1-4:魔法少女なんて納得いかないんだけど?
-パロネーの街-
「え?いや…何故って…。そもそも敵同士だし…。」
「そんなもの、愛の前には関係ないではないか!現に、俺の母上は先代の魔法少女だと言っていたぞ?」
「えっ!?」
その魔王の発言に、驚愕の声を上げたのは自分一人だった。
逆に、雪路と夏那は知っていたのか、驚いたようにこっちを見ている。
(え?こいつ聞いてなかったのかよ。)という目を向けられても困る。
本当に初耳なのだから…。
(あれ?なんか、初耳な話が今日だけで2つって多くないかな?さっきの話も、雪路達は知ってたみたいだし…。これは…アレだな。意図的に話されてないやつだな…。)
後でルオルフを問い詰めないと…と考えていると、魔王の手が頬を撫でる。
ゾワッと鳥肌が立ったが、目線を上にあげると、心配そうな表情をした魔王がいた。
本能的に、手を振り払わなくて良かった。
振り払っていたら、側近2人に攻撃を仕掛けられていただろう。
魔王も、落ち込むか硬直するかして、収拾がつかなくなっていたに違いない。
「だ…大丈夫か?ユキジとナツナは知っているようだったから、そんなに驚くとは思っていなかったんだが…。」
「あー…いや。うん。聞いてなかった話だったから、ちょっとびっくりしただけだから…。心配してくれてるのに悪いんだけど、その…頬撫でないでくれる?」
そう言って、引き攣った笑いを向ける。
話している間も、スリスリと頬を撫でられていたのだ。
どさくさに紛れて、唇の感触を楽しむように押し広げてくるのは勘弁だ。
魔王は慌てたように手を離す。
案外イイ奴なのかもしれない。
「あのさ…好いてくれてるのは、ちょっと嬉しいんだけど。俺…変身解いたら男だからさ…。」
一瞬の間の後、驚きに体を震わせている魔王。
魔王と同じく、驚きの表情を浮かべている側近2人。
何やら残念そうな表情を浮かべている雪路と夏那。
え、何その(あーあ、言っちゃった…。)みたいな顔。
もしかして楽しんでた?
「え…?い…いや…。何を言っているんだ?どこをどう見ても女子ではないか…?こ…これが偽物だと…!?」
まおう は こんらん している !
という言葉がお似合いなくらい、動揺しているようだ。
驚愕の表情を浮かべ、俺の胸を触っている。
おい、やめろ。
ラッキースケベ所の事案じゃないぞ。
仮にも、今は女子の身体なのだ…そういうのはやめてほしい。
なんか、触られただけで鳥肌たつし…。
という訳で、鳩尾に右ストレートを叩き込む。
ドスッ!!
「ぐっ……!!げほっ…な…何を…?」
「何を…じゃないよ!堂々とセクハラしやがって!こっちの方が何を…?だよ!」
「な…っ!自分で男だなどと言ったのではないか!さては冗談だったのだな!?自分で女子と認めたようなものではないか!愛らしい奴め!フフフ…ふにふにと、実に良い感触だった…。あの柔らかさは本物…っ」
ガンッ!!
ドサッ…
もう一度殴った。
顎を殴った結果、魔王の意識は刈り取られたようだ。
地に倒れ伏している。
側近2人も唖然としているようだ。
「…そいつ連れてさっさと戻れよ。それともなにか?君達も一発いっとく?」
右手に拳を作りながら、ニッコリと微笑んで見せる。
小首を傾げて問うと、青褪めながら首を横に振っている。
「く…っ!き…今日のところはこれで勘弁してやろう!」
「次は、こうはいかないからな!お…覚えておけ!」
そう言いながら、2人の側近・アンブロとケルメは魔王を担ぎ転移していった。
あとに残された魔法少女3人。
「…なんかすんなり終わったねぇ。お城戻ろうかぁ?」
「そうだな…俺もルオルフに聞きたい事もあるし…。」
「悠さん。言葉使いに気をつけますの。今は女性なんですの。俺とか言っちゃ駄目ですの。」
「あー…はいはい。わかったよ…。」
ため息をつきつつ、転送ゲートを展開する。
魔王が居なくなった事で、街の人達も各々(おのおの)の家から出てきていた。
「また、魔王が来たらすぐに駆けつけますので!皆様の避難協力感謝いたします!それでは!」
そう言って、3人の魔法少女は姿を消す。
後に、割れんばかりの歓声を残して…。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
天音りんごです。
今回でなんとか一纏めになりました。
え?無理やり感が否めない?
気のせいです。
次のお話も良かったら読んでやってください(。・ω・。)