸し出して奇襲を試みるだろうか。

それとも別のレイスか…だが、もはや回避する余裕は無い。

一か八か、前方を強固して背後のことは気にしないことにした。


(ごめんっ!メリーッ!)


「だぁあああああぁぁぁっ!!」

 ジャックの背中から飛び出すように宙を舞っていたのはチコだった。突然の登場にギャング達も驚きを隠せなかった。

一部のギャングが咄嗟に彼女に銃口を向けるとシエラが同じようにジャックの後ろから飛び込んで、

別のギャング達に攻撃を仕掛ける。鎖で右腕を巻きつけて、思いっきり引っ張り、銃を手から外してから、

今度は体ごと引っ張りあげて、他のギャング達の銃撃を回避しながらぶつけていく。

チコも死銃で的確に撃ち抜いていき、ジャックの援護をする。

シエラに敵達を任せている間にチコは急いで、彼に向けて水で出来た球体を体中に纏わりつけた。


「これで貴方を守りながら傷も癒えるはず。あなたがベールの友達ね?」

 突然のことに言葉が出なかったが、彼女の問いかけにハッとした後、大きく頷いた。


「良かった、もし違ってたらライセンス違反になるとこだったわ。でも余裕が無さそうだったからついね」

 彼女は微笑みかけながらそう言った。その間にも小さい傷が癒えているのが伝わってくる。

自分のヒレや手でその光景を目の当たりにするとどんどん戦意が戻ってくる。

これならまた戦える。とんでもない援護が来たものだ。ジャックにとっては奇跡と言える状況だ。

彼女の言葉を聞く限り、メリーの仲間だろうか。しかし、フライヤが居ない以上、簡単に聞き出す方法が見つからない。

だが、それは戦ってすぐに分かるはずだ。今はひとまず彼女達に付いて行くのが得策だと察した。

シエラとチコが現場にいたギャング達を痛めつけた後、ジャックと改めて合流を果たす。


「おぬしがジャックか。ベール達から聞いておる。辛かったじゃろう?」

 慰める彼女達の優しさに悲しい顔を見せる。しかし、そんな時間はない事を思い出し、すぐに顔を横に振る。


「ベールは中にいるのかしら?」

 チコの質問に彼は頷く。現状、身振り素振りだけでなんとか伝えられてて少し安心しているジャック。


「レイスと共にするというのはいささか違和感はあるが、彼が居ればこの戦いもなんとかなるじゃろう」

 自分が居れば…?ジャックは不思議そうな様子を見せる。それを察したチコは皆にない良さを教える。


「あなたもガレスという男を狙っているんでしょう?…やっぱり。

 ガレスには霊障石という石を持っている。

 それには貴方のようなレイスと呼ばれる悪霊を簡単に呼び覚ます事が出来る大変危険な代物なの。

 あなたの姿を変えたのも知っているとは思うけどそれが原因なの。

 それに、私達には戦う力はあっても耐え抜く力がない。でも貴方にはそれもある。

 あなたの耐え抜く力があれば、今回の困難も乗り越えられるはず」

 そう言ってジャックの大きな手を取ってチコは言い放つ。


「貴方の力が必要なの。長い戦いで疲れてると思うけど…もう少しだけ、一緒に戦ってくれませんか?」

 その言葉にジャックは大きく頷いた。確かに長く苦しい戦いだった、疲労も困憊と言えるところまで来てる。

でも、それが終わるというなら、その身が滅びようとも戦い抜くつもりでいる。

それに安易な考えかもしれないが、彼女達ならこの戦いにピリオドを打てると確信まで抱いている。

ジャックの反応にチコはほっとした顔をしてキリッとした眼差しで礼を言う。


「ありがとう!急いでベール達と合流してこの戦いを終わらせましょう」


「うむ。さっさと済ませるぞ」

 3人が屋敷の最上階に目をやって同じ意思を心の中で叫ぶように誓った。

この腐った戦場をここだけで終わらせ、この街に起こりうる恐怖を未然に防ぐと。

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