94.あれ?
私は、今、満面笑みの公爵夫人と対峙しています。
「よくやったわ。さすが私の孫ね。」
「ありがとうございます。」
ホークは、珍しく素直にお礼を言っていた。
この人でも、普通にお礼言えるんだ。
なんでか変な所に感心してしまった。
私がボヤーンとしていると、公爵夫人から結婚のお祝いに、衣裳を送ると言われた。
私が恐縮して断ろうとしていると、本人の代わりに、ホークがお礼を言って、受けてしまった。
はぁー
駄犬のお蔭で、なんでか変なことに・・・。
私がいっこうに、嬉しそうな顔をしていないのに気がついた、マナ将軍が心配そうに、声をかけてくれた。
私が思わず、駄犬の件をマナ将軍に話そうとすると、いきなりホークから、執事ルドルフに、公爵家の次期後継者として、結婚式用のケーキの依頼がされた。
「ケーキですか?」
「昔よく、アイリーンに聞かされていたんだ。絶対に結婚式でケーキカットをしたいとな。だからそのケーキをルドルフに頼みたい。」
「それは異世界では、大事なものなんでしょうか?」
ルドルフが私を振り向いた。
ルドルフが作るケーキ!
私の頭の中は、それで全て埋め尽くされた。
おもいっきり、勢いよく頷く。
「はい、結婚式でケーキは非常に重要です。」
全員がルドルフのケーキを思い浮かべ、ごくりと喉を鳴らした。
「うむ、式自体はわが公爵家の様式で上げてもらうが、お披露目は、そのケーキカットとやらをやったり、異世界式で好きなように、やりなさい。」
公爵さまのお墨付きをもらいました。
「畏まりました。全力を尽くさせていただきます。」
ルドルフは公爵に向き直ると、胸に手をあてて、頭をさげた。
「材料が、足りなかったら言ってくれ。いくらでも手配しよう。」
マナ将軍が、大きく頷いた。
「ありがとうございます。」
ルドルフの返事を聞いて、さらに、ケーキの妄想が膨らんだ自分がそこいた。
絶品ケーキ、絶品ケーキ!
私は隣で腹黒く微笑むホークに気がつかず、公爵家の面々と話し合いが済んだ後は、スキップして、公爵夫人の部屋を後にしていた。
「いいのか? バイオレット。」
部屋の片隅では、やっと二匹の舐め回しから、逃げてきた妖精のブルーが、バイオレットの傍を飛びながら、不安そうに見ていた。
「今まで、気がつかなかったんだけど、二人を見て、ブルー。」
ブルーは、恋人のバイオレットに言われるまま、ホークと黒子を見た。
途端、唖然として固まる。
「あんだ、あれ!」
「人間って、本当に不思議ね。今まで全くかけらも、あんな絆なんか、なかったはずなのに、今ではあんなにしっかりとした、オーラが見えるのよ。」
「あれは、魂の片割れの輝きか?」
バイオレットは、力強く頷いた。
それは、何千年に一回、あるかないかの奇跡に近い、魂同士の邂逅だった。




