96.身の危険!
私はなんとかホークから解放してもらった後、彼に腰を抱かれながら、今まで忘れていたルドルフお手製スペシャルウェディングケーキの前に立った。
一言、巨大だ。
これは、すごい。
私はマナ様から渡された、ずしりと重い日本刀を、ホークと二人で持ち上げると、気合と共に、切込みを入れた。
なんだか、私の予想とは、かなり違う、異世界入刀は、そこで終了した。
その後、王宮のメイドさん達により、出席者全員にケーキか配られると、王の乾杯の声とともに、ケーキが人々の口に・・・。
途端、今までざわついていた会場が、ウソのようにシーンと静まり返った。
会場中にいる全員が、絶品ケーキを味わったのだ。
誰も、何も言わなかった。
そこには、出席者全員による、絶品ケーキを味わった、一体感が生まれていた。
この世のものとは、思えない美味さ。
生きてて、よかった。
そんな状態で、ケーキを味わった人々は、私たちにおめでとうと目線を寄越しながら、会場傍で、控えるルドルフの前に、全員が我先に向かった。
彼らのお目当ては、今回私たちの結婚を祝して創られた、ルドルフ作、絶品紅白団子が入った箱だ。
全員が、お祝いもそこそこに、その箱をゲットして、ホクホク顔で、会場を後にした。
噂では、会場に招待されなかったものによる、ケーキを狙った強盗が、数十件も起こったようだが、会場を出た途端に、通路で箱を開けて、食べた出席者しかいなかった為、強盗の手には、一箱も渡らなかったようだ。
私たちが、それを知ったのは、新婚旅行から帰って来た時だったが、あまりのことに、開いた口が塞がらなかった。
ちなみに、王宮での披露宴終了後、私たちは公爵家の人たちとは違う、魔方陣で、別の場所に向かった。
「ここは!」
私は見たことのある建物の前で、唖然としていた。
「アイリーンに聞いた。ここの露天風呂が、気に入ったようだとな。」
確かにアイリーンに会った時、そんな事を言ったような。
でも、ホークがそこまで、気を使ってくれるとは、思わなかった。
ちょっとじんわりしていると、その後不穏な言葉を聞かされた。
「ここなら、どんなに叫んでも聞こえないから、安心しろ。」
えっ、どんなに叫んでもって、なに、・・・ナニの話かぁー。
私はジリッと、後じさった。
ホークはにこりと笑うと、一歩下がった私に対して、大きな歩幅で、一歩前に進んだ。
「ちょっ、近いから、何気に。」
「もう、異世界で28歳なら、俺以上に、いろいろ経験してるだろ。大丈夫だ。俺もそこそこ、経験してるから損はさせない。」
「ちょっ・・・それって、どこ情報?そんな経験してないから、全く、全然。」
思わず、叫んで、慌てて後退したら、そこにはベッドがあって、思わず、後ろにひっくり返った。
「積極的だな。」
ホークが、上着を脱ぎながら、近づいて来る。
「げっ、ちょっ・・・本当、まじめに、勘弁してください。」
私は涙目で、懇願した。
彼は私のお願いを無視すると、上半身裸のまま、私を抱きしめた。
ヒョエー
黒井黒子、28歳。
生まれて、初めて、半裸の美形に、(大切なことなのでもう一度繰り返します。)半裸の美形に、抱きしめられました。
その途端、目の前のホークが、爆笑しました。
「えっ、なんで?」
「お前、28にもなっていて、半裸の男に抱きしめられたのって、俺が初めてなのか?」
しまった。
どうやら、心の声が、そのまま、だだ漏れていたようだ。
私は、真っ赤な顔で素直に頷いた。
「わかった。大丈夫だ。」
ホークは、さっきとは違う、やさしい笑顔で、そっと頭を撫ででくれた。
「うん。」
少し涙が引っ込んだ。
途端、ベッドに押し倒されました。
「えっ?」
「大丈夫だ。お前が初めてなのは、わかったから、優しくしてやる。」
いや、いや、そうじゃなくって・・・。
ギィエー
どこ触ってるんですか?
なんでか、その後、やさしい笑顔の美形に、喰われました。
世の中、残酷です。
でも、こんなに身の危険を感じたのに、なんで、洞窟でゲットした鎧やら、異世界人パワーが発揮できなかったのでしょうか?
いつの間にか、いなくなった妖精二匹。
絶対、後で捕まえて、きりきり、真実を吐かせてやる!




