90.隣国の思惑
アンドリュー王子とアンバー王女が去った後、私は隣ですまし顔をしているホークを、睨み付けた。
無言で、先程の二人のビックリ発言についての真相を話せと、目線で促したところ、逆に、彼に腰をサッと抱かれ、気がつくと、転移門があるホールから、連れ出されていた。
「どういうこと?」
私の小さい呟きに、彼は違う答えを返した。
「この後は、会食だ。」
ホークが呟いた後、どこに控えていたのか、メイドさんたちが現れて、いきなり囲まれ、部屋に連れ込まれた。
今度こそ、逃亡しようと、足に力を入れたが、両脇に控えていたメイドさんに、ドレスを一瞬で、脱がされた。
気がつくと、あっという間に、まっ裸にされていて、とても通路に、飛び出せる状態ではなかった。
さすが王宮メイド。
侮りがたし。
さらに、裸のままの私に、メイドさんの一人が、下着を見せた。
私は、何も言わず、そのメイドさんの指示に従って、下着を着せてもらった。
だって、いくら年食ってるとはいえ、裸で通路を歩けるほど、達観した境地には、まだ至っていない。
その後、コルセットを絞められ、さっきとは違うドレスを着せられた。
一方、黒子と別れたホークは、ひそかに、アンドリュー王子が滞在している部屋を、訪れていた。
「入りますよ、アンドリュー王子。」
「ああ。」
王子はソファーに座ったまま、ホークを待っていた。
ホークは、アンドリュー王子に、中の国で今起こっている、軍事物資の大量輸入の件をすぐに説明した。
「さすがだね。」
ホークは、アンドリュー王子の褒め言葉を、さらりと聞き流すと、いきなり本題に入った。
「ギルバート王は、なんと?」
アンドリュー王子は、不快な顔をして、ホークを睨むも、渋々答えてくれた。
「さすがに、これだけ支援してあげたのに、恩を仇で返されて、怒ってるよ。これに関しては、こっちの国と共同歩調をとるそうだ。」
アンドリュー王子の答えに、ホークはほっと肩の力を抜いた。
「それでは、私はこれで。」
ホークが部屋を去ろうとすると、アンドリュー王子が後ろから、ホークに問いかけてきた。
「黒子の件は、本気だよ。」
ホークは、そのまま何も言わずに、礼をすると、部屋を後にした。
通路を大分歩いてから、ホークは憎々しげに舌打ちした。
母の時といい、本当にあの国の男は、しつこい。
これは、中の国の件と一緒に、同時進行しないと、あの王子に、してやられそうだ。
しかし、かなりニブイ黒子相手では、他の令嬢のようには、いかないか。
そこまで考えて、ホークはやっと自分の気持ちに気がついた。
どうやら自分は、あの王子に嫉妬していたようだ。
よもや、自分が嫉妬という感情を覚えるとは、考えていなかった。
これは、早く黒子を迎えに行って、この感情を抱かせた相手に、思い知らせなければ。
ボークは、腹黒い笑顔を浮かべると、通路を速足で歩き始めた。




