2-3:なんで魔法少女なの?英雄=勇者的なモノじゃないの?
━━お目覚めください…。
遠くの方で、呼びかけるような声が聞こえる。
何故か気だるくて、目も開きたくない。
頭の中も、霞がかったようにぼやーっとしている。
(俺…何してたんだっけ?確かバイトが終わって帰り道に……?)
━あー、新しいお仲間さんですかぁ?
━これは…!ナツナ様!
━…その方起きないんですの?
━ユキジ様もご足労を…!
働かない頭に喝を入れつつ、記憶を呼び戻していく。
遠くで聞こえていた呼び声は消え、数人の話し声が聞こえるようになった。
時折、頬を軽く叩かれるような感覚がする。
(何すんだよ…。考え事に集中できないだろうが…。)
━起きないねぇ…。
━夏那さん、それじゃあ軽すぎますの。そんなんじゃ猫も起きませんの。
━それよりもナツナ様、ユキジ様どうしてこちらへ?
━んー?ルオルフ様からぁ、新しい魔法少女が来るって…ちょっ…!ゆっちゃ……っ!
(そうだ!魔法少女……!)
バッチィィィィィィン!!!
「いってぇぇぇぇぇぇ!!?」
「ほら、起きましたの。」
思いっきり叩かれた頬を押さえながら飛び起きる。
頭の中の霞がかった感じも、一発で吹き飛んだ。
口の中に、血の鉄臭い味が広がっていく。
涙目になりながら、声がした方を睨みつけると、少しつり目の美少女が仁王立ちしていた。
その顔は何処か誇らし気だ。
その隣には、涙目になりながら頬を擦っている美少女がいる。
「うわぁ…。ほっぺた真っ赤だよぉ…凄い痛そう…。ゆっちゃんはぁ、只でさえ力持ちなんだからぁ!少し手加減しないとだめだよぉ!」
「さっさと起きないこの子がいけませんの。…まだ呆けてますの?もう一発いっときますの。」
あまりの痛さに放心していると、もう一度手を振り上げる姿が目に入った。
そして放たれる平手…。
ただの平手打ちなのに、命の危機を感じる。
咄嗟に仰け反り、平手打ちを躱す。
ヒュッ…!
「あら、躱すなんてなかなかやりますの。魔法で加速もつけた筈なのに避けられるなんて、少し悔しいですの。」
「ゆっちゃん!魔法使うなんてやり過ぎだよぉ!ゆっちゃんの力に、魔力加速なんてつけたらぁ!普通の人だったら、ポロッと首がとれちゃうんだからぁ!」
「…うまく首の皮1枚残しますの。」
唖然としながら、2人の会話を聞いていく。
どうやら、本当に命の危機だったようだ。
躱しておいて良かった。
チラリと、つり目の美少女に見られた。
その瞬間、ビクッと体が強張る。
どうやら、無事にトラウマを植え込まれたようだ。
納得いかないか、また平手打ちされるより、素直に従っておこう。
「えぇと…。ここは?」
「あ、ごめんねぇ。うちのゆっちゃんが!ここは、バルゲニア王国の王都!王城だよぉ。」
「人にモノを尋ねる前に、まずは自分の名を名乗ると良いんですの。」
「もうっ!ゆっちゃん!そういう弄れた言い方しないのぉ!普通に名前教えてーで良いでしょぉ?」
やっとの思いで絞り出した言葉は、それだけだった。
が、夏那と呼ばれていた美少女は、気にせず話しかけてくる。
逆に、雪路と呼ばれている美少女は、面白くなさそうにつっかかってくる。
どうやら、先程の平手を躱されたのが、相当悔しかったらしい。
まぁ、俺も命がかかっていたのだ。
その辺は割りきっていただきたい…。
「俺は…悠。三神悠、日本人だ。君達は…?見た所日本人ではなさそうだけど…?でも名前は日本人っぽいな。」
「私達はあなたと同じく、異世界・日本から来ましたの。」
「え!?でもその髪の色…!」
2人の少女はそれぞれ、青を基調とした白っぽい髪・オレンジを基調とした黄色っぽい髪色だった。
どう見ても、日本人のそれではない。
そして極めつけは…。
自分の肩にかかる、サラサラの髪の毛。
その色は見事な紅色だった。
「な……なんじゃこりゃぁぁぁぁぁっ!!?」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
天音りんごです。
みんなの人気者(仮)の雪路さん無双です。