底辺こそ最高であり最低である
どっと疲れて思わずため息が出そうになる。
俺とアリアはやっとサミュエル学園長の話から解放され今はアリアによる校舎見学会の途中だ。
サミュエル学園長の話からどのくらいこの世界について話を聞いたかわからない。
ざっと俺の体感時間で一時間半ほどだろうか?
サミュエル学園長はお喋りなのかほんとに口が止まらない。
その上内容は理解できたか?と聞かれるのなら答えはNoだ。と言いたくから最悪だ。
でも、大事なことは把握できた…はず。
歩きながら憶えたことを頭から整理する。
・この世界はグランドガイアという異世界。
・魔法が存在する。
・世界は大きく分けて二大勢力に分かれている。白のユニオンと黒のユニオン。今いるのは白のユニオン。
・魔物などもいるそうな。
・文明はさすがにゲームとかはなく電気の代わりに魔力が使われている。
・黒のユニオンとの戦争は3年前に魔王討ち滅ぼし終了。
・俺はビブダリアに2年に編入する。
・この世界に生まれ持つ者例外除き魔力がある。故に今の俺でも多少なりともあるはずらしい。
・美人、美少女が多い。
後は細かい歴史、戦争、法律などがあったが俺には関係ない。そう、関係ない。
世界なんて救いに来たのでもなく。
前世できなかったことをやるわけでもない。
俺は記憶を取り戻しに来ただけだ。
「これから素質検査を行いますので付いて来てください」
「素質検査?」
「そう、素質。あなたにどれだけ魔の才があるか確かめるための」
歩きながら淡々と質問するアリアについていく。
銀髪で綺麗な蒼の瞳。
その横顔はまさしく神絵師が手かげた神CGのように綺麗だ。
「むっ、また失礼なこと考えました?」
「い、いや全然!! ただ綺麗なーって。」
立ち止まり俺の方を向きまるでGを踏みつぶした表情で告げる。
「気持ち悪いです」
ぐはっ。
心に深くダメージを負い俺は床に伏せ涙を流し思った。
こ、これはきっとあれだ。そう。
て、て、て、て、照れ返しに違いない、うん、そうだ。
ならば、攻めていけば……!
アリアの方を向くと彼女は一定のリズムでもう歩いていて
当初の目的である『俺を連れていくの』というのはどこにいったのだろうか。
すぐさま、体を起こしアリアに駆け寄り一言。
「愛してる」
「気持ち悪い」
がはっ。
な、なにがいけなかったんですか!
はっ! 恐らくストレートすぎたんだ。
ならば、こんどは遠まわしに……
「お、俺アリアとずっと――、ってアリア! おーい、アリアさんやーい」
俺のアタックタイムが終わり少し立ってアリアは
それまで一定のリズムで歩いていた歩を止め目の前のドアに向けノックを二回し「失礼します」と言って入室。
俺は分からずとりあえず、ついていくように入室する。
「あら、アリアさんじゃない」
目の前の椅子から立ち上がり俺たちの方に歩み寄ってくる人物が居た。
その人の髪は金髪であり目は透き通っていて胸はアリア以上に大きく胸元を強調するようにシャツのボタンが外れており
おっぱいがこんにちはしており思わず敬礼を送りそうになってしまった。
そのエロい格好に拍車をかけるように白衣にミニスカガーター。
モニター越しにしか存在していない景色はあった。そう、異世界に!
「えっと、あの子は?」
「不本意ながら例の人です」
「不本意なの?!」
「あぁ! あなたが九王……九王……九……王、あ、あ、あ…………ふみとくん?」
「あなたたち絶対俺の名前知ってますよね?!」
「それは置いといて私は保険医のアシュレイ・ディスベル。 話の通り素質検査よね?」
置いとくの?!
というか保健医?
ということはここは保健室か。
保健室を見渡す。
確かに白で基調され簡単ベッドもあり薬品などの匂いもする。
現実世界と恐らく何ら変わらない保健室だろう
でも、違和感が拭えない。
そう、何もかも現実世界と似ているからだ。
安心要素が逆に不安要素になる感じに酷似している。
先ほどのディスベル先生の問いにこくりっと頷くアリアを見てディスベル先生は引き出しの中から腕輪?リング?を取り
俺に近づきそれを取り付ける。
取り付けられても対して違和感は感じられない。
当のディスベル先生は机に座り現代社会のパソコンに似た媒体に何かを打ち込んでいる感じだ。
この時代の技術レベルはどのくらいなのだろうか。
「うーん、これは」
ディスベル先生が困った表情でディスプレイを眺める。
それに反応したアリアもディスプレイを覗きだんまりとした。
「どうしたんですか?」
「計測不能なのよねぇ」
計測不能?
もしかして運悪く故障かな?
「故障ですか?」
「そうでもないのよ~」
そうでもないとなると……。
まさか。
ありがちだがそれしかない。
恐らく異世界に転生したことで強大な力に目覚めあまりの魔力の強さに計測できなかったんだ!
でも、正直そんな力いらないと今でも思ってる。
それは俺の力では無いし何より俺は戦いに来たわけではない。
「まさか、魔力がまったくないなんてね~」
え?はて?
魔力がまったくない?
この世界に生まれ持つ者例外除き魔力がある……というのでは?
なぜかいきなり戦力外通告を受けた気分になり肩ががくっと落ちた。
「くくっ……」
アリアというとその事実と事実を知った時の顔が面白いらしく笑いをこらえていてる。
ディスベル先生も困惑した表情で書類を書きそれをアリアに渡す。
「え、ちょ、やり直しを要求します!」
「仕方ないわね~」
計測不能
計測不能
計測不能
計測不能
「なんで五回も……」
魔力なんて言うのはこの世界では誰もが持っており誰もが平等に与えられるもの。
それが俺にはまったく無いのだ。
言わば赤子以下の魔力だ。
最強を求めないのにしてもさすがにこれはやりすぎと感じる。
人並みには欲しかった……。
そして、アリアが事実だけを述べる。
「魔力がないからでしょう」
「仕方ないわよね~。 でも、魔力はこれからも上がるから気落とさないでね」
ディスベル先生は苦笑いしつつ俺に優しい言葉をかけ再度書類を書き直しアリアに渡す。
アリアはそれを受け取るとドア付近まで行きディスベル先生に一礼し「失礼しました」といい保健室を後にした。
ディスベル先生と二人きっりという美味しいイベントを目の前に離れるのは尺だったが
俺もアリアに続きディスベル先生に礼を言いアリアの後をまた追う。