表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/99

09.腹黒宰相とアイリーン姫

「ホーク。なんで何百年も前の人物が、今でも生きているような事を言ったの?」

 アイリーン姫の咎めるような視線を、まるっきり無視すると、ホークは珍しく二人に説明をした。

「さっきも行ったように、彼女が本物の異世界人なら、洞窟の守護の扉を開いて、マラカナイトの粉を持ってくるはずだからですよ。」

「へっ、何言ってるのよ。そんな貴重なものが、今だにあるわけないでしょ。それは、おとぎ話よ。」

「さて、おとぎ話かどうかは、すぐにわかるでしょう。」

 ホークはそう言いながら、ログハウスから見える山を眺めていた。

 彼の話に、イアンとアイリーン姫も、なんとなく山を見上げた。

 瞬間、山の中腹から、眩い光がきらめいたように見えた。

「ねえ、今なにか光らなかった。」

 アイリーン姫の問いかけに、イアンが答える。

「確かに、今、何かがきらりと光ったように見えました。」

 二人がそう話して、山を見ていると、もう一度、山の中腹が輝いた。

「また、光ったわ。」

 アイリーン姫がそう言ってから、従兄のホークを見ると、彼は黒い笑顔を浮かべていた。

「ホーク?」

「アイリーン、あなたのお蔭で、私は貴重なマラカナイトを、手に入れられそうですよ。」

「「はっ。」」

 二人は同時に叫んでいた。


 ホークがそう呟いてから、間もなくして、さっき出て行ったはずの異世界人である黒子とその愛犬プーが、アイリーン姫のログハウスを訪ねて来た。

「黒子!!!」

 アイリーン姫が嬉しそうな声で、出迎えてくれた。

 私は、嬉しそうにはしゃぐアイリーン姫に、ドアを開けたら抱きしめられた。

 すぐ傍のイアンは、それを面白くなさそうに、見ている。

「マラカナイトを引き取りましょうか。」

 私がアイリーン姫と再会を喜んでいると、傍にいたホークが何の前触れもなく、ぼそりと呟いた。

「まらかないと?」

 一応、私はすっとぼけて見た。

「マラカナイトですよ。洞窟の岩から、削って来たんでしょ。」

「なんのこと?」

 私は再度、わからない顔をした。

 何もかも、お見通しみたいな態度は、癪にさわる。

 確かに持っているが、当然、渡すだろうと言われると、人間かえって渡したくない。

 私がそう考えていると、連れてきた妖精のうち、羽が薄紫色のバイオレットが、宰相のホークに近づくと、周りをパタパタと飛び回り、最後に、彼の肩にピタリと止まった。

「本当に大きくなったのね、ホーク坊や!」

「ぼうや!」

 私はバイオレットの一言に、非常に大うけした。

 どう見ても、三十路は過ぎていそうなおじさんが坊や!

 もう駄目だ。

 我慢、出来ない。

 私は一人うけまくった。

「おい、何を笑っている。」

「だって、ぼうやって、ぼうや・・・・・・。」

 私が涙目で見ると、隣で笑いを堪えるアイリーン姫がいた。

 イアンは何が起きたのかわからず、きょとんとしている。

「二人とも笑いたければ、どうぞ。でも、ここに妖精がいる以上、マラカナイトがないとは、言い逃れできませんよ。」

 ホークが畳み掛けてきた。

 私は目に涙を溜めながら、ポケットから小袋に分けたマラカナイトを見せた。

 ホークの目の色が変わる。

「では、ありがたく・・・・・。」

 私はホークが手を出そうとした、その目の前でマラカナイトの袋を取り上げた。

「いくらで買ってくれるの?」

 ホークは私の言葉に、一瞬躊躇した後、答えた。

「王宮での食事一か月分。」

「王宮で兵士クラスで、五年間の無償での食事/部屋/洋服の提供と生活する上での教育。プラス一か月の三食分の給料。」

 私はそう言って、書いた紙をホークに提示した。

 ホークは、黙って受け取ると、それにサインをする。

 次に私は、その紙にアイリーン姫のサインをもらった。

 最後に、イアンにもその紙を渡す。

「なんで、俺がこの紙にサインをしにゃならんのだ?」

「そう。」

 私が紙を受けとろうとすると、イアンはなぜかサインをして、私にその紙を戻した。

「質問だ。なんで兵士クラスなんだ。王侯貴族並みにも出来たのに?」

「貴族は信用できない。それにこれから私は、庶民として生活するつもりなんで、貴族の知り合いより、庶民の知り合いが必要だから。」

「なるほど。」

 ホークは、それ以上は何も言わず、私からマラカナイトを受け取った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ