92.事件です。
真っ白な光が治まると、私は公爵家にあるホークの部屋で、彼にお姫様抱っこされた姿で、そこにいた。
えっと、なんで・・・どうなってるの?
ふと気がつくと、床に足がついていた。
床に足って・・・。
私はそこで、顔を上に上げた。
私の目の前には、妙に整った宰相の顔があった。
「まだ、抱き上げられたいのか?」
真顔で質問されました。
いえ、まったくもって、そんな気は、一ミリたりともありません。
私は、ホークから慌てて離れると、彼の私室を飛び出した。
そのまま庭に出て、離れの部屋に向かった。
ウギャー、心臓が・・・しんぞうが壊れる。
私は自分が借りている部屋に、一直線に向かった。
パッタン
部屋の障子を閉めると、そのまま布団にダイブした。
ボッコン。
ギャー、なんで、あんなことになったんだぁー。
黒井黒子、28歳。
生まれてこの方、初めて、異性にお姫様抱っこされました。
うっ、なんでここに、記録するものがないの?
誰かに録画して、貰いたかった。
記憶クリスタル?
ダメだ。
恥ずかしすぎて、記憶が・・・キオクが曖昧だぁー。
一生に一度かもしれなかったのに、なんて勿体無い。
私は布団の上で、しばらく悶えながら、暴れていた。
しかし、次の日には、今日以上の苦難が待ち構えていた。
翌朝、バタバタしながらも熟睡した私は、朝風呂を浴びると、公爵家に居候させて貰っているので、勤労奉仕も兼ねて、屋敷のメイドさんたちの手伝いをした。
「黒子様。今日はお庭のお掃除を、お願いします。」
メイド長のメリルから、どこで作っているのか、昔懐かしい竹ぼうきと塵取りを渡されて、私は早速、自慢の日本庭園に出ると、散った花びらと枯れた葉っぱを掻き集め始めた。
うーん、ここだけ見てると、異世界って感じ、しないなぁ。
私がしみじみと浸っていると、どこからか子犬の鳴き声が聞こえてきた。
ふと気になって、その鳴き声が聞こえるほうに、歩いて行くと、そこには衝撃の事実。
そこには、生まれたての子犬を、大事そうに抱きかかえるようにして、乳をやる由緒正しい公爵家で、飼われている血統書付のプリンちゃんの姿が・・・。
そして、その傍には、プリンちゃんに傅く、我が家の駄犬、プー。
最悪なのは、よーく見ると、プリンちゃんにそっくりな子犬の中に、我が家の駄犬にそっくりなのが何匹か?
いやいや、そんな馬鹿な。
これは目の錯覚よ。
私が首を振っていると、久しぶりに聞いたナニ1号とナニ2号、もとい薄紫の虫のような羽を持ったバイオレットと、ちっさいサイズの金髪のイケメン君、ブルーが飛んでいた。
「あら、やっと現れたわね。黒子?今までどこに行っていたの?」
それは私のセリフだ。
はっきり言って、いろいろ忙しくって、自分が飼ってる駄犬のことは、ものの見事に忘れてたんだけど、この目の前にある衝撃の事実はなんなの?
「ちょっ・・・ちょっと、バイオレット。これはどういうことなのよ?」
私は、目の前に飛んできたバイオレットを、むんずと掴むと、問いただした。
「どういうことって、そりゃ、愛し合っている二匹が、愛を深め合った結果よ。」
「愛し合うのは、わかるけど、なんで、ここに子犬がいるのよ。うちの犬は雑種で、由緒正しい猟犬じゃないのよ。それなのに子犬作るって、・・・。」
やばい。
血統書のある犬に、雑種の血が混じるって、まずいでしょ。
全部の犬がプリンちゃんに似てれば、ごまかせるけど、今見る限り、我が家の駄犬似の小犬が、何匹か雑じってるようだし、これどう言い訳すればいいの。
私が真っ蒼になっていると、後ろから声がかかった。
「こんなところで、何をしているんだ、黒子?」
最悪のタイミングでホークが現れた。
私は後ろを振り向くと同時に、その場に土下座した。
ここは、もう、これしかない。
私は悲壮な思いで、地面に頭を擦り付けた。




