1-3:魔法少女なんて納得いかないんだけど?
-パロネーの街-
「……お断りします。」
手を握られたまま、指にキスされた時は寒気がしたが…何とか言葉を振り絞ってそれだけ言う。
言った瞬間、自信満々だった相手の表情が凍りついたのがわかった。
だっておかしくないか?
敵同士なんだぞ?
てか、なんか言い回しとか仕草とか一々鬱陶しい感じで、若干引いた。
「ま…魔王様!?」
「お気を確に!!」
取り巻きの2人が慌てたように駆け寄り、声をかけている。
この場から離れたいが、手を掴まれていて離れられない。
「あらぁ…。ハルちゃんバッサリいったねぇ。」
「顔と声は優良!ですの。でも、態度と仕草が残念なので良い判断ですの。でも、ちょっとだけ魔王が不憫ですの…。」
「前にフールの街に来た時、私達2人で転送したら凄い落胆してたもんねぇ…。」
「前の時は戦いもせず、無表情のまま帰りましたの。」
「今思うと、そういう事だったんだねぇ。納得だよぉ。」
「悠さん…罪深い人ですの。そういえば、神様も言ってましたの。」
「あぁ。ルオルフさんねぇ。呼び間違ったけどぉ、それが丁度いいって言ってたもんねぇ。」
後ろからは、相手を憐れんだような会話が聞こえてくる。
人事だと思って、好き勝手言っているようだ。
(それより、ルオルフが呼び間違ったとかいうの初耳なのだけれど…。)
聞き捨てならない単語が聞こえ、問い詰めようと後ろを振り向く。
いい加減手を離して欲しかったので、力任せに思いきり振りほどく。
チラッと魔王を見ると、まだ固まったままだった。
とりあえず、魔王の対応は取り巻きに任せよう。
「き…貴様!」
「なんという…!」
「静かに(サイレント)」
「……っ!?……!!」
「…!……っ…!!」
何か詰め寄って来たので、魔法黙らせる。
パクパクと、懸命に口は動かしているが声は出ていない。
やれやれ、これでゆっくり話せる。
「ちょっと。夏那、さっきの話なんだけど…。」
「ん?ハルちゃん本当に容赦ないねぇ…。」
「え?だって聞き捨てならない言葉が聞こえたから。邪魔するなら黙らすまで。」
「悠さんは淡々とお仕事をこなしますの。そこに痺れる憧れるー!ですの。」
「やめてよ雪路。雪路こそ、力任せに淡々と仕事するし。」
「力任せ、は女の子に向けて使う言葉ではないですの。訂正を求めますの。」
会話に雪路が入ってきて、話が逸らされた気がする。
ムッと頬を膨らませながら、ジト目を向けてくる雪路。
その様子を、楽しそうに見ている夏那。
これは聞き出せる状況じゃない。
とりあえず、魔王をどうにかして、城に帰ったら問い詰める事にする。
ため息をつき、くるっと後ろを振り向くと、魔王が硬直から復活したようだ。
取り巻き達が、サイレントの魔法から開放されている。
(魔法解除…上書きかな?そんな事そうそう出来ないハズなんだけどなぁ…。やっぱ魔王は魔王か…。)
そんな事を考えながら、魔王のことを見なおしていると、魔王と目があった。
何か言いたそうに口を開きかけるが、すぐに口を閉じてしまう。
これは…アレかな?
こっちから喋りかけないと、話が進まないやつかな?
後ろから、『お断りします。がトラウマになってるねぇ。』とか聞こえた気がするが気のせいだ。
「あー…何か話したい事あるなら、言って良いよ。ちゃんと最後まで聞くから…。」
困ったように笑いかけ、魔王を見上げる。
魔王は、びっくりしたように目を見開きこちらを見つめる。
(てか、背高いよ。これ、顔もめちゃくちゃ格好良いんじゃないかな?この世界の女子達が放っておかないだろうに…。勿体無いなぁ…。)
そんな事を考えていると、魔王が口を開く。
「何故…私ではダメなんだ…?」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
天音りんごです。
今回は魔法少女サイドのお話でした!
魔王が絡むと、とてもいじめがいが(ゲフンゲフン
次のお話で大体一章終わらせます。
終わらなかったらスミマセン(´・ω・ `)