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2017年/短編まとめ

邂逅の曲

作者: 文崎 美生

屋根は崩れ、十字架は傾き、ガラスの散ったこんな町外れの教会に、わざわざ訪れる人間がいるとは思いもしなかった。

だからこそ、時折勝手に根城にしていたし、遮るもののない、あけっぴろげな空間に寝転がりに来ていたのに。


敷地に足を踏み入れた時、ポーン、と響いたのは教会の隅に置かれた小さなオルガンだった。

まだ、音が出るものだったのか。


調律を確かめるようにグリッサンドし、一呼吸置いて和音が続く。

入るに入れなくなった空間の外で、雲一つない晴れた空からサンサンと降り注ぐ光を浴びながら、まあ良いか、と目を閉じた。

誰だか知らないが、出くわす前に今日は此処を去ろう。

浅く息を吐き、ああ、でも、もう少しだけ、と思ってしまう。


途切れることなく、躓くことさえなく続くメロディーに耳を傾けながら懐かしさを覚え、同時に、違和感を感じた。

懐かしさ、なんてあるはずもない。

何で俺がこの曲を聞いたことがあるんだ。

……いや、違う、これは。


ハッと目を開け、慌てて中を覗き込む。

俺が中を覗き込んだのと同時に音が止み、こちらを振り向いた小さな彼女は、驚くでも怯えるでも狼狽えるでもなく、ただそっと微笑んでもう一度鍵盤に向き直る。

そうしてまた、繊細な旋律を並べ出す。


あんぐり、開いた口が塞がらない。

こんな所でこんな風に弾かれてしまっては、まるで、賛美歌のようじゃないか。

なんで、どうして。


だってそれは、俺が作った曲だ。

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