98.産み分け?
今日は、メイド長のメリルから、公爵夫人の心得を無事会得出来た、ご褒美にルドルフ作、産後に良いケーキを貰って、食べていた。
めちゃ、ウマです。
メリル様。
感動だぁー!
私は香り高い高級紅茶と”産後に良いケーキ”をニマニマしながら、庭に置かれた白いテーブルで、食べていた。
ちなみに、王宮の近衛隊は、妊娠してしまったので、寿退社した。
なんでか、ニヤ顔のシルバーと、複雑そうな表情のルドルフに見送られて、その日のうちに、手続きは完了した。
実にあっけなく、それからの生活は、ガラリと様変わりした。
その生活に、退屈するかと思いきや、妊娠したせいで、いっきに体調が悪くなり、出産するまで、寝たり起きたりを繰り返して、公爵家を恐怖のどん底に、突き落とした。
どうやら、マナ将軍じゃなかった、お義母様も、お儀祖母様も、二人ともつわりというものを経験したことがなかったようで、私の弱りように、公爵家全員が大慌てした。
もっとも、大慌てしたのは、あの仕事大好きなホークで、心配のあまり、私の体調が回復するまで、傍を一歩も離れず、ホープが生まれるまで、公爵家から一度も外に出なかった。
その間は、なんと、あのお義母様、ベッタリのグリム副将軍こと、お義父様が彼に脅されて、一時的に宰相(仮)の座について、代わりに仕事をしていた。
ある意味、王宮では、今回の件で、彼は物凄い伝説の人物になった。
ちなみに、私の妊娠期間に行われた中の国討伐は、実質、近衛隊の責任者になっているシルバーとマナ将軍、それに喜び勇んで参戦した隣国のギルバート王によって、実質取り仕切られた。
結果は、今回の件をたくらんだ中の国の指導者は全員斬首、残った穏健派を中心に再度、戦後処理が行われた。
その間、ホークに宰相(仮)の座を押し付けられた、グリム副将軍こと、お義父様は、歯ぎしりせんばかりだったようだが、結局、ホークに何かの弱みを握られていたらしく、大人しく王宮で、宰相の仕事をこなして、過ごしたようだ。
でも、あのお義母様、ベッタリのお義父様の弱みとは、何なのだろうか?
ちょっぴりだが、興味があったので、それとなーく、ホークに聞いてみると、開口一番、後悔しないなと念をおされ、逆に怖くなって、聞けなかった。
そんな事をぼんやり考えていると、珍しく来客があったようで、玄関がざわめいて、見たことがある人物が、ルドルフに連れられて、庭に現れた。
「アイリーン様、じゃなかった、アイリーン。」
今や、ホークと結婚したので、私の方がちょびっと身分が上になったので、お互い呼び捨てにしようと、ホープを生んだ後、お祝い訪ねて来た時に、提案された。
もちろん、喜んで、その提案を受け入れたのだが、習慣をすぐに直すのは、なかなか大変で、油断するとすぐ元の呼び方に戻ってしまう。
「久しぶりね、黒子。」
アイリーンは、私の前に腰を下ろすと、ルドルフがもう一つ持ってきた、紅茶に手を付けた。
ちなみに、ケーキは産後用なので、クッキーが代わりに、二人の前に置かれた。
彼女は、クッキーを食べて、もう一口紅茶を飲み込むと、決意した目で私を見た。
そして、ガバッと頭を下げた。
「お願い、黒子様。妊娠の仕方と、産み分けの方法を教えて下さい。」
「はぁ?」
彼女の突拍子もない行動に、思わず間抜けな声を、上げてしまった。
「えっ?」
なんども間抜けな声をあげたので、アイリーンがもう一度、繰り返してくれた。
「だから、妊娠の仕方と、産み分けの方法を教えてほしいの?」
どういうことだ。
まさか、うまくいっていたと思ってたのに、まさか・・・まだ・・・この夫婦は、ナニをしてないのか?
私の唖然とした態度に、アイリーンも私が何を考えたのか、わかったようで、焦って否定してきた。
「違う、違う。その・・・ナニは・・・ちゃんとしてるわ。でも、まだ私、一度も妊娠してないの。」
あー、びっくりした。
つまり、アイリーンたちは、ナニしてるのに、まだ子供ができないといってるわけね。
でも、なんで、それを私に聞いてくる?
アイリーンは、真っ赤な顔で、呟くように、私に話してくれた。
どうやら、イアンの母親に、私は妊娠したのに、二人はまだなのかと言われたらしい。
それも、男の子をご所望だそうで、ぜひ一人目は、後継者になれる男の子を生みたい。
そこで、見事一発クリアーした私に、その秘訣を聞きに来たようなのだが、私の場合、単なる偶然だし、どうしよう。
私が迷っていると、アイリーンがさらに、ぶつぶつ説明をしだした。
「私、まだ若いうちに、異世界で亡くなったでしょ。でも、何度か周期とか、体温とか、産み分けの言葉くらいなら、なんとなく覚えていて、でもその時は、そんなに必要な情報とも思わなかったんで、かなり情報があいまいで、その・・・黒子様がそこを覚えていたらなぁと思って・・・。」
なるほど、そういうことか。
私は、一応、結構、年・・・くそっ。
まあ、大人だったから、確かにその情報は知っていたので、アイリーンに知っている情報を教えてあげた。
「ありがとう、黒子。これで跡取りが生めるわ。」
いきなり、様付けがとれてるよ、アイリーン。
彼女は、後ろで私が絶対じゃないぞォーと叫んでいるのを、きれいに無視して、その場を去っていった。
おい、いいのか、アイリーン。
ちなみに、その後、彼女は、無事妊娠し、元気な女の子を出産した。
周期は当たったけど、産み分けまでは、さすがに出来なかったようだ。
「でも、一人目は妊娠できたんで、次、頑張るわ。」
と、張り切っていた。
周囲の侯爵ファミリーは、後継者ではなかったが、今まで女の子が親族にいなかったようで、たいそう猫かわいがり、しているようだ。
まっ、取り敢えず、生まれたんだから、OKよね。
私は、そんな感じだったのだが、イアンからホークが、この周期の話を聞いて来たらしく、試したいと言い出した。
「もう、ホープがいるから、別に焦らなくても、いいんじゃない。」
と私が言うと、ホーク曰く、
「兄弟は早い内にいたほうがいい。」と言い出した。
それ、異母兄こと陛下がいるホークの実感と余計なことを私が言ってしまい。
「俺は、一人っ子だったから、子供には、兄妹を作ってあげたいんだ。」
と、逆に張り切り出してしまった。
まずいと思ったのが、もう遅く、結局、周期の間中、寝室に連れ込まれた。
うえーん、イアンのお蔭で、大変な事に。
後で絶対、文句を言ってやる。
私は固く、心に誓った。




