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89.隣国の第一王子

 幻聴が聞こえたほうを、よーく見てみると、最近私が舞踏会なるもので踊った、隣国の王子の姿が、門の前に浮かび上がった。


 嫌々、そんなわけないから。


 私の心は、それを否定したが、目の前には、無駄にキラキラ光る隣国の王子の姿が、そこにあった。

 隣国の王子こと、アンドリューは、周囲の王族に挨拶を終えると、満面の笑顔で、私の方にやってきた。


「本当に久しぶりだな、黒子。」

 アンドリューはそう言って、私の手を取ると、手の甲にキスをした。


「アンドリュー王子、お久し振りです。」

 私は思いっきり、後ろに下がって、その場で礼をした。


「相変わらず、奥ゆかしいな、黒子は。でも、僕たちはもうすぐ、婚約者同士になるんだから、そんな遠慮は、いらないよ。」

 アンドリューは、満面の笑みで、爆弾発言をかました。


「えっ?」

 なんか、いやな言葉を聞いたような?

 いやいや、まさか、コ・ン・ヤ・クとか。

 上段いや、冗談だよね。

 私は貴族じゃないんだから、ありえないでしょう。


 私が脳内会議を開いているうちに、現状は着々と変化していた。


「アンドリューお兄様。」

 第一王子の後ろから、白い柔肌に黄金色の艶やかな長髪、溢れる色気に、むっちりとして胸をプルンと揺るがした美女が、ゆったりと歩いて近づいてきた。


「ああ、ごめんよ。アンバー。」

 アンドリューは、美女に向かって、そう呼ぶと、私に、アンバーと呼ばれた人物を紹介してくれた。


「黒子。こちらが僕の異母妹で、アンバーって言うんだ。アンバー、彼女が今度、君のお姉様になる黒子だ。」

 王子は、ホークをまるっきり無視すると、私に異母妹であるアンバー王女を紹介してくれた。


「お会いできて、嬉しいです。アンバー王女。黒井黒子です。」

 私は、ドレスの裾を持つと、この間の舞踏会でみっちりしごかれた、礼を王女にした。


「まあ、初めまして。クロコお姉様。」

 アンバー王女は、にっこり笑うと、そう返してきた。


 まったく、この兄妹は、なんてことを言ってくれるのよ。


 周囲の御貴族様の視線が針を通り越して、槍のように、突き刺さって来るんですけど。


 どうしてくれるの!


 引き攣り笑顔でいると、ホークが私の腰をグッと引き寄せて、横から王女に挨拶した。

「ようこそ、お越し下さいました、アンドリュー王子とアンバー王女。」

 アンドリューは愛想笑いで、アンバー王女は、ホークの顔を見ると、ポッと頬を染めて、かなりの間、彼の顔を穴のあくほど見た後、ニッコリ微笑まれた。


「こちらこそ、宰相。」

 アンバー王女の様子を見たアンドリュー王子が、アンバー王女を促すと、彼らは王族との会食の為、一端、こちらが用意した客室に、侍従長に案内されて、去っていった。

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